表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

6) マスターを管理者に

 吉良ミマリがサポーターの詳しい情報を持ってきたのは月曜の夕方のことだった。

「アセスメントならメールで送ればいいのに。」

と、レモン。

「はい、コンプライアンス違反!!」

「エェ――――――!リコ、本当なの?」

「静かにしなさい。」

支部長の注意に

「「ハーイ。」」と、レモンとリコ。

 支部長は、藤村とミマリを中心とした学生がまとめたサポーター、マリア(仮名)の情報を見た。


 ワーキングロイドno.89:マリア

購入者:澤井義茂 管理者:澤井武一

インストールソフト: 

日本語 介護の基本 介護の応用 家事の基本

家事の応用 コーヒーの楽しみかた

補足:管理者は澤井武一氏だが、機体管理は澤井義茂氏が窓口になっている。


「1枚目は正規購入時の書面ね」

「ママ、見せてね。」

「支部長よ。リコ。」

「ハーイ、支部長。」

 リコは1枚目の書面を見た。

「マリアって名前だったんだ。」

「何か運命的な縁を感じるわ」

「そうだね。支部長」

「是非とも、マスターに管理者になって貰わなきゃ。」


ロットナンバー89

 管理者の澤井武一氏と妻の岬氏と購入時から8年間、介護と家事手伝いをしていた。澤井武一氏が死去したことで中古としてM社に引き取られる。初期化不能のため整備とソフト追加のみで中古機体として販売。月胡(飲食店業)に販売される。

1ヶ月メンテナンス、3ヶ月メンテナンスでは異常なし。半年経たずに月胡が倒産し、機体no.89の所在は不明になる。


「支部長、この書面はなんですか?」

「機体の中古販売とその管理表よ。レモン。」

「??なんで所在不明まで管理するのかな?」

「これは管理表の概要だけど、ちょうど、サポーターが強制的に犯罪の実行犯に使われたりしたことが世間に知れて、会社も管理を強化した頃だから残ってたのかもね。歴史を感じるわ。」

「レモン、見せて!!」

リコはレモンから書面を借りた。

「カフェショップの月胡で働いていたんだ。」

「飲食店業界特有のブラック企業として有名な所よ。改善策として、サポーターを従業員に使ったことは良いことだったけど整備しなかったことがあったり、て聞いたこともあるから、酷使されてたかもね。」

「セラピストとしては、心に留めて置きます。」

「お願いね、リコ。それに一年前に破産して、会社の受け入れ先が無かったから、サポーターがアンダーグラウンドに流れていたとも聞いたことがあるわ。マリアちゃんも売却先が反社会組織だったのかも知れないわね。」

「そうなると色々手続きが大変になりますね。」ミマリがコーヒーをすすりながら言った。

「それは大丈夫です。今はうちから被害届を出した状態で器物破損とサポーター管理法違反で取り調べになるそうです。後は管理者が決まれば楽なんですよ。」

「レモン、警察が調べている時点で大変なことなのよ。」

「そうなんですか、ミマリさん。」

「アメリカだとかとは違うからね。」

「ウーン。僕はまだまだ、日本には馴染んでないからな。」

「今回は警察からのお願いで出してるからそんなに気構えることはないんだけどね。一番大変なのは、管理者探しよね。」ため息をつきながら支部長は言った。

「そうですね、H社の初期量産型はHDDを初期化はできないし、同じHDDの在庫がないから交換はできない。それに反社会勢力との関わりがあったとなると一般の人は引き取らない。」

「それに両手足に損傷があって部品取り換えしないといけないから、費用がかかるのよね。」

「リコール期間の過ぎたAI のメンテナンスが有料になりますしね。」

支部長とミマリが同時にため息をついた。

「それを解決させるためのマスターでしょう!」リコは勢いよく言った。

「でもスタッフが中古機体を引き取るのは、会社ではタブーなのでは?」ミマリは聞いた。

「NPOだから大丈夫よ。」支部長は答えた。

「リコとレモンはここに保護されてから、私が引き取ったのよ。それも初期化なし。故障や損傷があったから会社に渡り合って人件費はかからないようにしたけど、かかった費用は私持ちよ。初期化なしの中古機体の引き取りでうちのNPOの有用性を説いたレポート知らない。対象者はこの子達よ。」

「えぇ!本当なんですか?」

「本当よ。ここのボランティアになったとある事業所の従業員の人がいたんだけど、NPOでマッチングして何体かを初期化なしの中古機体引き取って事業所で働かせているわよ。サポーターとして。」

「そうだったんですか、始めてでビックリしました。」

「人にも事情があるように、サポーターにも事情はあるわよ!」

恥ずかしそうな顔したミマリに対して、支部長は優しい顔を返した。

「ねぇ、支部長。ミマリンも“弥生マスターにマリアちゃんの管理者になってもらおう作戦”に混ざってもらうの?」

「なんですか?それ。」

リコの発言にミマリはとまどった。

「それはね、マリアちゃんは3ヶ月の間に管理者が決まらないとスクラップが決定してしまうのよ。」と、支部長

「それはわかります。」

「スクラップはサポーターの死でもあるため、NPOとしても心情的にスクラップは避けたいのよ。」

「管理者法では認められていますけど、サポーターズ・サポートでは違うのですか?」

「法律上は保護期間過ぎればスクラップは合法よ。でも、サポーターにクオリティ・オブ・ライフを高く生きてもらうために私達がいるのよ。だから、発見から保護期間の3カ月の間に見つけて来るのよ、営業ノルマみたいに。」

