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女神のミッションが理不尽すぎる。  作者: 心理的に学生
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10/11

ミナに変質者!って呼ばれたんだけど :(

「そうだな…。お前にだけ、教えよう。


先も言った通り、この墓は六年前の、永劫の深淵(エターナル・アビス)の氾濫災害の時の被害者を、弔うために作られた。


だから、もしかしたら…にすぎないが、君の父親も、ここで眠っていらっしゃるかもしれない。」

「ほ、本当ですか?!」


一応驚いておく。


ゼファードは少し微笑んで言った。


「ああ、よかったな。」


「…ところで――」


ゼファードは急に不思議そうな顔になって聞く。


「なぜ、隠れて私を見ていたんだ?」


えっ?こいつ…


(ゼファード…まだあのこと気にしてたのかよ?!)

(これ早く言わないと、騙した意味なくなると思うよ!?)

(だよな…!)

(…うーん…ここはさ、もう、ただ単に気まずかった〜、って言ったら…?

たぶん今のゼファードなら信じてくれると思う…。)


うん。確かに、今の(感傷的になってる)ゼファードなら、割となんでも信じてくれそうにみえる。


ゼファードは、それとこれとは別だ、と言うように俺を見つめていた。

俺は口ごもっているふうにして、言った。


「その…恥ずかしながら…、墓地に立ち入ろうとしたところ、ゼファード様が、恋人らしき方との思い出を振り返っているようでしたので…」


ここで、一瞬の沈黙。


これを入れると信憑性が増すんだ。


俺はゼファードから視線を逸らして、続けた。


「なので、少々遠慮してしまったんです…。その…2人を邪魔してはいけないと思って…。」


ゼファードがハッとした様子を見せた。


俺は勝ちを確信して、右手でガッツポーズを作る。


俺が思った通り、ゼファードは、顔に手を当てて笑った。


「はっはっはっ!

なるほど、そうだったのか…。私に遠慮してくれたのか。それは、失礼したな。」

「いえ、お気になさらず!」

「ああ。

そうなんだ。皆には戦友の墓だ、とだけ言っているが、実は、戦友かつ恋人だった女の墓なんだ。ほかの人には言わないでくれよ。」

「わかりました!」

「じゃあ、私は仕事があるから行く。君はお父さんを探すといい。」


それだけ言うと、ゼファードは、馬の方へ向かって言った。


「はい、ありがとうございます!」


俺は元気な声で言うと、再びミナと顔を見合わせた。


(ミナ!)

(うん!)

(完全に乗り切った!)

(ナイスだよ!悠馬!)


◇◇


残り時間、8日と数時間。


俺たちは、相変わらずゼファードを尾行していた。

行動を起こすのは、明日からだ。

今日はとりあえず情報収集。

そう二人で決めていた。


今度は、集中して尾行している。同じ失敗は繰り返さない。


街の中央の大きな建物の前に来た。


俺たちは、建物が見える範囲内の少し薄暗い路地に入った。


建物を見て思った。


…ここは、役所か?


ゼファードは、その建物の前の小屋のような場所に、馬を託すと、建物に向かって歩き始めた。


(悠馬、ゼファードが!)

「ああ…ここみたいだ。」


さっき、これから仕事だと言っていたところだよな。


つまり、ここがゼファードの仕事場。


ということは、ミナが言ってた、「防壁に攻撃を受けた!」って帝都に送れる《《あれ》》があるかもしれないということだ。


「入るぞ、ミナ。」

(うん。)


俺は正面玄関らしき場所に歩いていこうとした。


その途端、ミナが驚いたように引き止めてきた。


(いやいや!悠馬?!待ってよ!)

「え?」


ミナは、俺を引き止めると、行こうとしているところを指さした。


「どうした?」

(いや、見てよあれ!)

「ん?」


俺はミナが指差しているとこを見る。


何人か槍を持った兵士のような人が、ウロウロしているのを見つけた。


うーん?…あれは…兵士?

それも、結構たくさんいるな…。


「人がいるな。」

(そう、だからだよ!普通に正面からはいれるわけないじゃん!)

