表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/39

文化祭と姫心

いつもの部室。


紅菜。

「ね〜、今年の文化祭」

「神社部でなにかやりたいんだけど」

「みんな、どう思う?」


麗。

「いいじゃない?」


姫心。

「クラスの方もあるから」

「あんまり大変じゃなければ」


琉々。

「紅菜、なにかやりたいこと、あるの?」


紅菜

「天嶽神社のお祭り、復活させたいじゃない?」

「だから――」

「文化祭で、なにかできないかなって」


麗「う〜ん」

「お祭りの良さを、伝えるとか?」


姫心「天嶽神社の歴史を――」

「知ってもらうのは、どうかな?」


紅菜「琉々がさ――」

「来た人に、神様のメッセージを伝えるのはどう?」


琉々「学校じゃ、無理かも」

「神社に行かないと……」


紅菜「だよね〜」


少し考えて――。


紅菜「みんなで巫女舞を踊るのは?」


姫心「やだ」

「恥ずかしい」


麗「天嶽神社のTシャツ作って、売るとかは?」


紅菜「おぉ〜!」

「良いかも!」

「麗、デザインできる?」


麗「OK!」

「てか、せっかくだから――」

「神社部のTシャツにする?」


紅菜「賛成!!」


姫心「御朱印とか、お守りもあったら良いね!」


麗「作りたいけど――」

「予算的に、難しいかな〜」


姫心「だよね〜……」


*   *   *


〜文化祭当日・神社部の部室〜


紅菜「Tシャツ……全然売れないね」


琉々「こっちの方、あんまり人来ないし」

「仕方ないかも」


紅菜「このTシャツ、良いと思うんだけどな〜」


〝天嶽神社〟


赤地に、白い文字。


どっしりとした筆跡で書かれた文字を眺めながら――。


紅菜がため息をついた。


琉々「この達筆感、良いよね」


自分の水色のTシャツの文字を、指でなぞる。


紅菜「だよね〜」

「でも……売れないね」


二人で話していると――。


部室に、姫心がやって来た。


胸に〝天嶽神社〟と書かれた、ピンクのTシャツ。


姫心「どう? 売れた?」


紅菜「全然」

「三枚しか売れてない」


姫心「そっか〜……」


少し考えて――。


姫心「私、店番変わるから」

「二人とも、文化祭回ってきたら?」


紅菜「姫心、ありがとう!」

「じゃ〜、行ってくる!」


琉々「ちょっと行って来るね」


姫心「楽しんで来てね〜」


紅菜と琉々が出ていくと――。


部室は、静かになった。


姫心は、Tシャツの並ぶ机に座り。


のんびりと、携帯をポチポチしていた。


(三枚か〜)

(もうちょっと売れると、いいな)


と、そこへ――。


悠真「よ! 咲良」


姫心「悠真!」

「どうしたの?」


悠真「ちょっと、覗きに来た」


辺りを見回して――。


悠真「あれ、紅菜いないの?」


姫心「さっきまでいたけど」

「琉々と文化祭回ってくるって、行っちゃった」


悠真「そっか〜」


机の上のTシャツを見て。


悠真「お、これ、Tシャツ?」


姫心「うん」

「悠真も、一つどう?」


悠真「そうだな!」

「一つ貰おうかな」


姫心「どれにする?」

「これとか、どう?」


自分と同じ色のピンクのTシャツを、差し出した。


悠真「え……ピンク?」

「ちょっと恥ずかしいかも…」


姫心「絶対、可愛いよ」


悠真「……そっか?」

「ん〜、じゃ〜、ピンクにするかな」


姫心「ありがとう!」

「今、着てみてよ!」


Tシャツを着た悠真を見て――。


姫心「悠真、すごく似合ってる!」

「可愛い!」


姫心が嬉しそうに言う。


悠真「そ、そうか?」


照れくさそうに、頭をかく。


その時――。


部室の扉が開いて、麗が入ってきた。


お揃いのピンクのTシャツを着た姫心と悠真を見て。


麗「あ――」

「……教室に、忘れ物したかも…」

「ちょっと、取ってくる」


それだけ言って、さっと出ていった。


悠真「……椿、一瞬でいなくなったな」


姫心「……うん」


しばらく、沈黙が続いた。


悠真「そういえば、咲良」

「この前、2年のサッカー部の先輩に告白されてたよな」

「俺、偶然見ちゃったんだ」


姫心「……うん」


悠真「あの先輩、結構モテるのに」

「断ったんだって?」


姫心「……うん」


悠真「咲良って、しょっちゅう告白されてるのに、いつも断ってるよな」


少し間があって。


悠真「……誰か、好きな人でもいるのか?」


姫心「……」


姫心は、小さく頷いた。


悠真「そっか〜」

「頑張れよ!」


姫心「う…うん……」

「あの……悠真……」


悠真「ん?」


姫心「あのね――」


唇が、小さく震える。


姫心「……やっぱり」

「……なんでも、ない…」


悠真「そっか?」

「じゃ〜、またな!」


踵を返す、悠真。


その背中を見て――。


ガタン。


と、立ち上がる姫心。


姫心「悠真!」


悠真「ん? どうした?」


姫心「あの……」

「咲良じゃなくて――」

「姫心で、いいから」


悠真「……」

「なんか……」

「下の名前で呼ぶの、ちょっと恥ずかしいかも……」


姫心「だ、だよね!」

「今の、忘れて!」


スカートの裾を握りしめる。


悠真「じゃ〜、店番頑張れよ!」

「またな」


そう言って、悠真は出ていった。


静かになった部室。


姫心「はぁ〜……」

「なんか、上手くいかないな〜」


胸を押さえたまま、椅子にへたり込んだ。


心臓の鼓動が止まらない。


窓の外――。


文化祭の、にぎやかな声が聞こえてくる。


少しして、麗が戻って来た。


項垂れる姫心を見て。


麗は何も言わず、姫心の隣に座り、優しく頭を撫でた。


夕日が部室を照らす。


そして――。


文化祭は幕を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