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第15話 黒沢さんとお風呂で……××× ①

「今日……放課後に校舎裏に来てもらってもいいかしら」




と、黒沢さんが俺の後ろから耳元に一言だけ囁いて去っていった。


俺は「ん?どうかしたの?」と聞き返したが、その時にはもう彼女の後ろ姿しか見えなくなっていた。




というわけで放課後、今現在。

俺は満を持して言われた通りの場所で黒沢さんを待っている。


……のだが、いつまで経っても肝心の彼女が一向に現れない。


「おかしいな……」


もしかしたら、朱川さんあたりに捕まって教室で何か話しているのかもしれない。俺は一度、教室へ戻ってみることに決めた。


今いる校舎裏から下駄箱に戻るには、建物の外壁をつたって校舎の正面側に回り込まなければならない。

外壁に沿って最初の角を曲がろうとしたその時だった。


「きゃあ……!!」

「うわ……!!」


2人がほぼ同時に叫んだ。

角を曲がったすぐそこに黒沢さんがいたのだ。




「あぁ……待たせてごめん……ええと……」


彼女は声のトーンを少し高くしながらそう言った。目が泳いだり腕をさすったりなど落ち着きがなく、何というか典型的に慌てふためいている様子だった。


今ちょうどここに来たというよりかは、しばらく壁の裏に隠れていたように思えた。

俺の前に現れる決心が中々付かなかった所を、強制的に引きずり出してしまった感じだ。


「一体どうしたの?」


「……あのね……」




俺がそう聞くと、彼女は覚悟を決めたように大きく深呼吸をした。

そして、その場に正座し、頭を地面に付けてこう言った。


「……今週末にアパートを追い出されます。

……どうかお願いです。

しばらくの間、泊めてもらえないでしょうか……」




――――――




「この前体育館で言った通り、OKだよ」


黒沢さんはバッと顔を上げた。

綺麗な黒髪が乱れた。

教室で演じている勝気な黒髪美少女と同一人物とは思えない、泣きそうで情けない表情だった。


「ありがとう……本当に……」


と力無く言った後、ズズッと鼻をすすった。

目には涙が浮かび、おでこには土が付いていた。


いつも虐めてくる同級生の美少女が俺に対して土下座で懇願し、頭を地面に付け、泣き顔を見せてくる。

俺は感じたことのない謎の背徳感に包まれた。




「まあ、今週末からよろしく。黒沢さん」


「……はい。よろしくお願いします」


彼女はそう答えた。

俺は契約成立の一応の儀式として、地べたにペタッと座り込む黒沢さんに手を差し出し、握手を求めた。


……しかし、予想に反して彼女はそれに応じてくれなかった。

両方の手のひらをこちらに向けてグイッッと伸ばし、顔を背けた。要するに拒絶のポーズだ。


「待って!!それ以上私に近づかないで!!」


「え、なんで……?」


状況が飲み込めず混乱していると、彼女が言いにくそうに教えてくれた。


「……ガスも水道も止まっちゃって、もう2日もお風呂に入ってないの。

だから……に、におうかもだから!」




――――――




というわけで、今日これから、俺は黒沢さんに自分の部屋のお風呂を貸してあげることにした。


今週末から住むことになる物件の内見も兼ねて、いい機会だろう。

俺から少し距離を取って、彼女はついてきていた。




帰り道、俺達は今後の話をした。


今週末に、黒沢さんの保有する全ての荷物を俺の部屋に届けるので、段ボール箱2つ分の置き場を用意してもらえないかとのことだった。


生活するために必要な全ての荷物が段ボール2つに収まるなんて、いくら何でも少なすぎないか?

……と、俺は最初疑問に思った。

が、どうやら彼女は未払いの家賃をやりくりするために、家具という家具を全て売りに出してしまったらしい。

今回の段ボールの運送料は、最後の家具である洗濯機を売って捻出するつもりとのことだ。




黒沢さんは他にも、お金を用意すべく色々と手を出したらしいが、結局全てダメだったようだ。


「今日オタク君に断られていたら、本格的に身体をお金にすることを始めてたと思う」


……と、彼女は少し怖いことを言っていた。

まあ、土下座で泣きながら頼み込んでくる女の子のお願いを断るなんて、男として絶対にできるわけがないのだが。


彼女はふと、こんな事を言ってきた。




「あの……

今まで酷いことしてごめんなさい。

お詫びに何でも1つ言うこと聞くから……」




泣きそうな声だった。

……確かに、俺が今までに黒沢さんから受けた誹謗中傷・暴言・暴力の数々を考えると、俺の快諾に対して彼女が罪悪感を抱くのも理解できた。


とはいえ、年頃の女の子が高校生男子に対して「何でも言うことを聞く」という施しを与えるのは危険すぎる。理由は言うまでもなく、ほぼ100%の確率でエロい要求が生じるからだ。


