天嶽神社のお祭り復活
放課後。
神社部の部室。
私たち四人は――。
ミーティングのため、集まっていた。
「それじゃあ――」
紅菜が、立ち上がって。
「天嶽神社を盛り上げるための会議を始めます!」
元気よく、宣言した。
「みんな、それぞれ意見を出し合おう!」
「おー!」
私たち三人も、声を揃える。
天嶽神社を盛り上げる。
それが――。
私たちの、目標。
* * *
「やっぱりさ――」
麗が言った。
「盛り上げるくらいだから」
「多くの人が集まる神社にしたいよね」
「そうだね」
姫心が頷く。
「人を集めるには――」
「神社で何かイベントやるとか?」
「イベントか......」
紅菜が、顎に手を当てて考える。
「何か、名物的なものを作るとか?」
麗が提案する。
「そもそも――」
私は、ふと思った。
「天嶽神社のご利益って、何?」
「金運? 縁結び? 厄除け?」
「なんだろう?」
みんなが、顔を見合わせる。
「紅菜、知らないの?」
麗が、驚いた顔で言う。
「えっと......」
紅菜が、少し困った顔をする。
「たぶん、厄除け?」
「たぶん?」
私も、思わず聞き返す。
「実はね――」
紅菜が、真剣な顔で話し始めた。
* * *
「私――」
紅菜が言う。
「子供の頃に――」
「覚えてないんだけど、何日も高熱で苦しんだことがあって」
「病院行っても、原因が分からないって言われたらしいの」
「それで――」
「お母さんが、おばあちゃんに話したら」
「天嶽神社の神様に、病気治るようにお願いしなさいって」
「そう言われたんだって」
「それから――」
「お母さんが、一ヶ月ずっと私を連れて通ってくれて」
「そしたら、熱が下がって治ったの」
「だから――」
紅菜が、優しく笑う。
「病気とか、厄除けのご利益があるんだと思う」
「へえ......」
麗が感心したように言う。
「紅菜、子供の頃そんなことがあったんだ」
「そういえば――」
姫心が言った。
「紅菜って、たまに体調悪くなるよね」
「そう」
紅菜が頷く。
「だから、天嶽神社には――」
「掃除も兼ねて、定期的にお参りしてるんだよね」
私は――。
紅菜の話を聞きながら。
ふと、思った。
(あ、それ多分――)
(霊障だ)
(紅菜、憑きやすいんだ)
(あれ?)
(私、なんでそんなこと分かるんだろう?)
不思議な感覚。
でも――。
確信に近い、何か。
* * *
「水の神様もいるし――」
紅菜が続ける。
「穢れを流してくれる効果もあるんだと思う」
それから――。
紅菜が、嬉しそうに笑った。
「なんか、琉々と会ってから――」
「体調いいんだよね!」
「不思議!」
「え......」
私は、驚いた。
「へえ~」
麗が、私を見て。
「琉々が、神様の力で紅菜を守ってるのかな?」
「そ、そんな......」
私は、恥ずかしくなる。
でも――。
(もしかして、そうなのかな?)
そんな気もする。
* * *
「それにしても――」
紅菜が、また考え込む。
「神社を盛り上げる案」
「なかなか浮かばないね〜」
みんな、黙り込む。
シーン......
静かな部室。
その時――。
私は、思い切って言ってみた。
「あの――」
みんなが、私を見る。
「天嶽神社で――」
「もう一度、お祭りやるのはどう?」
一瞬、静まり返った。
それから――。
紅菜が、パッと顔を輝かせた。
「それだ!!」
麗と姫心も――。
大きく頷く。
「天嶽神社で――」
紅菜が、力強く言った。
「もう一度、『お祭り』を開催しよう!」
「うん!」
私たちは、声を揃えた。
* * *
その時――。
コンコン。
窓を叩く音。
グラウンド側の窓。
振り向くと――。
悠真が、窓から覗いていた。
そして――。
その足元には。
犬?が、三匹。
白い、ふわふわの犬。
(え......?)
私は、目を疑った。
(この前は、一匹だったのに)
(増えてる......)
「あ! ゆう――」
姫心が、悠真を見つけて。
声をかけようとした、その時――。
「よ!」
悠真が、窓を開けて。
「紅菜、何してるんだ?」
「今――」
紅菜が、ムッとした顔で言う。
「大切な会議してるから、話しかけないで!」
「てか、また犬連れてるの?」
「うるせーな~」
悠真が、困ったように。
「勝手に付いてくるんだよ」
「てか、犬じゃなくて狐だよ」
狐――。
やっぱり、犬じゃなかったんだ。
でも――。
なんで、三匹も?
* * *
「紅菜だって――」
悠真が、ニヤリと笑う。
「昔はよく、俺に付いて来てたじゃねーか~」
「う、うるさい!」
紅菜が、顔を赤くする。
「そんな昔の話しないで!」
「ちょっと黙ってて!」
「また始まった......」
麗が、呆れたように呟く。
「夫婦漫才」
私も――。
思わず、笑ってしまう。
「てか――」
悠真が、部室を見回して。
「人数、増えてるじゃん」
「あれ? 咲良もいるじゃん」
「咲良、剣道部じゃなかったっけ?」
「う、うん......」
姫心が、少し恥ずかしそうに言う。
「最近、入ったの......」
「そっか」
悠真が、優しく笑う。
姫心が――。
ちょっと、頬を赤らめた気がした。
* * *
「そういえば――」
紅菜が、ふと思い出したように言う。
「悠真のおじいちゃんって」
「昔、お祭り仕切ってたよね?」
「そうだけど」
悠真が、首を傾げる。
「それが、どうした?」
「天嶽神社で――」
紅菜が、真剣な顔で言った。
「お祭りを、もう一度やりたくて」
「一回、おじいちゃんに話聞きたいの」
「ふーん」
悠真が、ニヤリと笑う。
「別にいいけど~」
「紅菜が可愛く――」
「『悠真様、お願いします』って言ってくれたら、いいよ」
「は!?」
紅菜が、目を丸くする。
「そんなの、できるわけないじゃん!」
「じゃー」
悠真が、肩をすくめる。
「紅菜のお願い、聞かない」
「......」
紅菜が、悔しそうに唇を噛む。
それから――。
小さな声で。
「ゆ、悠真......」
「お、お願いします......」
恥ずかしそうに、言った。
「......ま」
悠真が、満足そうに笑う。
「可愛かったから、それで許そう」
「そういうの、いいから!」
紅菜が、顔を真っ赤にする。
「おじいちゃん、紹介して!」
* * *
「ねえ、麗――」
姫心が、小さな声で麗に聞いた。
「紅菜と悠真って、仲良さそうだけど、なんで?」
「幼馴染だよ」
麗が、笑いながら答える。
「毎回、会うたびに夫婦漫才してるの」
「さっさと付き合っちゃえばいいのにね」
「そう......なんだ......」
姫心が――。
少し、寂しそうに呟いた。
私は――。
その様子を見て。
(姫心――)
(悠真のこと、好きなのかな)
そんな気がした。
窓の外では――。
三匹の狐が。
尻尾を揺らしながら。
悠真の足元で、じゃれていた。
不思議な光景。
でも――。
なんだか、神様の使いみたい。
神社部の――。
新しい一歩が。
始まろうとしていた。




