表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/6

二度目

数日後。

指定された弁護士事務所の扉を開ける。

事故以来、男と直接顔を合わせるのは初めてだった。

部屋へ入った瞬間。

男の視線が、女のこめかみで止まった。

ほんの一瞬。

だが女は見逃さない。

――思っていたより、大きかったでしょう。

電話では「少し」としか言っていない。

化粧でだいぶ隠れるとも伝えた。

けれど実際には、隠し切れない傷が残っている。

男は何も言わない。

女も何も言わない。

弁護士を交え、話は淡々と進んだ。

女は無理な要求をしなかった。

必要な補償を受け、書類を確認する。

やがて示談は成立した。

「それでは、これで本件については終了となります」

弁護士が告げる。

「ありがとうございました」

女は静かに頭を下げた。

これで終わり。

本当に、そのつもりだった。

男が誰なのか知っていることも言わない。

自分から食事に誘うこともしない。

連絡を続けたいとも言わない。

ここで「では」と別れれば、女もそのまま帰る。

それで構わない。

席を立とうとした。

「あの」

男が呼び止める。

女は振り返った。

「先日は、赤坂でのお食事を楽しみにされていたと聞いていました」

男は少し言葉を選ぶ。

「私のせいで行けなくなってしまいましたし……もしこのあとお時間があるようでしたら、お食事でもいかがですか」

女は一瞬だけ驚いた顔をする。

それから微笑む。

「よろしいんですか?」

胸の内では、別の言葉が浮かんでいた。

二度目の賭けにも、勝った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