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女神のミッションが理不尽すぎる。  作者: 心理的に学生
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第5話 武器が復活した!/やっと一階層だ!

ハルバードは、歩きながら魔法の練習していた時だった。


ミナが応援する。


(いけっ、そう。そんな感じ、手に魔力を集めるイメージだよ!)

「おりゃっ!」


手の上の空間が歪んだ。


「おお!ここだけ歪ませられたんだけど!」

(おっ、はじめのときと一緒だね。)


よかった。ちゃんと進歩してるのか。


俺は褒められると調子に乗ってしまう癖がある。


今回もつい調子に乗ってしまった。俺はこう思った。


俺ならもっとできるはず。まだ魔力にも余裕があるしね。


「空間全体にたくさん魔力を使ってみたらどうなるのかな?」

(あっ、まってそれは!)


パキパキパキッ


(悠馬下がって!危ない!)

「うわあっ!」


パリィン。


その瞬間、ガラスが砕けたような音ともに俺の目の前に虚空が広がった。空気の流れを感じた。


「空間が…裂けた?」

(そう。悠馬の魔力は空間に穴を開ける事が出来ちゃうの)

「そうだったのか…」


俺は虚空を覗き込む。中に光が吸収される。亀裂の周りの空気がそのなかに吸い込まれていく。俺が位置を変えると、亀裂のある位置が万華鏡のように見え方が変わる。ちょっときれいだ。


ていうかこれ、あれだよな。触手ちゃんがさっきの魔法で触手を出してたやつ。


「なあ触手ちゃん、これさっき触手ちゃんが作ったやつか? これ中に入ったらどうなるかわかる?」

「この中はぁ…反対側とぉ、繋がってるんだよぉ。」

「反対側?」

「同じ高さにぃ、もう一個これ作るとぉ、そっちと繋がるんだよぉ。」

「へー。じゃあ、反対側を作らなかったらどうなるんだ?」

「その中に落ちたらぁ、帰ってこれなくなるよぉ。」


危ねえっ…!

それを聞いて、思わず亀裂から後ずさる。


ミナが空中の何かを見ながら解説してくれた。


(えーっと、よじげん?、とつながっているから、なかにいっぱい物が入れられるって書いてある。)


よくわからないけど、つまり、ドラ◯もんの四次元ポケットってことだろ?!


「触手ちゃん、この中に何か入ってる?」

「うーん、ここにはぁ、何も入ってないけどぉ…。《《こっち》》にならぁ、主の武器がぁ、入ってるよぉ?」


俺の武器?!

思わずドキッとする。


「頼む、触手ちゃん。俺の武器を出してくれ!」


触手ちゃんは別の亀裂を開けると、そこに腕を入れた。


俺の武器って、前に俺が入れたってことか?すご、俺どんな武器使ってたんだろう?!


まず、武器の刃の先端だけが浮き出てきた。

縦に長くて太い刃だった。


これは…斧?


そして、亀裂の歪みに沿ってグニャリとねじれながら、あり得ない角度で巨大な金属の塊の全体像が浮かび上がった。


「これは…ハルバード?!」


歴史の教科書で見たことがある。


(そう。これが悠馬の武器。ハルバード。私を育ててくれた人が作ってくれたんだよ。)

「そ、そうなのか…。」


そう言いながら武器を見る。

細かい模様が緻密に刻まれている。刃の部分は傷がつきまくって光を反射しなくなっていた。でも、刃の先端は鋭く光っていた。


かっこいい……。


試しに振ってみる。

すごく体に馴染んだ。まるで、長いこと使ってきたみたいに。

試しに横に払ってみる。空気を切る音がした。


ミナがアドバイスした。


(前はその突起で敵の防御とか剥がしてたよ。)

「…これか?」

(そう。)


敵を想像してみる。

盾を持ってる。盾の端に突起を引っ掛ける。

そしたら…こんなふうに、回せばいいのか?!

回した勢いでそのまま敵を倒した。


今の動き結構かっこいいな?


