小さな不幸
紅菜「そろそろ、帰ろっか」
麗「そうだね」
私たちは――。
来た道を、戻って歩いた。
登りの階段が――。
続き――。
結構、キツい。
途中――。
歩いていると。
右手に――。
お寺っぽいところを見つけた、姫心。
姫心「ここ――」
「ちょっと、寄ってもいい?」
紅菜「ん?」
「来る時、こんなところあったっけ?」
麗「いいね! 入ってみようよ」
私たちは――。
中の建物に、入った。
入ると――。
中には――。
大きな不動明王の像が――。
祀られている。
姫心「うわ~! すごい!」
不動明王の前に立った時――。
姫心だけが、一瞬、息をのんだ。
テンションが――。
上がる、姫心。
麗「さすが姫心――」
「何か感じ取ったのかもね」
四人で――。
手を合わせて、お祈りした。
* * *
目を開けて――。
姫心に、聞いた。
琉々「さっき――」
「なにか呪文みたいの、唱えてたけど――」
「あれ、なに?」
姫心「あれはね――」
「不動明王の御真言だよ」
「不動明王と繋がるための――」
「合言葉みたいなもん」
琉々「へ~」
紅菜「え~!」
「私も、唱えたい!」
「姫心、教えて」
姫心が――。
みんなに――。
不動明王の御真言を、送った。
紅菜「の~ま――く――」
「さん――ま――ん――」
「だ――ら……」
「せん――まかろん……」
「な――ん――と――か……」
「そ――わ――か~」
姫心「紅菜、全然違う!」
麗「なんか、途中」
「洋菓子みたいなこと」
「言ってなかった?」
琉々「なんか、舌噛みそうだね」
姫心「覚えるまでは――」
「難しいよね」
私たちは、お寺を後にして――。
再び――。
帰り道を、歩き始めた。
* * *
紅菜「あ!」
「しらす、カレーパンだって!」
「ちょっと、買ってくる!」
姫心「え!?」
「また、食べるの!?」
「よく、それで太らないね」
紅菜「今日は――」
「チートデイなの!」
麗「せっかくだから――」
「私も、なんか食べようかな~」
姫心「抹茶ソフト――」
「美味しそう~!」
琉々「私は――」
「普通のソフトクリームにしようかな」
麗「私は――」
「2色ソフトに、しようかな~」
「あれ?」
「ない!」
麗が――。
鞄を、ひっくり返して。
何かを、探している。
琉々「どうしたの?」
麗「ないの!」
「財布が!」
姫心「え!?」
「私のカバンに――」
「間違って、入ってるかな」
姫心は――。
自分の鞄を、調べてる。
紅菜と私も――。
自分のカバンの中を――。
調べた。
でも――。
どこにも――。
麗の財布は、見当たらない。
姫心「どこに、落としたか――」
「覚えてる?」
椅子に座り込んで――。
項垂れる、麗。
麗「う~ん......」
「わかんない」
姫心「お昼ご飯食べたところは?」
麗「あ――」
「お会計した後――」
「化粧室寄った時、かも」
姫心「私――」
「ちょっと、お店に電話してみるね」
「麗、財布――」
「何色?」
麗「赤」
姫心が――。
お店に、電話すると。
姫心「はい、はい――」
「あ~――」
「良かったです」
姫心「麗――」
「お店に、あるって」
「今日、取りに行く?」
麗が――。
頷く。
麗「良かった~」
* * *
紅菜が――。
ニヤニヤしながら――。
私を、見た。
紅菜「あとは――」
「琉々だけだね」
琉々「なにが?」
紅菜「小さな――」
「ふ・こ・う!」
私は――。
その言葉を聞いて――。
ブルっと、震えた。
姫心「もう――」
「紅菜、琉々に――」
「意地悪しないでよ!」
紅菜「だって、実際――」
「そうだもん!」
そんな会話をしながら――
江嶋神社を後にした。
* * *
麗「じゃ~――」
「私、財布取りに行くから!」
「また、学校で!」
紅菜「うん!」
姫心「気を付けてね」
琉々「またね」
三人で――。
手を振り。
麗を見送った。
帰りの電車の中――。
私たちは――。
糸が切れたように――。
寝た。
姫心「紅菜、琉々――」
「起きて〜」
「着いたよ〜」
無事――。
天嶽駅に、着き。
それぞれ、家に帰った。
* * *
夜――。
湯船に浸かりながら――。
思い出す。
(あの銀髪の子に――)
(触られて見た映像は――)
(なんだったんだろう?)
(それに――)
(私のことまるで――)
(知ってるみたいに――)
(『お姉ちゃん』って――)
(言ってた)
(……なんで)
(あの子は私のことを知ってたんだろう…)
お湯の温度が――。
少しだけ、ぬるく感じた。
お風呂に上がり――。
携帯を、見ると。
麗から――。
連絡が、来ていた。
麗『最悪~――』
『お財布は――』
『見つかったけど――』
『入ってた六千円が無い』
泣き顔の、スタンプが。
送られてきた。
姫心『それは――』
『悲しいね』
紅菜『お財布、戻ってきた――』
『だけでも――』
『神様に、感謝だね』
麗『そうなんだけど――』
『微妙な気分』
『琉々は――』
『今のところ、なにもない?』
琉々『うん、大丈夫』
姫心『何もないと、いいね』
紅菜『天嶽神社のお祭りが――』
『かかってるからね〜』
『それは、それで困るかも』
琉々『何かあったら――』
『連絡、するね』
* * *
次の日――。
私は――。
盛大に、風邪を引いた。
そして――。
学校を、二日休むことになった。
寝込みながら――。
思う。
(これで四人とも――)
(小さな不幸が起こった…)
(…もしかして、これで――)
(お祭りが、復活するってこと?)
(天嶽神社のお祭り――)
(復活するといいな〜)
(みんなで、行きたいな〜)




