表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/27

チラシ配り

後日。


天嶽駅前。


私たち四人は――。


自転車で、集合していた。


「はい、これ――」


姫心が、大きな袋を持って。


「みんなの分」


チラシの束を、配ってくれる。


「ありがとう~!」


麗が受け取る。


「重くなかった?」


「全然平気」


姫心が笑う。


「結構印刷したから――」


「お父さんから、あまり無駄遣いするなよって言われた」


チラシは――。


姫心の家のお寺に。


業務用のプリンターがあるということで。


印刷してもらった。


「よ~し!」


紅菜が、拳を上げる。


「それじゃ、みんなで配ろう!」


「おぉ~!」


私たち三人も、拳を上げた。


* * *


「天嶽神社のお祭りに――」


「協力お願いします~!」


四人で――。


それぞれ、声を出して。


チラシを、配り始める。


でも――。


私は、恥ずかしくて。


小さな声しか、出せなかった。


(恥ずかしい......)


隣の姫心を見ると――。


姫心も、私と同じように。


恥ずかしそうにモジモジしてる。


紅菜と麗は――。


全然平気みたい。


大きな声で。


笑顔で。


チラシを、配っている。


(こういう時――)


(この二人は、頼りになる)


私も――。


頑張らなきゃ。


「お願いしま〜す」


その時――。


駅から出てきた少女の――。


大きなキャリーバッグが、私の足を引いた。


「痛っ」


彼女は、私に気づかず。


通り過ぎていった。


銀色の髪が、風に揺れる。


白く、透き通るような肌。


紅い瞳には――。


どこか、憂いが宿っている。


黒いワンピース。


裾には、月と星の刺繍。


レースが、幾重にも重なっている。


和とゴシックが、融合したような。


不思議な、装い。


この世のものとは思えない――。


儚げな雰囲気を纏った少女。


そんな彼女の後ろ姿を――。


ぼんやりと、見ていた。


「琉々、どうかした?」


紅菜が心配そうに聞いてきた。


「ううん、大丈夫」


そう答えながら――。


彼女の後ろ姿を、見ていた。


* * *


配り始めて――。


一時間ほど。


「全然、もらってくれないね~」


麗が、ため息をつく。


「世間は――」


「女子高生に、厳しいよ~」


紅菜も、肩を落とす。


「諦めずに、頑張ろう」


姫心が、励ます。




そんな話をしていると――。


「君たち」


声がした。


振り向くと――。


警察官が、近づいてきた。


「え!?」


姫心が、固まる。


「警察の人が、こっち来る!?」


「え!? なんで!?」


紅菜が、慌てる。


「私たち、なんかした?」


紅菜が――。


逃げ出そうとする。


その瞬間――。


麗が、紅菜の首根っこを掴んだ。


「こらこら」


麗が、冷静に言う。


「逃げたら、余計怪しまれるじゃん」


「う......」


紅菜が、観念する。


* * *


「君たち――」


警察官が、私たちの前で止まった。


「清杜高校の、生徒さん?」


「は、はい......」


私たちは、頷く。


「ちゃんと、許可取ってる?」


「許可......?」


紅菜が、首を傾げる。


「道端でチラシ配る時は――」


警察官が、説明する。


「ちゃんと、道路使用許可を取らないとダメだよ」


「今日は、もう帰りなさい」


その言葉に――。


私たちは、言葉を失った。


許可が――。


必要だったんだ。


知らなかった......。


「は~い......」


麗が、小さく返事をする。


麗の後ろに――。


紅菜と姫心が、隠れている。


二人も――。


小さく、返事をした。


私は――。


怖くて、固まっていた。


* * *


麗の実家の喫茶店。


天嶽町にある――。


「甘味処・たまゆり」


落ち込んだ私たちは――。


ここに、逃げ込んできた。


「は~い、お待たせ」


麗のお母さんが――。


トレーを持って、やってきた。


「たまゆりあんみつ、二つに――」


「栗蜜プリン」


「抹茶パフェね」


テーブルに、次々と並ぶ。


綺麗で、美味しそう。


「わ~、おいしそう!」


紅菜が、目を輝かせる。


「麗は、毎日こんな美味しいの食べれるなんて――」


「羨ましい~」


「毎日食べれるわけないじゃ~ん」


麗が、苦笑する。


姫心は――。


抹茶パフェを。


幸せそうに、頬張っている。


「んん~......」


悶えている。


よっぽど、美味しいんだろうな。


「ねえ、姫心――」


紅菜が、手を伸ばす。


「パフェ、ちょっとちょうだい」


「ちょっ――」


姫心が、慌てる。


「勝手に食べないでよ!」


「いいじゃん」


紅菜が、笑って。


「はい、白玉あげる」


自分のたまゆりあんみつの白玉を。


姫心のパフェに、乗せた。


「もう......」


姫心が、困った顔をする。


でも――。


嬉しそう。


「それにしても――」


麗が、ため息をつく。


「チラシ作戦、ダメだったね~」


「そういえば――」


紅菜が、ふと思いついたように。


「麗のお店に、チラシ置かせてもらえないの?」


「もう、置いてるよ」


麗が、店内を指差す。


「ほら、あそこ」


雑誌が並んでいる棚に――。


チラシが、綺麗に置いてある。


「ほんとだ」


私は、気づかなかった。


「麗のお店みたいに――」


姫心が言った。


「いろんなお店に、置いてもらうのがいいのかな?」


「その方が、いいかもね」


麗が頷く。


「駅で配ると――」


「また、怒られちゃうもんね」


「いや~」


紅菜が、ぶるっと震える。


「警察官には、ビックリしたよね~」


「ほんと、怖かった~」


「ほんと――」


姫心も頷く。


「警察署に、連れて行かれるんじゃないかと思ったよ」


それから――。


姫心が、私を見た。


「それにしても――」


「琉々は、意外と冷静だったね」


「え......」


私は、首を振る。


「いや、怖くて固まってただけ......」


「ウケる!」


紅菜が、笑い出す。


「琉々、顔固まってたんだ!」


それから――。


紅菜が、無表情で固まってみせる。


私の、真似。


「そんなじゃないよ〜」


私は、反論する。


「紅菜だって――」


「麗の後ろで、ブルブル震えてたくせに~」


私も――。


紅菜の真似をする。


麗の後ろに隠れて。


怯えている、紅菜の真似。


「あはは!」


麗と姫心が、笑い出す。


「二人とも、ウケる!」


四人で――。


笑い合った。


警察官は怖かったけど――。


今は、笑える。


みんなと一緒だから。


* * *


笑いが落ち着いて――。


紅菜が、真剣な顔で言った。


「とりあえず、当面は――」


「各自、いろんなお店に行って」


「チラシ置いてもらう作戦にしよう」


三人とも、頷く。


「置いてもらえるといいね~」


姫心が、少し不安そうに言う。


「大丈夫でしょ!」


紅菜が、明るく笑う。


その笑顔が――。


私たちを、元気づける。


* * *


帰り際――。


「ごちそうさまでした」


私たち三人は――。


麗のお母さんに、お辞儀をした。


「気をつけてね」


お母さんが、笑顔で見送ってくれる。


「はい」


紅菜「麗またね〜」


麗「うん、また学校で」


私と姫心も麗に手を振る。


私たち三人は――。


それぞれの家に向かって。


自転車で、走り出した。


今日は――。


失敗だったけど。


でも――。


また頑張ればいい。


紅菜が、いつも言うように。


「できることから、少しずつ」


私たちは――。


お祭りの実現に向けて進み続ける。


夕日が――。


私たちの背中を。


温かく、照らしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