神様の試練を拒否!?
いつもの、部室。
「それでは――」
紅菜が言う。
「恒例の、琉々様による――」
「神様のご神託を、頂きましょう」
麗が――。
スマホで、神楽笛を流している。
三人は――。
手を合わせて。
私に向かって、お辞儀をした。
「ちょっと――」
私は、慌てる。
「やめてよ」
「なんか、効果音も追加されてるし」
紅菜が、笑う。
「なんか――」
「この方が、雰囲気出るじゃん!」
それから――。
紅菜が、聞く。
「で――」
「神様の次なる試練は――」
「どんな内容なの?」
私は――。
ちょっと躊躇いながら、言った。
「すごく、言いにくいんだけど......」
「......『空き家の虫退治』って――」
「言われた」
真っ先に――。
姫心の顔が、歪んだ。
紅菜も――。
「え!? 虫退治?…」
「......やりたく、ない」
姫心が――。
隣で、激しく同意している。
明らかに――。
みんなの、テンションが下がっている。
誰も――。
何も、言おうとしない。
いや――。
言いたいけど、躊躇っている。
私も、同じ気持ち。
そんな中――。
紅菜が、口を開いた。
「え~――」
「今回のミッションは......」
「パスしたいと、思います!」
すぐさま――。
姫心が、同意した。
「そうしよう!」
麗が二人を見て。
「最近――」
「あんたたち、仲良いね」
紅菜と姫心が――。
口を揃えて。
「虫は、無理!」
同時に言って――。
二人で、顔を合わせ。
なぜか、力強く握手した。
「でも――」
麗が言う。
「せっかく、琉々が聞いてくれたんだし――」
「神様のミッション、スルーして――」
「バチ当たらないのかな?」
紅菜が、必死に言う。
「でも――」
「無理なもんは、無理なの!」
「今回ばかりは――」
「神様、許してください!」
紅菜が――。
私に向かって。
手を合わせて、懇願している。
「私に、言われても......」
「とにかく――」
紅菜が、決める。
「今回のミッションは、無しということで!」
紅菜と姫心の――。
強い希望で。
今回のミッションは――。
スルーすることに、なった。
その日は――。
解散して。
私たちは、家に帰った。
* * *
「ただいま~」
家のドアを開けると――。
おばあちゃんが、新聞紙を丸めて。
何やら、壁を叩いている。
「おばあちゃん、どうしたの?」
おばちゃんがこっちを見た。
「あ~、琉々ちゃん――」
「おかえり」
「なんか、家にクモが入ってきちゃって――」
「追い払ってるのよ」
「あ! そっち行った」
五センチほどの――。
クモが、私に向かって。
素早い動きで、向かってきた。
「わっ」
慌てて、クモを避ける。
クモは――。
そのまま。
玄関から、出て行った。
(クモが出るなんて、珍しいな~)
* * *
紅菜の家。
「ただいま~」
小学三年生の弟――。
樹が、駆け寄ってきた。
「ねぇねぇ、ねえちゃん」
「『ななむし』って、知ってる?」
「なにそれ?」
紅菜が、首を傾げる。
「新種の、虫?」
「違うよ」
樹が、答える。
「『ろくむし』の、進化系!」
「颯真と、作った!」
「颯真って――」
紅菜が言う。
「悠真の、弟?」
「そう」
樹が、頷く。
「前にも、颯真の話したじゃん」
「そうだっけ?」
紅菜が、首を傾げる。
「てか、『ろくむし』って何?」
「そんなのも、知らないの?」
樹が、言う。
「ま、いいや」
そう言って――。
樹は、台所にいるお母さんに。
同じ話を、している。
「ねぇねぇ、お母さん」
「『ななむし』って、知ってる?」
「なにそれ?」
紅菜のお母さんが、聞き返す。
* * *
麗のお店。
「ただいま~」
帰ってきた麗を見て。
「あら、おかえり」
「ねぇ、麗――」
「このエプロン、可愛くない?」
そう言って――。
てんとう虫の描かれたエプロンを。
麗に、見せた。
「どうしたの、それ?」
「ネットで、たまたま見つけて――」
麗のお母さんが答える。
「すぐさま、ポチったのよ!」
「ふ~ん」
麗がてんとう虫のエプロンを見ながら。
何やら考えている。
* * *
自転車を漕いで――。
家に向かう、姫心。
途中――。
道端に、アリの行列が。
(これじゃ、通れないじゃん)
アリが通り過ぎるのを――。
見ている、姫心。
(全然、途切れないな〜)
* * *
翌日の、部室。
いつものように、四人で集まっている。
紅菜が――。
口を開いた。
「なんか――」
「昨日から『虫、虫、虫』って――」
「なんか、呪われてるんだけど…」
「私も、一緒」
麗も同意する。
「昨日帰ったら――」
「なぜか、お母さんが――」
「てんとう虫のエプロン、してた」
「私も――」
姫心も口を開く。
「帰り道――」
「道を横断する、アリの大群に遭遇して――」
「道、通れなかった」
(なんか、みんな似たようなことが起きてる)
「これって――」
麗が言う。
「紅菜が、神様のお告げを――」
「無視したからじゃない?」
「ぐぅぅ......」
紅菜が、うめく。
「やっぱり――」
麗が言う。
「神様の試練は、避けられないのかもね」
姫心は――。
虫退治がよほど嫌なのか。
溶けて、椅子から滑り落ちている。
「たぶん――」
「やるまで、虫のメッセージ続くかも......」
私は答えた。
「だよね~」
紅菜が、ため息をつく。
「はぁ~」
気を取り直して――。
紅菜が言った。
「しょうがない」
「やるしかないか〜」
みんなの嫌々な気持ちが伝わってくる。
それでも、諦めたかのように。
三人とも――。
「おぉ~ぉ」
低いテンションで、賛同した。
「琉々――」
紅菜が、聞く。
「ちなみに、空き家って――」
「どこにあるか、聞いた?」
「うん――」
私は、頷く。
「天嶽町にある、青い屋根の家だって」
「そっか――」
紅菜が言う。
「じゃ~、週末みんなで――」
「空き家探し兼、虫退治だね」
私と麗が――。
頷いた。
「私......」
姫心が、小さく言う。
「今回、パスしていいかな?」
三人が――。
同時に、答えた。
「だ~め!!」
それを聞いて――。
項垂れる、姫心。
紅菜が麗の方を見て。
「麗――」
「姫心が逃亡しないように――」
「当日、家まで迎えに行って」
「了解!」
麗が――。
敬礼して、答えた。




