銀髪の少女との再遭遇
次の電車を、待っていると――。
カツカツと――。
ヒールの音が、近づいてきた。
音のなる方を、見ると。
女の子が――。
こっちに向かって、来る。
黒い、帽子。
黒い、マスク。
そして――。
黒い、ワンピース。
全身、黒に映える――。
印象的な、銀髪の少女。
(あ――)
(前、天嶽駅ですれ違った子だ)
と、思った瞬間。
少女「なんで――」
「お姉ちゃんが、こんなところにいるのよ!」
と――。
ドンと、手で押された。
* * *
その瞬間――。
走馬灯のように、映像が流れた。
赤い、社殿。
そこを歩く――。
青と白の巫女服を着た女性。
社殿で――。
鈴を振りながら、踊る巫女。
山で積んだ花を、抱えて。
笑っている同じ女性。
山の中を、走る。
従者と思われる人が――。
矢に、撃たれる。
滝の前で――。
神に、祈りを捧げる。
巫女を守るように、戦う男。
刀で――。
背中を、貫かれる巫女。
多くの映像が――。
一瞬で、流れる。
そして――。
背中に、急に痛みが走る。
* * *
額に手を当て――。
よろけていると。
一人の中年男性が、駆け寄ってきた。
柄物の、シャツにジーパン。
少し長い、髪。
四十代くらい、だろうか。
イケおじ風の男性が――。
私に、声をかける。
男性「君、大丈夫?」
琉々「はい、大丈夫です…」
男性「おい、神楽夜――」
「いきなり、どうした?」
「知り合いか?」
神楽夜「いいのよ」
「そんな奴」
男性「なんか――」
「連れが、申し訳ない」
バツが悪そうに謝る男性。
神楽夜は――。
すっと、振り向いて。
私から離れて――。
電車を待つ列に、並んだ。
男性「待て待て、俺を置いていくな」
「たく――」
「最近の若い子は、難しいな~」
そう言って――。
頭を掻きながら、神楽夜を追いかけた。
私は――。
まだ痛い頭を、押さえながら。
近くのベンチに座って、休む。
(なんで、お姉ちゃん?)
(それより――)
(今見えたのは、何?)
(過去の......私?)
(もしかして、私の前世?)
電車が来て――。
二人は、その電車に乗って行ってしまった。
私は――。
少し休んで。
次の電車に乗って――。
紅菜たちが待っている。
長谷部寺駅に、向かった。
* * *
紅菜「琉々~、待ったよ~」
「次の電車に、乗ってなかったから――」
「心配したよ」
「何か、あったの?」
琉々「ごめん」
「ちょっと、具合悪くなって――」
「ベンチで、休んでた」
紅菜「大丈夫?」
麗「ちょっと、休む?」
姫心「琉々大丈夫?」
「琉々の休憩も兼ねて――」
「この辺で、ご飯食べようか?」
紅菜「そうだね!」
「そうしよ!」
姫心「ここのお店の名物は――」
「生しらす丼」
「口コミの評価も結構高かったよ。」
紅菜「お! いいね!」
私たちは――。
お店に入って、注文した。
紅菜「みんな――」
「生しらす丼で、いい?」
三人とも――。
頷いた。
少し待つと――。
四つの生しらす丼が、運ばれてきた。
紅菜「わ~!」
「美味しそう!」
「姫心、醤油取って」
姫心「はい」
麗「紅菜、次貸して」
紅菜「はい」
と、麗に醤油を渡す。
みんな――。
醤油をかけ終わったタイミングで。
紅菜「じゃ~――」
「いただきますか!」
三人「いただきます」
紅菜「なにこれ!」
「プルプルして、美味しい!」
麗「美味しい」
「意外と、甘味があるんだね」
姫心「そういえば――」
「琉々、体調はどう?」
琉々「うん、もう平気みたい」
姫心「良かった」
紅菜「あ、そうそう――」
「さっき、琉々を待ってる時に――」
「この前動画で見た、神楽夜ちゃん見たよ!」
紅菜「ついでに、麗のお父さんも!」
麗「私も、びっくり!」
「あの神楽夜ちゃんと――」
「知り合いとは、思わなかった」
琉々(さっきの男性は――)
(麗のお父さんだったんだ)
姫心「麗のお父さんって――」
「何してる人?」
麗「うちのお父さん――」
「プロの、ミュージシャンなんだよね」
「今、神楽夜ちゃんのレコーディングに――」
「参加してるって、言ってた」
麗「ま、さっき知ったんだけどね」
紅菜「あんな可愛い子と一緒に歩いて――」
「不倫とか?」
紅菜が――。
悪気もなく、聞いた。
麗「ないない」
「うちのお父さん――」
「世界でお母さんより、いい女はいないって――」
「いつも、言ってるもん」
姫心「へ~、素敵だね」
麗「お母さんは――」
「いつも、はいはいって、聞き流してるけどね」
琉々「お父さんとお母さん――」
「仲良いんだね」
「羨ましい」
麗「うん、憧れるよね」
「そういう、夫婦」
生しらす丼を、食べながら。
みんな頷いた。
紅菜「お腹もいっぱいになったし――」
「そろそろ長谷部寺、行こっか!」
麗「そうだね」
姫心「長谷部寺は――」
「ここから、すぐだよ」
お会計をして――。
四人で、長谷部寺に向かった。
* * *
入場料を払い――。
中に入ると。
綺麗に手入れされた、木々が広がる。
(わ~――)
(なんか、自然があって落ち着く)
石段を登り――。
まずは、一番上にある。
本堂を、目指す。
姫心が――。
興奮気味に。
姫心「ここの十一面観世音様――」
「見たかったんだ!」
「高さ、十メートルもあるんだよ!」
紅菜「へ~、めちゃ大きいね」
姫心「見たら、びっくりすると思う!」
本堂へ到着し――。
中に入ると。
とんでもない大きさの――。
十一面観世音様が、いた。
紅菜「やば、でか!」
麗「あ~――」
「ここ、撮影禁止か~」
「脳裏に、焼き付けるしかないね」
姫心「ね、すごいでしょ!」
紅菜は――。
笑いながら。
紅菜「姫心の――」
「テンションの上がり具合も、すごい」
それにしても――。
本当に、大きい。
そして――。
なんか、優しく包んでくれるような。
深い愛に満ちた、エネルギーを感じる。
圧巻の十一面観世音様に向かって――。
四人で、手を合わせた。
* * *
本堂を出て――。
右の方に行くと。
街が一望できる、展望台があった。
紅菜「わ~――」
「なんか、私たちの街みたいだね!」
麗「うん、とっても素敵な街並み!」
麗は――。
そう言いながら。
カメラを、構えてた。
姫心「こっちの方に――」
「もっと上に行けそうな道、あるから――」
「行ってみよ」
私たちは――。
さらに、石段を登り。
海と街が、重なり合う景色を楽しんだ。
姫心「じゃ~――」
「次は、大黒天さんのところに――」
「お参り、行こっか」
三人「お~!」
来た道を降りて――。
左に曲がると。
弁天堂と大黒堂が、あった。
先に――。
弁天堂に、挨拶して。
大黒堂の大黒天さんに、挨拶。
大黒堂は――。
左の奥に。
木彫りの大黒天さんが、いた。
私たちは――。
そこで。
天嶽神社のお祭り復活を、願った。
大声で――。
お願いする紅菜を見た外国人が。
なんか、とても喜んでる。
私と姫心は――。
恥ずかしくて。
紅菜の手を引き――。
さっと、御朱印を貰って。
私たちは――。
長谷部寺を、後にした。