特に俺の場合、彼女から今までに受けてきた多大なる精神的苦痛が、要求を躊躇しない大義名分となっている。つまり、エロい要求の1つくらいならしても罰は当たらないだろう、ということだ。


……だがしかし、俺は男だ。紳士だ。

女の子の弱みにつけ込んで自分の欲望を満たすなんて、そんな卑劣な行為はしない。


ということで俺は、

あくまで冗談半分で、

あくまでダメ元で、

あくまで場を和ませるために、

次のように返答した。




「じゃあ、黒沢さんのお風呂に俺もお邪魔しちゃおうかなー?

ははは、なんちゃって」




ケラケラと馬鹿みたいに笑う俺の背中で、彼女は即答した。




「いいよ……。オタク君がそうしたいなら」




――――――




俺の隣で黒沢さんはYシャツのボタンを外していく。

俺は心臓をバクバクに鳴らしながら、Yシャツが肩から床にずさっと落ちる様子を凝視していた。


直後、スカートもバサッと床に落とされた。


彼女は、深い青と黒のレースに控えめな装飾が入った、ちょっとセクシーな上下セットの下着姿になった


手と足が震え、俺はまともに衣服を脱ぐことすらできなかった。




黒沢さんが目を細めて、何か言いたげにこちらを見つめる。


「あの…………

さすがにそんなに見られると恥ずかしいんだけど」


彼女は自分の胸元を両手で押さえながら、恥ずかしげな上目で俺に言った。

胸元を隠す仕草と、そこから下の完全に顕になった魅力的な身体のラインのギャップに、思わず目を逸らせなくなる。


「あと、におうかもだから近づかないで」


彼女はくるくると身体を回しながら、自分の二の腕のにおいを嗅いで確かめていた。

彼女は脇と身体のラインを、様々な方向から観察させてくれた。




黒沢さんは後ろを向いて、腰のパンツに両手をかけた。

……後ろからの物凄い視線を感じたのか、彼女は少し後ろを振り返りつつ、俺に訴えかけるように目線をよこした。

が、俺は申し訳ないことに、彼女のお尻をかろうじて隠している縦長の逆三角形の布にしか視線が向いていない。




――――――




黒沢さんは観念したように、目を閉じて前を向いた。

そしてついに、彼女はお尻を突き出すようにしてパンツを下ろした。




俺はただただ、その光景を見ていた。

瞬きを忘れていた。




だいたい膝の所まで下ろした所で彼女の手が静止した。これ以上腰を曲げてお尻を突き出せば、もっと大事な所が色々と見えてしまい、俺をさらに喜ばせることに気づいたのだろう。


彼女は身体を起こし、膝に引っかかっているパンツから足を外そうと、慣れない様子で足をモジモジとさせていた。


……が、中々脱げない。

いつもパンツを脱いでいるやり方と違うのだろう。

彼女が足を動かす度、お尻がもごもごと動いた。




おそらく今の状態の彼女にとっての最適解は、1度しゃがみ込んでパンツを足から外すことだろう。こうすれば最小限の被害で済ませられる。


が、俺の視線が彼女を焦らせた。

黒沢さんはそれに気づくことなく、再び慎重にお尻を突き出した。そして左足を上方向に曲げ、パンツを持ち上げるようにして左足から外した。

右も同様にしていた。




続いて彼女は、背中にあるブラジャーのホックをカリカリと引っ掻いた。

が、おそらく、男子の前で下半身に何も身につけていないことに緊張を感じているようで、うまく外せていない。


そこで彼女は1度、ブラジャーの2つの肩紐に自分の両腕をそれぞれ通して肩を解放した。

そしてブラジャーをくるくると横にスライド回転させ、ホックを自分の胸の前に持ってきて、それを外した。




ブラジャーが床に落ち、いよいよ彼女は何も身につけていない状態で俺に背中を向けていた。


彼女は恥ずかしそうな表情で、髪を揺らしながらバッと後ろを振り返った。


が、ふと視線を落としたかと思うと表情が困惑に一変した。

彼女は赤面しながら


「変態……!!」


と怒鳴り、お風呂の扉を開けて浴室に入っていった。


俺は下に目をやると、自分の体の一部が窮屈そうに限界を訴えていることに今更気づいた。

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