「どうだ?」

(おー、動きはあんま変わってないね!)

「褒めてるのか?」

(うん、ずっと良いまま。さすが、私のおじさんだ。悠馬にぴったりの武器だね。)


おじさん?ってだれだろう。記憶を失う前に、俺の武器を選んでくれたってことなのか?


ミナは少し得意そうにする。


◇◇


しばらくして。


ズドーン!


『タス…ケ…テ……』


ボスが叫んだが、やがて淡い光とともに消滅していく。


「この敵ぃ…全然おもしろくないよぉ。」

「でも、いいじゃん、すぐ倒せた!」


俺たちが戦っていたボスは、少女の見た目をしたスライムだった。


(これアビス・スライムだよ?!普通は王都の聖騎士が全力で戦って勝てるかどうかなのに……本当にすごいね、二人とも。)


俺はスライムが朽ち果てたあとに地面に残った黒い物体を見る。


そんな強かったのか?こいつ。


「いやー、でもかなり弱かったし。」


思い返す。


2階層を出る階段を登って、ボス部屋に入ったとき、部屋の真ん中にスライムがいた。


触手ちゃんが真っ先に攻撃しようとした。

でも、触手ちゃんの腕が弾かれた。


「なっ…!」


触手ちゃんの攻撃が効かない…だと?!こんなの初めてだ!


俺が驚いたその時。


(悠馬、離れて!)


見ると、さっきまでのスライムが膨れ上がってきた。俺は頬に流れを感じた。


……これは…スライムが魔力を吸収している?!


「なんだよ、これ……!」


人間より小さかった体が、瞬く間に数倍になった。


表面が脈動するたびに、この階層フロア全体の魔力が、根こそぎ吸われているのか?!


これ以上吸われるとまずい!


「触手ちゃん、もう一回——」

「うん!」


触手ちゃんは何本も腕を出し、一気にスライムを攻撃した。


他は弾かれたが、一本が、膨れ上がったスライムの本体に突き刺さる。


「よし――」


けど、貫通しなかった。


表面で、受け止められて、そのまま、まるで沼に沈むみたいに、触手の先端が、スライムの中へ、少しだけめり込んで止まる。


「…またかよっ!」


これまで、どの階層のボスもどの階層の敵も一撃で貫いてきた触手が、止めらるなんて!それも二度も!!


これが、最難関ダンジョン!

入り口に近づけば近づくほど弱くなるなんて、そんな甘えはないのか!


スライムの表面に、ぱちり、と大きな目が、開いた。


スライムの表面が少女の顔を形成した。


でも、瞳の部分だけが、真っ黒に塗りつぶされている。


「気持ち悪っ!」

『——汚れろ。』


少女の声が、頭の中に直接流れ込んできた。


——これは、精神攻撃!


意識を侵食して、戦意を奪うつもりだ。

さっきの巨大化も、これを撃ち込むための準備みたいなものってことか!


(悠馬、気をつけて!精神攻撃が来る——)


ミナが、叫んだ。


くそっ!


「耐えてやるよ!!」


っ――


俺は、待った。


…あれ?

なぜ何も起こらない?


正確には、何かが《《触れてきた感覚》》はあった。ぬるり、と何かが意識の表面を撫でる感触。


でも、それだけだった。何も侵食されなかった。


「……あれ?」

『……?』


スライムの方が、戸惑っているような声を上げた。


「効いてないみたいだけど。」

『……どうして……?』


知らねえよ、と言いたくなったけど、代わりにこう言った。


「悪いけど、その手は通じないみたいだ。」


——後で思い出したことだけど、俺の魂はもともと汚染されていた。今更、精神を「汚されて」も、変わるものがなかった。


スライムはそんなことを知る由もなく、焦ったように、もう一度、触手を取り込んだ部分から圧力を強めてきた。


『汚れろっ!!』


一瞬ぬるっとした。


「触手ちゃん、平気か?」

「うーんと……ちょっと気持ち悪いけど、大丈夫ぅ……。」


よかった。それなら、こっちはこっちで、やることをやるだけだ。


「《空間魔法》!」


スライムの真横に瞬間移動。横に亀裂を作り、ハルバードを構える。


「悪いな。」


刃がスライムの上でかすかに光を放った。


ぐぢゅり


という不快な感覚とともに、刃がスライムの顔の部分、つまり表面を裂く。中から、どくどくと脈動している物体が見えた。


(悠馬!それが核だよ!!)

