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10) マリアをお迎え

 木曜日の午後6時、バイトのリコは掃除を終わらし、女マスターは明日のカレーとパウンドケーキを作り終えた。

「今日はNPOに行くから送るわ、リコ」

「ヤッター!!マスター、ありがとう!!」

 二人は車に乗り込み、NPOの事務局に向かった。

 車の中でリコは「何かあったの、マスター」と訊いてきた。

「うん、マリアがね、オーブが見えると、大学校から報告があったの。」

「私といっしょなんだ。」

「そう、リコと同じ。だからといって幽霊バスターをするわけじゃないし、気にしないんだけどね。何かあるのかな?」

「レポートでも必要なのかな?」

「イギリスじゃあるまいし。」

「レモンならノリそう。レモンは前の管理者と一緒に幽霊バスターをしていたらしいから。」

「初耳。レモンが精霊やら見えるとは、聞いていたけど、さすがイギリス出身。」

「レモンはそういう話をできる人を探しているけど、マリアちゃんと心霊の話とかするのかな?」

「見えることより、心霊をマニアックに話すほうが嫌かな」

「レモンは180センチの長身に甘いハンサムなんだけど、マニアックすぎる趣味がね。」

「プログラミングを打つぶんには問題はないんだけどね。」

「そうだね。サポーターも難しいよね。」

「さて、ついたから先に車から出てね。」

 なんやかやと話しているうちに事務所に着いた。

 事務所はとある町の一軒家を借りて支部の事務所にしている。その為、2台置きの駐車場が狭く、助手席や後部座席では駐車場からでは降りられず、先に降りなければならない。

「リコ、おかえりなさい。マスターも来たわね。」

「ママ、ただいま!!」

 外は風が少し吹くだけでも寒く、3人は足早に事務所に入った。


「ジェイさん、久しぶり」

「oh!!マスターさん、久しぶりです。」

 ジェイとは本名テリー・ジェイキング、M社のアメリカ支社からの出向で今はロボット大学校の研修生である。本社の社命により、吉良ミマリと同じくNPOに有償ボランティアとしてきている。ちなみに自分の名前が好きではなく、ファミリーネームを略したニックネームを普段は利用している。「アニメみたいでクールだろ!」とは本人の言である。