「あっ、確かに!」


言われてみればそうだ!

あの人たちは、おそらく警備員だ。


うわあー、危なかった…。


俺が「確かに!」という気の抜けた返事をしたので、ミナが悲しそうな顔をして言った。


(確かに!じゃなくて……。

悠馬尾行してるんだよ〜?ホントに分かってる…?)


うっ、うるさいな〜、言われなくてもわかってるよ!


「ああ。」


――でも、正面から入れないならどうしたらいいんだ?


「前から入れないとなるとな…どうしたらいいんだ?」


俺が悩んでいるような仕草をすると、ミナが嬉しそうに言った。


(ふふん…ミナちゃんの知恵袋が必要かい?)


ミナは、そう言うと自分の頭をトントンと叩いた。


え?何だそれ?


ミナが訳わからないこと言ってきたので、俺は笑って言った。


「知恵袋って言えるほど知恵が詰まってるとは思えないけど?」


俺のツッコミに驚いたのか、ミナは目をびっくりしたように目を見開いた。


(なっ!えっ?なんでよっ?!私の方がこの世界にいた時間も長いし、それに私の方が悠馬より全然、悠馬のことについても知ってるんだから!)


急に饒舌になって言う。


俺は、なんで俺より俺のこと知ってるっておかしいだろ!って思ったけど、確かにそうだってことに気づいた。

自分、記憶がなくなってるらしいからね。


そこで、俺はこう言った。


「冗談冗談。

ぜひ教えてください!ミナ先生!」


頭を45度ぐらい下げる。


(うんうん。それでいいの!)


ミナは満足したように頷いた。


「何をすれば?」

(そうね、私…思うんだけど、《変質者》がいいと思う。)


え?変質者がいい?

なるほど!、ミナって変質者が好きだったのか?!

変な奴だな!!


…いや、ミナがそんな変な奴であるはずない!、

きっと遠回しに俺のことを変質者って言ってるんだ!


さっき、知識が詰まってない、って否定したからちょっと怒ってんのか?!


俺は苦笑いして聞いた。


「なあ、俺って変質者?」

(え?!ちがうよ?!いやでも、あれ?…違うか?)


いや、否定しきれないのかい。

でも、さっきのはそういう意味で言ったわけじゃないってことはわかった。よかった…。


(変質者っていうのは、悠馬のスキルってこと。)

「俺のスキル?」

(そう。《変質者》ってスキルなんだけど。)


スキルが変質者?!


何だその変なスキルは?!

名前が終わってるんだけど…!?


俺はそう驚いたが、変身できる系のスキルかなと思ったので、気を取り直して言った。


「ええ、?まあ、いいや。どうやって使うんだ?」

(…最後に悠馬が使ってたのだいぶ前だから…あんま覚えてないけど、たぶん、変質者!!って叫べばよかったと思うよ?)

「へっ?!」


…うわ、恥ずかしいー…。でも、やるしかないか…。


ということで、俺は息を吸って、叫んだ。


「変質者!」


◇◇


「おい、そこにいるのは誰だ?!」


庁舎の警備員が近づいてくる。


この警備員は、さっき確かに「変質者!」という悲鳴が聞こえたような気がした。


警備員が薄暗い路地を覗き込む。


その途端、無数の触手が彼を捕らえた。そのまま路地の奥へ引きずり込んでいく。


「大丈夫か?!うわっぁぁぁっ!!!―――」


「…。」



◇◇


「変質者!」


俺が叫んだその瞬間、空中に大量の文字が一気に出現した。


――――――――――――――

[SYSTEM_NOTICE]

NOW SCANNING THE TARGET FOR TRANSFORMATION...


Please wait a moment.


――SCAN COMPLETE.


READY FOR TRANSFORMATION.

…50%…100%


言語を変更します。[複ng袗i§h ➔ 譌≈譛ャ隱樣]…完了。


近くに変質対象を発見しました。

―――――――――――――――


急に出てきた大量の情報に、頭がついていかない。


 な、なんだこれ…!