「ぎ、ぎぃっ……!」


——よし。あとは、これを潰すだけ。


「触手ち――」


いや、触手ちゃんなら一瞬で終わってしまう。


けど、あることを試してみたいと思ってた。


「待って、触手ちゃん、まだ倒すなよ。」

「んー。」


5階にあった研究所らしき場所での一件以来、ぽつぽつと魔術に関する記憶が戻ってきている。


その記憶の中に、これもあった。

理屈はまだ思い出せないけど「撃てる」気がする。


「ちょっと試してみるか。」


ハルバードを亀裂に戻して、二本の指を核に向ける。


「《火炎弾》。」


ボッ、という音とともに、指先から発射された火球が、核に直撃した。


『ぎゃああああっ!?』


核が白い煙を上げて一瞬で炭化した。


『あ……ぁ……タス…ケ…テ……』


スライムの体が核を失って一気に崩れる。


「……。」


俺は、しばらく、自分の手のひらを見ていた。


(……悠馬、今の何?)


ミナが、少し呆然とした声で聞いてきた。


「炎魔法だよ。さっき思い出してきてたから。」

(ああ、そういうことね。よかったじゃん!)


だが、しばらくしてミナが少し不思議そうな顔をした。


(それにしても……アビス・スライムの核、あんな簡単にどうこうできるもんだったっけ……?)

「気のせいじゃないか?」

(そう……。)



――時を戻そう。


◇◇


スライムが残した物体を食った後、俺たちは扉を開けた。


ズゴゴゴコ。


(ここの階層で最後だよ!)

「やったー!」

「やったぁー!」


俺たちはついに、ボス部屋の扉を開けて、地上に最も近い、一階層にやってきた。


いやいや、ダンジョンなのに最初にその階層のボスと戦うってどういうことだよ。


一人でツッコミを入れる。


それにしても。


「長かった…。」


本当に長かった。


「ミナ、残り時間は?」

(あと、9日と数時間だよ。)


よし。つまり1日と数時間ぐらいでここにこれたのか。体感1週間なのに…。

嬉しい誤算だ。


10日以内に戦争を起こすのは、絶対無理な事だって思ってたけど、何だかできる気がしてきた。


(ここを出たら、なんとかして帝国側に入るよ。)

「…帝国側?」


帝国? 俺何も知らないんだけど。


「ごめんなミナ、俺何もわからないから教えてくれ。」

(あ、そうだったね。悠馬、記憶ないんだったね…。)

「頼む。」


(そうだなー…)

ミナは話し始めた。



―――――――――――――――――――


[おまけ]


『テストに出るかもよ』


◇◇


(…そういえば、何でスライムの核はあんな弱い火の魔法で壊れたのかな?)


確かに…何でだろう?


そういえば、


スライムの核に火を放ったら、蒸気が出て黒い煤みたいなものになった。

つまり、炭化したってことか?!


ということは…


「スライムの核は有機結晶ゆうきけっしょうでできてるみたいだ!」


(ゆうきけしょう…?どういうこと?)

「僕、混乱してるよぉ」


あ、しまった。


「いやー、何でもない。気にしないでくれ。」


……この世界に来る直前に勉強してた内容だから、つい言っちゃったけど、もう意味ないんだよな(泣)


本当だったら、明日からテストだったはずなのに…。俺、なんで最難関ダンジョンにいるんだろ…。


「あれぇ、主また泣いてるのぉ?」

(大丈夫…悠馬?)


「泣いてねえよっ!!」

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