5) 管理者候補の女マスター
特撮の宇宙ヒーローシリーズの歴代OPソングを聞きながら、NPOの支部に着く。女マスターは高倉親子に記入させた書類を持って事務所に入っていった。
「お帰りなさい。マスター。」
出迎えたのは、サポーターのレモンだった。ヨーロッパ育ちでレイモンドが本当の名前の男子サポーターだが、日本に馴染むため、支部長佐井村によってレモンと名付けられた。
「あれ、岡元さんは?」女マスターが訊いた。
「今日、当番だから来てますが、リコと一緒に買いものにいってます。」
「あー、よかった!」
「間に合ってよかったですね。」
「そうなのよ。サポーターの女の子の件の書類、確認してもらえるから助かったわ。」
「管理者の件、どうでしたか」
女マスターは今日会った高倉親子のことを話した。息子の誠は家に引き取りたいが母親の比奈子は引き取らず返金してほしい、との言い合いで話は進まなかったが、購入先が反社会勢力絡みだと分かると管理者の委任状に記入したことを話した。
「そこの地区、インテリじゃないほうが来て大変だったんだって」
「いいことなのか悪いことなのか分からないですね」
「話が進んだだけましかな。」マスターはコーヒーを淹れながら答えた。
がらん、と玄関の開く音がした。岡元とリコの声がする。
「ただいま!!」
「ただいま戻りました。」
「「お帰りなさい」」レモンと女マスターは言った。
「何買ってきたの?」女マスターが訊いた。
「インスタントコーヒーの買い置きと、岡元家の夕御飯。今日はカレーなんだって!!」
「マスターのカレーには負けますけどね」岡元は言った。
「マスター、マリアちゃんの件はどうだった」
リコの発言に女マスターはコーヒーをむせた。
「げほ・・・、私が管理者に正式になったわけじゃないから。委任状はもらってきた。」
むせた喉を落ち着かせつつ、女マスターはコーヒーカップを机に置いた。
「なんだ、今日こそ誰かの管理者になると思ったのに。」リコは言った。
「私は管理者にむいてないから。」
「むいていると思うけどね」
「岡元さん!!」
「適性はあるんでしょ。マスター。」
「適性はあるし、お金持ちだし、」と、リコ。
「いや、そんなに稼いでないって。」
「マスター、そこに座ろうか」リコがそういうと、レモンは椅子を用意した。
「わかった、座るわ。」
女マスターは観念し、椅子に座る。
「マスター、店だけじゃないでしょ稼ぎは。」
「管理栄養士で二つの個人病院の栄養管理と献立の決定のアルバイトを
してるけど」
「あれ、そんなこともしてたんですか。」と、レモン。
「ほかにもあるでしょ、カレーとか」
「お土産用のジビエのレトルトカレーの件?それは去年の話で発案料はもうもらっているし。」
「他にも貰っているでしょ。干し柿のパウンドケーキとか、」
「あれは農作物直売所で作っているから収入はそんなになかったよ。」
「太陽光発電とか、地熱発電とか。」
「太陽光は卸売り市場の屋根でやってて電力会社の支店から2年前にマージンは貰った。地熱はガス会社主導で温泉街と農家でやってる。私は紹介だけでお金はとってない。よく知ってるね、リコ。」
「喫茶店以外にも稼いでいるんだから、サポーターに仕事任せること考えないの、マスター。」
「う・・・。考えてはいるけど」
「はい。決定!!マリアちゃんの管理者になる。」
「いや、まだそこまで考えてはないのよ。」
「管理者候補1番目は相変わらず拒否権を発動中なのね。」
「「「支部長!!」」」
「ただいま。」
「支部長、静かに入ってくるから、わかりませんでしたよ」と、岡元は言った。
「まあ、リコの声が大きいから気づかなかったのよ、みんな。」
「リコ、そんなに声、大きくないよ。」リコはすねたように言った。
「で、どうだった、マスター。」
「管理者の委任状は取りました。息子は引き取りたい、親は拒否という状態でしたね。委任状は反対することなく取れました。」
「そうだったの、お金の件はどうだった。」
「母親は未練たっぷりでしたが、購入した店が□△組絡みの」
「駅前のゲーセンの上ね」
「そうです。」
「お金は戻らないわね。」
「そうです。」
「大学校は管理者が決まるまで、検査にならないから管理者になるのよね、マスター!!」
「話がまた戻っていますよ、支部長。」
「今回は修理や整備にお金がかかるみたいだから、お金持ちのあなたが管理者になれば、問題はすぐ解決。」
「今回はやけに粘りますね。」