「そんなこともやるんですか。」

「えぇ!死んでほしくないからね。」

「そうだよ。支部長のお陰で今があるんだよ。私達。」リコが満面の笑みで答えた。

 ミマリの常識が1つ潰れた。

 サポーター管理者法は動物愛護法と同じところがあり、管理者はサポーターがいなくなるとペットロスに似た喪失感があり、また、処分についても似た感覚があるという。ミマリはサポーターを物として考え、扱うことが思考の根底にあったが、それがまちがえなのかと、今、思えた。

「色々あって、頭が混乱してます。」ミマリは正直に言った。

「今日も勉強になった。」と、リコがいう。

「なりました。ただ、答えは見つかりませんが。」ミマリは顔を赤らめて恥ずかしそうに言った。

「若いわね。でも良いことよ。」支部長は優しく微笑んだ。


 ミマリが1時間前に帰宅し、ボランティアスタッフの女性型サポーターの千尋と、千尋の管理者で同じくボランティアスタッフの本田が来た。

「遅くなって申し訳ありません!檀家さんで亡くなった方がいたんで遅くなりました。」

「こんばんワ、支部長さん、遅くなってごめんなさい。」

 本田は尼僧でニット帽を脱ぐと頭に髪は無い。サポーターの千尋は東南アジアから来たサポーターで顔が目鼻立ちの作りの大きい美人で、緩やかなウェーブの髪をボブヘアにしている。

「何皆で企んでるノ?」千尋は事務にいる事務長、リコ、レモンがワルイ顔をしているので、そう訊いた。

「今度こそ、立花マスターにサポーターの管理者になって貰おう、て考えているのよ。」

「吉良ミマリンは引いてたけどね。」

「特撮大好き女マスターさんですよね。彼女を管理者にするのは毎回失敗してますけど」本田は苦笑する。

「保護のマリアちゃんはどこデスカ?」千尋が訊いた。

「今はロボット大学校で、管理者が来るのを待っているわ。」

「プロフィールを見ますね」

「庵主さん、はい、これです。」リコが本田にアセスメントの書面を渡した。

「両手足に損傷あり、マザーボードのリコール期限が過ぎた有料メンテあり・・・。初期型なんですか、HDDの有料増設が必要だから引き取りには経費がかなりかかりますね。」

「でも、飲食店では働いていたんデショ。」と、千尋。

「そうよ。だから、管理者候補筆頭は立花マスターなのよ。」

「それは良い案ですね、支部長サン。」

「出会いは一期一会ですが、一緒にすむとなると色々あるから難しいものよ、千尋。」やや、顔を曇らせて本田は言った。

「大丈夫、リコのセラピーで今度こそマスターを管理者にして見せるから!」リコは力強く言いきった。

「ところで、ナンで立花さんをサポーターの管理者にしたいのデスカ?」

「リコからすると、適正検査で高得点、財力はある。それにね、サポーターに喫茶店の雑用を任せて私と一緒に喫茶店のインテリアとレイアウトを考えたいし、飾りつけしたい!!」

「わたしも、したいデスね。」

「僕も混ざりたい!」

「我欲丸出しですね。」本田は呆れた。

「サポーター達の欲望はさておき、立花さんという人を管理者に推し進めるとマスターさんに管理者になりたい、という人が現れる。うちのNPOのジンクスね。」

「ママ、いえ支部長いつも思うんだけどマスターが可哀想だよ。今までにも乗り気の時もあったんだよ。」

「リコ、それは聞き捨てならないことデスね。」

「今回はどうなの」支部長は聞く。

「気持ちとしては、傾いている所はあるけど、前のマリアちゃんのことを思い出して、躊躇している感じがする。」リコは答えた。

「?、マリアちゃんて誰デスカ?」

「詳しくはプライベートだから話せないけど、5年ほど前の管理者になっていたサポーターの女の子よ。事故で死んじゃったのよ。」と支部長は答えた。

「だからリコがセラピーしたんだよ。それからNPOに参加してボランティアスタッフしてるんだよ。」リコは笑顔でどや顔をして言った。

「ソレで、今回はどういう作戦でいくんですカ?」

「千尋も参加するつもり?」

「マスターさん、いつも忙しそうダシ、学校にいる娘もあのマスターさんが管理者ナラ幸せになれると千尋は思うヨ。」

「僕もそう思う。」

「私ははじめからそう思ってるよ。」

 レモンとリコが同意する。

「マスターはサポーターに好かれているんですね。」本田は言った。

「本田庵主も立花マスターに管理者になって貰おう作戦にのる気ある。」

「女マスターさんと、マリアというサポーターが幸せになるならばのります。」

「やったぁ!癒しの庵主さんも参加だぁ。これで鬼に金棒だね。ママ。」

「ママ、じゃなくて支部長ね。千尋はどう。」

「私みたいに幸セになれるナラ、私も参加するネ!!」

「決まり、今度こそ、マスターにサポーターをくっつけるぞ!」

リコの発言に皆は同意の声を上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