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女神のミッションが理不尽すぎる。  作者: 心理的に学生
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第7話 ストーキングしたら、重大なことを知りました。

俺は、先ほどの屋台からそう遠くない大通りの脇、建物と建物の隙間に身を委ねて待っていた。


太陽はもう頭上あたりまで昇っている。


屋台の店主から聞いた話だと、兵長は毎日この時間にこの通りを馬で通るらしい。


「本当に来るんだろうな……」

(大丈夫だよ。あの店主さん、嘘ついてるようには見えなかったし。)


それはそうだ。脅したんだから。嘘を言うはずがない。


俺は壁にもたれたまま、聞き出した情報をもう一度整理することにした。


「兵長、毎日この通りを通るんだったか?」

(うん。ほぼ毎日見かけるって。)

「で、この時間なら、まだ訓練場にいるはずだよな。」

(いや?

私が思うに、朝はいつも剣の練習してるみたいだから、そろそろこっちに向かってくるんじゃない?)

「たしかに。」


俺はこれからしようと思っている事に少し緊張しながら、言った。


「住んでる場所は……城の西側、士官街って言ってたよな。」

(そう。これは噂にすぎないって言ってたけど。)


そう言うと、ミナは上の方へ飛んでいった。


(うーん…あの、お屋敷が並んでるあたりだと思う。)


飛べるの便利だな。羨ましいぜ、ちょっと。


俺はそう思いながら、降りてきたミナを見て言った。


「見た目は、黒いマントに、銀の肩章。」

(そうだったね。まあ、それさえ覚えてれば、見間違えることはないと思うよ。)


頭の中で情報を並べ終えたところで――


蹄の音が、遠くから聞こえてきた。


「……来たな。」

(そうみたいだね。頑張って。)

「ああ。」


さっき屋台の店主から情報を聞いたあと、ミナと計画を立てた。今日はとりあえず、兵長を尾行して、いろいろ調べるつもりだ。


ある程度調べた上で、行動を起こそうということになった。


通りの向こうから、馬が何匹かゆっくりと近づいてくる。


乗っているのは、黒いマントを纏った男。ガタイがいい。結構強そうに見える。


肩には、銀の肩章がついていた。間違いない。


「あれが、兵長。」

(うん。)


ところが、面倒なことに、兵長の横には部下と見られる者が数名いた。


「くそ…何で護衛みたいなのがいるんだよ?」


尾行しづらいだろ…。


(面倒だね…。もう少しあの人たちが離れてから動こう。思ったより人数がいるから、離れたほうが安全だと思う。)

「そうだな。」


パカッ、パカッ、パカッ。


目の前を集団が通り過ぎていく。


俺は見てるのが気が付かれないように、路地側を向いた。


すると、路地裏の奥の方にいた少女と目が合ってしまったので、とりあえずウィンクをしておいた。


少女が困惑した様子を見せた。


ミナはそんな俺を見て、言った。


(悠馬、何してるの…?集中しなよ…)

「へへ。」


昔から小さい子には優しくしてしまう性分なんだ。しょうがないんだよ、これは。


俺は、音が少し遠ざかったのを確認すると、隙間から半身を出し、距離を測りながら、馬の歩く速さに合わせて歩き出した。


さっき脅した店主から買った、りんごみたいな果物の串をいじってるふりをしながらバレないようにつけて行く。


金貨を払ったからか知らないけど、おまけみたいな感じで3本多く渡してくれた。


結構美味しかったので、もう既に4本食べた。これが最後の1本だった。


串をつまんでくるくると回す。


ミナがなぜか、笑いながら言った。


(ねえ、悠馬、思ったんだけど…それ演技?)

「え?ああ。」


え?何かおかしい?


ミナがニヤニヤしたまま聞いてきた。


(つけてるのがバレないように…?)

「そうだけど、何かおかしいか?」

(いやっ……ふふふっ。)


ミナは否定しながらも明らかに笑っているようだった。


ミナは霊体のようなものだから、笑っても声は響かない。でも、笑い声をこらえるようにクスクスと肩を揺らした。


いや、確かに演技でこれを弄りながら歩くっていうのはなんかちょっとおかしい気もする。でもそんな笑うほどおかしいか…?


ええいっ!


「笑うなよっ!」


俺は小声で言った。


――と思ったのに、兵長の部下の一人がちらっとこっちを見たので、慌てて近くの屋台に寄っていった。


「あら、お兄ちゃん! 買っていく?!」

「え?あ、はい?」


そのままその屋台の店主に流されて、肉の串焼きを買ってしまった。


(はははっ!ふふ、あはははっ!)


ミナはついに声を上げて笑い出した。


俺はなんだか悔しくて顔を赤くした。


それでも幸い、兵長を見逃すことはなかった。


◇◇


町の中心部から少し離れた。


「ゼファード様、それでは。」

「ああ、助かるよ。では。」


(悠馬っ!)

「うわっ!」


兵長が率いていた四人が、いきなり兵長に別れを告げると、踵を返し、こちらに向かってきた。


危ねえっ!


俺は慌てて道の脇に入る。


兵長の部下が目の前を通り過ぎた。


部下たちの話し声が聞こえてきた。


一番若そうな男が馬を撫でながら言った。


「ゼファード様、毎日毎日よくも飽きずに行かれますね。」


(悠馬、あの兵長、ゼファードっていうらしいよ!)

(ああ!)


この兵長の名前はゼファードっていうのか。


俺がそう思っていると、最初に話し始めた男の隣にいた男が喋った。


「本当だよな、死んだ戦友に感謝するのは俺でも理解できるが、あそこまで出来るのは、おそらくゼファード様だけだろうな。」


死んだ戦友に感謝?…どういうことだ?


俺は小声で頭の上にいるミナに話しかけた。


(なあミナ、どういうことだと思う?)

(んー…たぶん、お墓にでも行くんじゃない?)

(ってことは…あっ!)


ミナと俺は、思わず顔を見合わせた。


つまり、毎日通ってるってことらしいから、この墓参りの時間が、兵長が一人になる隙だってことだ!


ミナが言った。


(隙ができたね!)

(ああ!)


ゼファードの部下とみられる女が、話す。


「まあ、きっとその真面目で誠実な性格が、あの方を司令官として押し上げたんでしょうね。」

「ははは、そうだな。」


そんな感じのことを言いながら、部下たちは俺たちの前を通り過ぎていった。


「よしミナ、ゼファードについていくぞ!」

(うん。)


俺たちは尾行を再開した。



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