急に後ろに飛び退いた俺を見て、ミナが心配そうに言った。


(大丈夫?)

「急に文字が出てきたんだよ!!」


俺が答えた瞬間――体から、黒い何かが飛び出した。


 っ、これは……!


俺は最初、それが触手ちゃんだと思った。


 え?…触手ちゃんじゃん。

 なんで急に出てきたんだ?《捕食》発動してないんだけど?


「おお、触手ちゃん?!なんで急に…?」


だが、ミナが言った。


(ちがう悠馬、これは触手ちゃんじゃないよ!)


 は?


「じゃあ何だよこれ?」

(吸収しようとしてるんだよ。)

「吸収?何を?」

(あの人!)


ミナはそう言いながら指を差した。


俺は、その方向を見る。


すると、先ほど庁舎の前で警備してた人の一人が俺たちのいる路地に近づこうとしていたのだった。


(さっき悠馬が変質者!って叫んだのが聞こえたんだね。)


 なるほど、そういうことか。


 ――って!まさか、この腕、あの人を食う気なのか?!

やめろ!!


「まて!あの人は食っちゃだめだ!」


だが、俺の制止は効かなかった。

黒い触手はその警備員にものすごい速度で向かっていった。


 待て!!


それは、警備員を掴むと、俺の前に引き寄せようとした。


警備員の男が叫ぶ。


「うわあああ!!!」

「だめだ!!」


俺が止めようとしたその瞬間、視界を黒い膜が覆った。視界が完全に闇に染まる。


足元から液体がこみ上げてくる。


「なにっ?!」


 な、なん?!

 助けて!!


「おぼぼぼぼ!」


体が完全につかってしまった。


 息がっ、できない!何だっ!これはっ!!


その瞬間。


 体が…焼ける!!


全身の神経が本来の流れから逆流し始めたような不快感とともに、液体が俺の皮膚を焼いているような感覚が俺を襲った。


 熱い!!助けてっ!!


「ぐあっ…あがっ…ゔうぁああ!!」


 死ぬ!!

 痛い!

 苦しい!!


その時、ミナの声がした。


(大丈夫、悠馬!死なないから!!変身しようとしてるだけ!!頑張って!耐えて!!)

「でもっ…!」


俺は必死に耐えようとした。だが、全身を走るその感覚に悶える。


 全身が…!焼ける!!


「ぐわあああっ!」


俺が叫ぶのと同時に、頭の中に声が響いた。


【まもなく同期が完了します。】


次の瞬間、熱が一気に引いた。続いて文字が浮かんだ。


【同期が完了しました。】


体を走っていた不快感がやみ、俺を覆っていた膜のようなものも、薄れていく。


俺は全身が黒い液体に濡れたまま、路地の空気に放り出された。


地面に腕をついてうずくまる。


「はあっ、はあっ、はあ…」


しばらく、そのまま動けなかった。呼吸だけがやけに大きく耳に響く。


(大丈夫?…おお、悠馬、完璧だね!)


ミナの声で、我に返る。


俺はゆっくりと体を起こした。

そして、手を見る。普段より手が大きくなってた。それに、反対の手に奇妙な感覚があった。何かと思って見てみると、槍を持っていた。


「え?」


 これは…変身が終わったってことなのか?


「俺、変身…できた?」

(うん、完璧!)

「どうなってる?」

(さっきの警備員と格好まで完璧に同じだ。これでバレないよ!)


 変身成功ってことだな。


「それは良かった。」


俺は安堵のため息をついた。


 あれ?


だがその時、やってしまった事の重大さに気がついた。


 俺、一般人を―――


「ミナ、あの警備員はどうなったかわかるか?!」

(え?さっき食べたでしょ?死んだはずだよ。まあ…でも、運が良ければ生きてるかもね?)

「なっ!」


 運が良ければ生きてるだって?

 死んでるってことかよ!!


「…おれ…普通の人殺しちゃったよ…。」


 殺しは…できるだけしたくなかったのに。


だが、ミナは言った。


(なんでそんな事言うの?!)

