神様のお告げ
放課後。
神社部の部室。
私たち四人は――。
部室に集まっていた。
「みんな――」
紅菜が、聞いた。
「チラシの方は、どう?」
「置かせてくれたのは――」
私は、答える。
「古本屋さんだけ、だった」
「私は――」
麗が言う。
「飲食店、三件」
「私は――」
姫心も答える。
「実家のお寺と、和菓子屋さん」
「やっぱり――」
紅菜が、ため息をつく。
「厳しいね~」
それから――。
紅菜が、麗を見た。
「そういえば、麗――」
「天嶽神社のアカウントって、増えてる?」
「全然」
麗が、スマホを見せる。
「今、フォロワー八人」
「そっか~」
紅菜が、肩を落とす。
「なかなか、うまく行かないね~」
それから――。
紅菜が、ふと呟いた。
「どうせなら――」
「神様、力貸してくれないかな~」
「お!」
麗が、パッと顔を上げた。
「琉々、神様にアドバイスもらえないかな?」
「そんな都合よく――」
姫心が、首を傾げる。
「教えてくれるかな?」
三人が――。
私を、見る。
「う~ん......」
私は、困った。
「わからない......」
「とりあえず――」
紅菜が、立ち上がった。
「みんなで、天嶽神社行ってみよう!」
「うん!」
私たちは、神社へ向かった。
* * *
天嶽神社。
本殿の前。
私たち四人は――。
手を合わせた。
「神様!」
紅菜が、大きな声で言う。
「どうしたらいいか、アドバイスください!」
私は――。
神様の意識に、合わせてみた。
心の中で、問いかける。
(神様――)
(どうか、教えてください)
その瞬間――。
音が、消えた。
世界が、止まったように感じる。
そして――。
あの声が、聞こえてきた。
『町中の花を集めて――』
『港町に、行きなさい』
神様の、声。
「琉々?」
紅菜が、私を見ている。
「神様の声、聞こえた?」
「…聞こえた」
私は、頷く。
「『町中の花を集めて、港町に行きなさい』って」
「言われた」
「すごい!!」
三人が、叫んだ。
飛び跳ねて、喜ぶ。
「よ~し!」
紅菜が、拳を上げる。
「みんなで花を集めて――」
「潮浜町に、行こう!」
「おー!」
私たちは、声を揃えた。
* * *
私たちは――。
自転車を走らせた。
森に咲く、花。
公園に咲く、花。
道端に咲く、花。
いろんな場所で――。
花を、集めていく。
「これ、綺麗!」
紅菜が、花を摘もうとする。
「ちょっと!」
姫心が、止める。
「それ、人の家の花だよ!」
「え、そうなの?」
紅菜が、慌てて手を引っ込める。
私たちは――。
笑いながら。
また、花を探した。
* * *
「結構、集まったね!」
紅菜が、嬉しそうに言う。
「せっかくだから――」
「花束にしようよ!」
「いいね!」
私たちは――。
集めた花を、束ねた。
綺麗な、花束。
色とりどりの、花。
「できた!」
麗が、花束を持ち上げる。
「じゃあ――」
紅菜が言った。
「姫心、花束かごに入れといて」
「OK」
姫心が、自転車のかごに入れる。
「それじゃ――」
「潮崎町に、出発!」
* * *
潮崎町へ向かう――。
坂道。
四人で、自転車を走らせる。
でも――。
私の自転車が、おかしい。
さっきから――。
違和感があった。
(なんだろう......)
坂道を、下る。
ブレーキを、かけようとした。
その瞬間――。
ブレーキが、効かない。
「え......」
スピードが――。
どんどん、上がっていく。
坂道の先は――。
車が行き交う、道路。
(やばい......)
このままだと――。
道路に、突っ込む。
車に、轢かれる。
気づくと、前を走っていた紅菜を――。
追い越していた。
スピードが、止まらない。
後ろで――。
みんなの叫ぶ声が、聞こえる。
(ダメだ......)
(道路に、突っ込む)
「琉々!!」
紅菜の、声。
でも――。
止まれない。
* * *
紅菜は――。
目の前で道路に突っ込む琉々を。
見ることしか、できなかった。
道路を――。
車が、何台も通り過ぎる。
三人は――。
道路の前で、止まった。
「琉々!!」
紅菜が、叫ぶ。
でも――。
車に轢かれた琉々の姿が、見えない。
道路を、渡る。
向こう側――。
田んぼに。
自転車ごと突っ込んだ――。
琉々が、いた。
「琉々!」
紅菜が、自転車を放り投げて。
駆け寄る。
「大丈夫!?」
「うん......」
私は、頷く。
「ちょっと擦りむいたけど――」
「平気」
「良かった~......」
紅菜が――。
へたり込んで、崩れ落ちた。
* * *
麗と姫心も――。
走って、近寄ってきた。
「あんなに車が行き交う道路に突っ込んで――」
姫心が、信じられないという顔で言う。
「擦り傷だけって、奇跡だね!」
「天嶽神社の神様が――」
私は、思った。
「守ってくれたのかも」
「絶対そうだよ!」
紅菜が、力強く頷く。
「私も、そう思う」
麗も言った。
「普通なら――」
「車に轢かれて、救急車で運ばれてるところだよ」
「はぁ~」
紅菜が、大きく息をつく。
「本当に、良かった~」
「私は、大丈夫だから――」
私は、立ち上がる。
「花束を、潮浜町に届けに行こう」
「それにしても――」
姫心が、首を傾げる。
「誰に、届ければいいんだろうね?」
「ま――」
紅菜が、笑う。
「行けば、分かるんじゃない?」
私たちは――。
また、自転車を漕ぎ始めた。
潮崎町へ。
花束を、届けるために。
神様が――。
何を望んでいるのか。
それは――。
まだ、分からない。
でも――。
きっと、意味がある。
そう信じて――。
私たちは、自転車を走らせる。




