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第17話 黒沢さん、〇〇の回数を暴露してしまう

次の日、俺と黒沢さんは時間をずらして学校へ向かった。


当然だが、俺達が同居を始めたことはオオカミ子さん以外には秘密だ。




オオカミ子さんには黒沢さんと同居する許可を既に取ってあるが……改めて、昨日からそれがスタートしたことを伝えておいた。

それに対して彼女は


「うん。わかった」


と一言だけ返信した。

なんとなく、ちょっと不満げというか、ヤキモチを妬いている印象を感じた。

とはいえ、文字だけなのでよくわからない。


可能性としては、オオカミ子さんが黒沢さんだということもありうる。その場合は、本当に他意の無い「うん。わかった」ということになる。結局は謎なのだ。




俺は彼女に


「ごめんね、オオカミ子さん……。

これからもたくさん話そう」


とだけ送った。彼女からは


「うん!そうだね!!」


と返ってきた。……オオカミ子さんがメンタルお化けで良かった。




――――――




教室に着いた。

先に登校した黒沢さんは、知らん顔でいつも通り隣の席に座っていた。

俺も知らん顔で席に着いた。




珍しく、妖羽あやはねさんが俺の机に寄ってきた。


「やあやあ。キミ、ちょっといいかな」


昨日妖羽さんは学校を休んでいたので、数学の授業がどこまで進んだのかを俺に聞きに来たらしい。

俺はそれを教えてあげた。


「ありがとう、助かったよ。今やキミは、私の次に数学ができるからね。育てた甲斐があったよ」


彼女はそう言った。これに関しては本当に彼女のお陰様である。


「こちらこそ。こんなことしかできないけど、恩返しになるのならいくらでもさせてもらうよ」


俺がそう言うと、彼女はニコッと笑った。




「それにしても……」


ふと妖羽さんが言った。


「キミの席の周り、何かいつもと違うような……」


…………??

彼女は何かに違和感を感じているようだ。

彼女は目を閉じ、くんくんと鼻を嗅ぎ始めた。

しばらくして、


「……あ、わかったかも」


ゆっくりと目を開け、こう言った。


「黒沢さん、シャンプー変えた?」




――――――




心臓が止まるかと思った。

動揺が顔に出ていたと思う。

黒沢さんの方をちらりと見たが、彼女も俺とおそらく同じ表情をしていた。


「そ、そうなんだよ〜……

あ、妖羽さん、よく気づいたね〜……!」


黒沢さんは何とか言葉を取り繕っていた。

妖羽さんは、やはり自分の直観は正しかったと言いたいように、得意げな表情をしてこう言った。


「鼻と勘は効くもんでね」


やはりこの女の子、只者ではない……。

このままでは、同じシャンプーを使ったことがバレるのも時間の問題だ。

大至急、別のシャンプーを購入する必要が生じた。




――――――




そんなこんなで危ない場面もありつつ、何とか週末を迎えることができ、黒沢さんの荷物がうちに届いた。


俺は届いた段ボール箱を、彼女のために空けておいた部屋へと運ぶ。

彼女は玄関で代金を支払っていた。

この支払いで彼女は一文無しになったらしい。




それは置いておき、彼女は早速荷解きに取り掛かった。

一方の俺は風呂掃除を始めた。


すぐに彼女の呼びかけが遠くから聞こえて来た。


「ねえ、ハサミあるー?」


「あー、俺の部屋の机の引き出し探してー」


なんだこの会話は。

同棲カップルみたいで笑ってしまう。




……ん?ちょっと待った。黒沢さんに引き出しを見られるのは、ひょっとしてまずいのでは……?

確か2段目の引き出しには、以前オオカミ子さんからもらった女の子用の白パンが入っている。


「黒沢さん、ちょっと待って――」


と言っている最中に、彼女が白パンをつまんで荒々しい表情でこちらに向かってきた。

俺は理由を説明する前に、

「新手の嫌がらせしやがって!変態が!!」

と顔面を叩かれた。




――――――




黒沢さんは、山盛りの衣類を両手で抱えて洗面所へと向かって行った。彼女の持つ全ての布類をまとめて洗濯するためだ。


……まあ、言い方を替えると、持っている布類を全て合わせても両手で抱えられる程の量しか無く、1度にまとめて洗濯ができてしまうということだ。

最低限の服以外は古着に出すなどして、苦労してお金を工面していたのだろうことが想像される。




彼女の通った道をふと見ると、1着の洋服が無造作に置き去りにされていた。きっと、彼女がまとめて洗面所に運ぶ途中で落とした物だと思われる。


俺はそれを彼女に届けようと思い、洋服を拾い上げた。

が、その洋服の中からさらに、別の小さな落とし物が床に落ちた。


カランカラン……。


「……ん?」


それは豆みたいな形をしたピンク色の小さな物体だった。

手に取って色々な方向から見てみたが、綺麗な楕円形をしていた。


よく見ると、その楕円形の物体から細い線が洋服の中に伸びており、それをたどるとリモコンらしき物が発見できた。


俺は試しにそのスイッチを入れてみた。




ブウウウウウウン……




その豆はけたたましく震えだした。


「……こ、これってまさか……?!」


その音を聞いた黒沢さんが、洗面所から物凄い速度でこちらに走ってきて、俺からその豆をトンビよりも素早く一瞬で奪い取った。


その場で下を向いてへたり込む彼女に、俺は恐る恐る話しかける。


「あのーー……それって……」


彼女はこちらをバッと振り向いた。

顔から耳までを真っ赤にしながら開き直って叫んだ。


「ロ、ローターだけど……?!?!

わるい……?!?!」




――――――




ローターだった。

よくあるイメージ通りのやつだった。

イメージ通りのやつすぎて、弁解の余地が無かった。


黒沢さんは目に涙を浮かべつつ説明を始めた。


「い、いいでしょ……?!

テストの成績とか深夜のバイトとかでストレスすごかったの!!

お金稼げなかったらアパート追い出されるっていうのもあったし、限界だったの!!

ストレスでムラムラして……発散しないとやってられないし……

毎日プレッシャーから解放されるのはこの時くらいなのよ……?!

だ、だから……わるい……?!」


俺はたじたじになりながらも彼女をなだめた。

……テンパっていたのか、黒沢さんは毎日致していることをちゃっかりと公言していた。




「ほ、ほら……きっと健康器具とかだよね?

そうだ、そうだよ……!健康器具だよ……!

これは健康器具だから何もおかしなことは無いよね」


俺はもうだいぶ厳しいとわかりつつも、彼女に対して精一杯のフォローを入れた。


「…………。

……そ、そうよ。健康器具だけど……?

別にへんな使い方してないし……!!

キモい想像しないでよね……?!」


黒沢さんが乗ってきた。

明らかにもう手遅れだと思うが、この場はそれで通すらしい。

彼女がそのつもりならと、俺は強引に納得することにした。


「じゃ、そういうことで……。

俺はお昼ご飯の用意でもしてこようかな〜」


俺がとりあえずその場を離れようとした時だった。


「待って……!!」


黒沢さんが叫んだ。




「……これ汚いかもだから、必ず手洗ってね……」




彼女がそう言ったことで、俺は強引に納得する術さえも失ったのだった――。






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