「何がだ?」

(殺しだよ!)

「はい?」

(世界が滅んじゃうんだからそんなこと気にする必要ないって!)

「なっ?」


俺は、口を開いたまま目を大きくした。


 コイツ、何を言ってるんだ?!

 殺しはいけないことだろ?!


ミナを睨んだ。

だがミナは気にする様子など、一切なかった。


(前の悠馬だったら―――)

「なに?」


その先の言葉が気になったが、聞き返す間もなく、怒鳴り声がした。


「おい!お前、そこで何をしてるんだ!!」


俺は焦ってミナに言った。


(まずい!ほかの警備員が来ちゃった!)


一旦、頭を切り替える。ミナの言葉のことは、あとで考えよう。


見ると、俺(さっきの俺が食った警備員)と同じ格好をした中年の男が路地の入り口で、槍を構えて立っていた。


 しまった!前にゼファードのところに潜入した時も、変身直後にこうやって見つかったんだった。俺、何にも学んでなくて(笑)な件について。


 ――ってとぼけてる暇ないんだった!


警備兵らしき中年の男が、槍を俺の方に向けた。


「姿を見せろ!貴様!」

(やばいよ!どうしよう、ミナ!)


しかし、ミナは笑って言った。


(落ち着けって、悠馬!全然大丈夫だって。

だって今、悠馬完全にただのあそこにいた警備員の見た目してんじゃん!)

(あっ)


 そうだったわ。体に馴染みすぎて忘れてた。


ミナが空中で横に一回転しながらいった。


(じゃあ、演技タイムだね!!)

(ああ、よし!)


警備兵が自分たちの方に歩いてきた。


「はやく出てこい!いるのはわかってるぞ!」


 演技タイム!!


 っと、まずは性格を決めよう。


一瞬考えたけど、変身の衝撃が残ってるのか、思ったよりも頭が回らなかったので、ミナに任せることにした。


(ミナ、どんな感じのキャラで行ったらいい?)

(うーん、見た目から考えると

…やる気がありそうな雰囲気の、明るい青年、みたいな感じでお願い!!)

(オーケー、任せろ!)


「あ!、すみません!」

「ん?なんだ?」

「僕ですよ、僕!」

「お?…ああ!ハンス君!」


 ハンス。俺の今の体は、そういう名前らしい。とりあえず調子を合わせよう。


「あれ…?ハンス君、なんでここにいるんだい?君、確か勤務時間中じゃないか?」

「この奥で、変質者!っていう叫び声が聞こえたので、見に来てみたんですよ。」


中年の男が頷きながら言った。


「ああーなるほど、そうだったのか。で、何か見つかったかい?」


俺は少し悲しそうな顔をして言った。


「いえ、なにも…。」

「…そうか。聞いて悪かったね。」

「!、いえ!全然大丈夫です!」

「はは。それなら良かった。じゃあ戻ろうか。」


おじさんの警備兵についていき、俺たちは建物に近づいていった。

警備兵の数はかなりいた。戦うことになったら大変だ。かなり手間がかかるうえに、計画に支障をきたす。


ミナもちょうど同じことを思っていたようだ。


(余裕だね、この人の体を手に入れられたのはすごい幸運だよ!)

(ああ、そうだな!)


 ハンスくんには悪いけど。この身体は世界を救うために使ってやるから。


俺が小声で話しているのが聞こえたのか、おじさんが言った。


「ん?何か言ったかい?」

「い、いえ何も。」


 やっちまったぜ。


 よし、このままゼファードのとこまで潜入するぞ。


さっきより小声でミナに話しかける。


(ミナ、頑張るぞ。)

(うん!)


ミナが笑顔で拳を突きだしてきた。ミナの拳を掴む。


掴まれるとは予想していなかったので、ミナは驚いた。目を見開く。


(ちがう、全然そうじゃない!!

気合い入れるためのグーパンチだよ!)

(あ。)


…そういうことか。


俺は掴んでたミナの拳を離して、代わりに拳を合わせた。


気合を入れた。




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