「今日はリコとMr.ジェイが夜番なんだ。」

「ソゥなんです。今から仮眠をとるんです。」

「私もスリープしてきます。」

「お休み!!」

 リコは自室に、ジェイは客間に仮眠をとりにいった。

 残った女マスター、支部長、レモンはマリアが心霊的なオーブが可視できることを議題に話すことになった。

「私は気にしてないんだけどねぇ。」

「一応、日本では異物が見える扱いになるから視覚のパーツを替えるそうよ。」

「Oh my god ! 何てもったいない」

「わざわざ、許諾書まで用意しているんですね。こういうことがあるほうがビックリですよ。」

「僕も素晴らしい能力を無くすなんて驚愕です!!」

「レモン、落ち着きなさい。それで視覚のパーツ交換する?」

「レモンとか、リコとかサポーター達のお陰で心霊的なオーブの有用な扱い方を知ったので、私としてはそのままでいいです。」

「私も無料ではない部品の交換はどうかな、て思っていたからよかったわ。めんどくさいけど書面にサインと印鑑お願いね。」

「このためだけに来ましたからね。ここに印鑑でいいですか?」

「そう、そこ、ありがとう。土曜日にまた、持っていくから。」

「あ、そうそう、ジェイさんが来てたから出さなかったけど、リコが作ったパウンドケーキと今日で消費期限のビスコッティ、こっちは私製です。」

「だから、リコはテンションが低かったのね。あの子はすぐにでも私にパウンドケーキをわたしたかっでしょうに。」

「ジェイさんは甘い物があると全てを食べきってしまいますからね。」

「今のうちに頂くとしますか。」

「僕も味見したい!!」

「支部長、いいですか。」

「サポーターは味見も人間とは違う所作だから、気にしないわ。」

「いいってよ。ご飯はどうされます?」

「Mr.ジェイのフライドポテトのお裾分けで終わらしたわ。娘の料理は別腹よ。」

「紅茶を淹れますか。」

「ええ、お願い。」

「え?マスターは紅茶もいれることができるの?」

「食い道楽、飲み道楽でね、高校生の時に紅茶の資格取っている。意外?」

「アメージングでワンダフルと思った。」

「店では入れないけどね。」

 女マスターが台所にいっている間、レモンは手を洗ってリコ作のパウンドケーキに右の人差し指を触れさせた。

「支部長、このケーキ美味しいよ!」レモンはそう言いつつ、指をティッシュでふいた。

「それは楽しみね。」

 台所から紅茶を淹れて女マスターがリビングに来た。

「リコのケーキどうだった、レモン。」

「すっっっごく美味しかった!! 僕の回りで狐が喜んでいるよ!」

「それは商売で売ると儲かるってことね。」

 それを聞いて支部長が笑う。

「マスターが儲かるのはレモンのお告げのお陰ね。」

「えぇ、そうですよ!だから、マリアにレモンのようになってもらいたいですね。」

「僕って凄いの?」

「「凄いよ!!」」女マスターと支部長はそんなレモンを見て穏やかに言った。


 土曜日になった。

 マリアをお迎えするにあたって、書類を全て終わらせて、まだか、まだか、と女マスターはこの日を待った。NPOの立会人として今回は支部長と見学のジェイが一緒に来た。

「ようやくね。マスター。」

「えぇ、色々な気持ちが甦りましたが、この日の為のステップだと思うと良い経験でした。」

「色々あったんですネ。でも、安心してくださぁい。professor藤村はマリアに心血を注ぎマリアはとてもとてもす・ば・ら・しぃサポーターになりました!」

「え、えぇ。」支部長が引くと、捲し上げてジェイは言う。

「まず始めに、検査なのデスガ、触診だけでヒビがある箇所を探しだしテヒビの形状もあてて、いましたネ。ワタシ、あまりにso coolでamajingなのでprofessorを神とworship ですね。解体はミマリがしてましたが、その技、so perfect skill はskill of god !!!!」

「ジェイさん、you speak english now, do you understand? 」

「OH、ゴメンなさいねぇ!」

「Mr. ジェイ、落ち着ける。」

「professorのこと思い出すとHeartが熱くなります。何より凄かったのが本体HDDのクリーニングを利用したデータの消去ですネ。始めに必要なデータだけ他のHDDに保存して本体をミクロン単位で研磨クリーニングしてカラ、コンピューターで消去シ、データの上書きを繰り返しすることで、無駄なデータが無くなるのデスネ。professorはまるで晩餐会のように優雅な手つきで研磨してました。さすが日本人ですネ。」

「Mr.ジェイ、ストップ!!」

「what !!」

「今日はマスターいや、立花弥生さんがサポーターのマリアを引き取ることがメインね、それにもう、4時になるし、わかってくれる。」

「Oh、クールダウンしますネ。」

「では、行きますか。」苦笑をしつつ、女マスターは二人と共に校舎の中に入っていった。

 受付で藤村と連絡を取って貰い、談話室で会うこととなった。

 談話室に行くと、先に藤村とマリアがいてたので、女マスターはマリアに飛び付きたくなるのを我慢して、冷静を保った。

 ジェイも何か言いたそうだったが、支部長がマスクを渡して談話室では見学であるのだから黙っているように言いわたされた。やや不満そうだったが、NPOに戻ったらリコが作った干し柿のパウンドケーキが食べられる、との支部長との約束で黙ると確約したのだった。

「いよいよ、お迎えだね。」藤村が女マスターに言った。

 藤村の隣でちょこん、と座っているマリアが立ち「マスター、これからよろしくお願いします。」と、言った。

「こちらこそ、よろしくね!マリア。」女マスターは言った。マリアは黒のタートルネックの上にギンガムチェックのジャンバースカートを着て、黒いタイツを履いていた。これらの服はみな、女マスターが持ってきたものだ。可愛く着ていると、女マスターは心の中で喜んでいた。

