お祭り復活の第一歩
次の日の放課後。
私たち四人は――。
悠真の家へ向かっていた。
「ここだよ」
悠真が、立派な門の前で止まる。
古い日本家屋。
大きな家だ。
「わあ......」
思わず、声が出る。
「すごい家......」
麗も、驚いている。
「入って、入って」
悠真が、門を開けた。
* * *
玄関で靴を脱いで。
廊下を進む。
古い木の匂い。
でも――。
綺麗に手入れされている。
「じいちゃ~ん!」
悠真が、大きな声で呼ぶ。
「昨日話した子たち、連れて来た~!」
「おお」
奥から、声が聞こえた。
居間に――。
おじいちゃんが、座っていた。
白髪の、優しそうなおじいちゃん。
背筋が、ピンと伸びている。
「いらっしゃい」
おじいちゃんが、笑顔で迎えてくれた。
「お邪魔します」
私たち四人は――。
丁寧に、お辞儀をした。
* * *
居間に通されて。
座布団に座る。
おじいちゃんが――。
お茶を入れてくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
温かいお茶。
ほっと、する。
「じいちゃん――」
悠真が言った。
「この子たちが、天嶽神社のお祭りを――」
「もう一度、復活させたくて」
「じいちゃんに、話聞きたいんだって」
「そうか、そうか」
おじいちゃんが、優しく微笑む。
「どんなこと、聞きたいんだ?」
紅菜が――。
前に乗り出して。
真剣な顔で言った。
「天嶽神社で――」
「もう一度、お祭りを開催するには」
「どうしたらいいですか?」
* * *
おじいちゃんが――。
少し、困った顔をした。
「そうだな~」
お茶を一口、飲んで。
「祭りは、お金も掛かるし」
「手伝ってくれた人も――」
「今は、みんな歳だからな~」
「神輿も、無いし」
おじいちゃんが、ため息をつく。
「なかなか難しいのが――」
「正直なところだな」
「それに――」
「祭りの準備も大変だし」
「氏子たちが、なんと言うか......」
私たち三人は――。
顔を見合わせた。
やっぱり――。
難しいのかな。
紅菜も――。
少し、落ち込んでいる。
麗も、姫心も。
うつむいている。
* * *
でも――。
紅菜が、顔を上げた。
「つまり――」
紅菜が、真剣な顔で言う。
「お金と――」
「手伝ってくれる人が見つかれば」
「お祭りは、開催できるってことですか?」
おじいちゃんが――。
困ったように、首を振った。
「それだけじゃ、無理じゃよ」
「何かあった時に――」
「責任取れる人も、必要だから」
「君たちだけじゃ、無理じゃ」
「諦めなさい」
その言葉に――。
私たちは、言葉を失った。
紅菜も――。
麗も――。
姫心も――。
みんな、うつむいている。
私も――。
胸が、苦しくなった。
やっぱり――。
私たちだけじゃ、無理なのかな。
* * *
悠真の家を出て――。
帰り道。
四人で、並んで歩く。
誰も、何も言わない。
重い空気。
「やっぱり――」
姫心が、小さく呟いた。
「私たちだけじゃ、無理なのかな~」
「......」
紅菜が、黙っている。
いつもの――。
明るい紅菜じゃない。
それが――。
なんだか、辛い。
しばらく――。
みんな、黙って歩いた。
それから――。
紅菜が、立ち止まった。
* * *
「あのね――」
紅菜が、顔を上げた。
いつもの――。
明るい紅菜。
「私たちでできることから、始めない?」
力強く、言った。
「まずは、人集めだよね!」
紅菜が、麗を見る。
「麗――」
「お祭りを手伝ってもらうための」
「チラシって、作れる?」
「もちろん!」
麗が、パッと笑顔になる。
「明日、作って持っていくね!」
「ありがとう!」
紅菜が、嬉しそうに笑う。
「よし!」
「明日、また部室に集合ね!」
「うん!」
私たちは――。
紅菜の言葉に引っ張られ。
また、元気を取り戻した。
* * *
翌日。
放課後。
神社部の部室。
「みんな――」
麗が、ノートパソコンを開いて。
画面を、見せてくれた。
「昨日話してた、チラシ」
「こんなんで、どう?」
画面には――。
綺麗なチラシのデザイン。
天嶽神社の写真。
「お祭り復活にご協力ください!」
の文字。
「おぉ~!!」
私たち三人は、声を揃えた。
「いいじゃん!!」
紅菜が、目を輝かせる。
「すごい、麗!」
姫心も、感心している。
麗は――。
やっぱり、すごい。
* * *
「でも――」
麗が、少し困った顔をする。
「一つ、問題があって」
「連絡先、どうするかなんだよね」
「協力してくれる人が見つかっても――」
「連絡取れないと、意味ないからさ」
「確かに」
姫心が、頷く。
「そこで――」
麗が、提案した。
「天嶽神社の、SNSアカウント作って」
「それを、フォローしてもらえばいいかなって?」
「それ、いいね!」
紅菜が、賛成する。
私も――。
いいと思う。
でも――。
姫心が、手を挙げた。
「SNSやらない、年配の人とかは――」
「どうする?」
「あ......」
紅菜が、固まる。
「う~ん、どうしよう」
紅菜が、考え込む。
「名前と電話番号、もらうとか?」
「それは、さすがにまずいんじゃない?」
姫心が、首を振る。
「だよね~」
紅菜が、困った顔をする。
「とりあえず、その時考えよう」
それから――。
紅菜が、パッと顔を上げた。
「まずは明日――」
「天嶽駅で、このチラシを――」
「みんなで配ろう!」
「うん!」
私たちは、声を揃えた。
お祭り復活への――。
第一歩。
私たちは――。
できることから、始めることにした。
小さな一歩かもしれない。
でも――。
諦めない。
紅菜が、いつも言う。
「できることから、少しずつ」
その言葉を――。
胸に刻んで。
私たちは――。
前に進むことにした。