「いつものことじゃない、マスター。」岡元が言った。
「支部長、忘れる所でした。警察から連絡がありました。今回のサポーターが違法店舗の中古品だから記憶媒体からデータをとってほしい、と言われたので、大学校に連絡入れました。4時くらいです。」レモンの報告に支部長はメモを見た。
「あそこの店だと何かあるかも、て警察も思うものね。あのサポーターに酷い記憶がなければ良いけど」
反社会組織がサポーターを実行犯にする犯罪があり、裏DVDなどの被害者になることがある。昨今はサポーターズ・サポーターなどのNPOの活躍で、犯罪は減少傾向ににあるが痛ましい事件は無くならない。
「何かあったら私が癒してあげる!!」リコは私に任せろと言わんばかりのどや顔で言った。
「便りにしてるから、リコ。」優しく微笑み支部長はリコの頭を撫でた。
岡元が委任状の確認をし、事務所を辞して30分が経った。
今は身元預かりのサポーターもいず、事務所は緊急連絡受付以外の日常業務はない。佐井村支部長とリコは経理の事務作業をし、女マスターとレモンは夜番に向けて仮眠をしていた。
事務所の電話がなる。
「NPO法人サポーターズ・サポートです。藤村先生、支部長ですか。少しお待ちください。」
「藤村先生!」支部長がリコに聞く。
「はい、場所変わるね。」
電話の近くに場所をかえ、支部長は電話にでる。
「はい、佐井村です。」
「佐井村支部長、藤村です。そっちの岡元さんから連絡があって、今日、学校に来たサポーターのHDDのデータを取っていたんだ。ついでに首もとのロットナンバーから正規の購入者がわかったんだ。」
「警察にうちから報告した方がいいの。」
「いや、警察に報告するのは俺からするよ。
うちからは管理者探しに役立たせてほしいから情報をミマリ君に持たせるのと、リカだったかな」
「リコね」
「リコちゃんか、セラピスト何だろう、彼女の力が必要なんだ」
「犯罪荷担それとも、被害者?」
「被害者だ。どうやら痛覚の情報を与えてこのサポーターを被写体にしてスクラップ動画を撮っていた様だ。」
スクラップ動画とは人間に歯向かえないサポーターに暴力をふるい、サポーターをスクラップにしていく動画のことである。ワーキングロイド時代から多種多様なスクラップ動画があり、マニアなどに需要があたため反社会勢力の資金源にもなっていた。
「データを取ってたら、五分刈りの学生を見るや怯え始め、ミマリ君が対応してくれたからどうにかなったんだがな、悲鳴や叫び声が凄かったんだ。落ち着いてから、訊いたんだが、痛めつけられていたことと、撮影機材があったことを話してくれたんだ。腕や足に打撲痕があったから、まさかとは思っていたんだ。」
「そのまさかがあったのね。」
「そうだ、致命的な欠点なのかは分からないがAIにセラピーが必要だという判断だ。もし、セラピーがないんならスクラップ決定だ。ついでに腕や足も経年劣化もあるし部品取り換えも必要だしな。整備は無料だが、部品は持ってもらわないとな。」
「デメリットが大きいはね。」
「メリットもある。介護と家事は万能にこなせる。これが売りの量産型だからな。後、コーヒーの淹れかたをよく知っていて喫茶店でバイトがすぐできそうなくらいだ。」
「管理者探しは飲食店関連でできそうな感じね。」
「だろう。まあ、働き具合は見てみないと分からないがな。」
「バックアップはして、初期化はするの?」
「マリアちゃんに初期化は必要かな。そう言えば、特撮大好き女マスターが今の管理者になっているよね。」
「何かのバグだってきいたけど。」
「そのまま、管理者になったらいいのにな!」
「相性があるから分からないわよ。」
「そうだな、詳しい情報はミマリ君に持たせるよ。」
「大変そうだけどこっちも頑張ってみるわ。」
「ああ、管理者探し頑張ってください。それでは、失礼します。」
「はい。」
電話を切るとリコがイタズラそうな顔つきだった。
「いよいよ、私の番ね。」
「私としては、立花弥生をセラピーしてほしいけど。」
「ママ、いつものかまかけじゃなかったの。」
「今まではかまかけ、今は管理者の本命よ。」
「ママ、私、マリアちゃんと仲良くするためにも頑張るわ。」
「ありがとう!それと、今はまだ仕事中なので支部長よ。」
「イエッサー、支部長。」
二人はほくそ笑みながら、今後の女マスターに対するセラピー対策を話し合っていた。
同時刻、くしゃみをして、起きあがる女マスターがいた。