「マリア、ここからはマスターと話すから黙っていてくれ。」

「はい。」

「マスター、今見ての通りやや動作にぎこちなさがあるんだ。」

「?そのように思いませんでしたが。」

「連続した動作が続いた場合によくわかるんだ。だから、AIと機体の連動になれるまで、NPO預かりになる。」

 心の中で「エ――――――――!!」と叫びながら「そうなんですか。」と残念そうな顔をした。

「細かな生活サイクルの設定はNPOでしましょうね、マスター。」支部長はいった。

「わかりました。」女マスターはそういいながらも心の中では大きなため息をついた。

 マリアが席に座り、ノートパソコンの画面をマスターに見せマリアの仕様の確認を始めた。

「パソコンを見てください。ヒビ等、破損があった両手足のパーツ交換、また、頭部は実習生が壊したので、互換性のあるパーツをいれました。申し訳ありません。その交換は無料です。」

「今、マリアが動いているので気にしてません。」

「マザーボードのバージョンアップは注文通りに仕上げています。記憶媒体ですが本体のHDDに学習機能と言動の連動動作機能、各種感覚機能をメインにし、2テラバイトの追加HDDに知識と動作のルーティン機能、学習による記憶が書き込まれるようになります。パソコンの画面のアプリケーションやソフトを確認してください。」

「POSとの連動ができるアプリはありますか?」

「表計算のソフト、これです、ここと連動してます。」

「ありがとうございます。」

「一応、飲食店での業務ができるのと、前からあった機能で介護業務ができる機体の装備に、なってます。確認を。」藤村はパソコンの画面を見せる。

 女マスターはパソコンを覗きこみ、確認をした。

「新規でソフトを入れたい場合はお手数ですが、販売店も兼ねているうちに来てください。ソフトの入れ方の失敗で学習していた内容がクラッシュすることがありますからね。」

「わかりました。ソフトは他社のものでもいいのですか?」

「ええ、いいですよ。故障等の修理やソフトを入れるだけなら2年間は無料です。」

「2年たったらどうなるんですか。」

「有料です。なのでM社でしてください。安くしますよ。」

「その時にはよろしくお願いします。」

「最後になりますが、防犯登録になりますね。」

「また、書類ですか?」

「はい、名前書くだけ何で身構えないでくたさいよ!」藤村の苦笑した。

「最期の最後にまた書名なんで、正直ゲンナリしましたよ。」小さくため息をついて、プリントアウトした書面にサインをした。

「以上で引き渡しできます。」

「思った以上に疲れましたね。」

「でも、はれてマリアちゃんの管理者になれるんだから良かったじゃない。」苦笑混じりの顔で支部長が言った。

「でも、まだ家に連れて帰れる状態ではないのが、切ないですよ!」

「マリアちゃんあなたの管理者は」

「マスターです!!」

「う、萌えそう。」

「そう言う状態がサポーターでの事故を招くのよ、慣れるまでNPO通いしなさいな。」

「はい。」女マスターは渋々承知した。

「後はお任せできそうですね。すいません、この後、会議があるものでして、自分はこれで失礼します。」

藤村は書類を片付けた。

「あ、それとお帰りの際は受け付けにこの部屋を使ったのを言ってくださいね。マリア、元気でな。」藤村は急いで部屋を出ていった。

「相変わらず忙しそうですね。」女マスターは藤村が出ていったドアを見て言った。

「まあ、こっちも用事が終わったし、事務所に行きますか。」

「リコの作ったケーキが楽しみデース。」

「あのう、私もいくんですよね?」

「そうだよ、マリア。戸惑ってる?」

「はい。始めてなので緊張しています。」

「私も緊張しているよ。」

「?本当なのですか?」

「管理者とサポーターに今日からなるわけ出し、緊張するのは、当たり前。急がずゆっくりしていけば良いからね。」

「はい。わかりました。マスターは優しいので、私は嬉しいです。」

満面の笑顔でマリアは応えた。

 今日まで色々あったことを感慨深く感じる女マスターだったが、今日からまた、スタートだと思い、皆でNPOに向かうのであった。

昨日はエラーが出て投稿できなかったので、今日になりました。

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