第14話 柚木さんは俺に浮気したい(百合回)
「あの……
オタク君にお願いがあるんだけど……」
今まで1度も話したことのないショートヘアの清楚系JKが、クラスメイトの俺に頼み事があるらしい。
彼女はわざとらしく、少し上目遣いで俺を見つめる。おそらくだが、こうすれば大抵のわがままは通せると経験上わかっているのだろう。
「お願い!!
私と付き合ってください……!!
今日だけ……」
彼女は俺に頭を下げ、両手を合わせてそう頼み込んできた。
「…………はい?」
彼女の名は〈柚木ハナ〉さん。
現在進行中である〈クラスの女子全員とデート〉プロジェクトの、銀条院さんに続く第2弾の子だ。
というわけなので、俺達が今話しているのは教室ではなく、デートの待ち合わせ場所として指定したカフェの前だ。
「友達に彼氏できたって言っちゃって……
今日だけ彼氏のフリしてくれないかな?
お願いします……!!」
彼女は目をうるうるさせた。多分わざとだ。
「わ、わかったよ……」
そのあざとさは作り物だとはわかっているが、俺はその涙目に押し負けた。
「ううう、ほんとにありがとう……。オタク君って実はいい人なんだね。今まで生理的に避けててごめん」
そう言って彼女は俺に向かって、えいっと抱きついてきた。
「柚木さん……?!」
「今日は私、オタク君の彼女だから。これくらいはしないと。
あと、柚木さんじゃなくて、ハナって呼んで」
まじか……。
というわけで俺は、柚木さ……ハナと一緒に、一芝居打つことになった。
――――――
俺達はカフェに入店し、彼女……ハナと少しの間、当たり障りのない内容についてしゃべっていた。
周囲からは、確かに俺達は高校生カップルに見えていたと思う。ハナも俺も同じ校章の刺繍が入った制服を着ていたからだ。今日は制服で来るよう、俺は彼女に頼まれていたのだ。
しばらくすると、もう1人の女子高生が俺達に合流してきた。
「おまたせ〜」
彼女もまた制服だった。しかし俺達とは別の学校だ。
特徴的なのは、カーディガンを腰に結んでいることだ。茶髪が波打ち、爪には謙虚な飾りが施されている。
学校に怒られない範囲内で最大限のオシャレを試みているのだろう。……もしかしたら少しアウトかもしれないが。
とにかく、お硬いうちの高校にはいないタイプの女子だ。
当然だが制服は着崩していた。
スカート丈は腰に巻いたカーディガンよりも短く、ネクタイは緩めている。
が、胸元は開けておらず、オシャレと清楚が絶妙なバランスで見事に共存しているのだ。これが最近のギャルのファッションなのだろうか。
名前は〈アリサ〉さんというらしい。
「へ〜。付き合ってるって嘘じゃなかったんだ」
「もしかしてアリサ……疑ってたの?」
ハナとアリサさんが会話に花を咲かせる横で、俺は時折頷いたりなどしつつ、それを黙って聞いていた。
「リョウマ君だよね?
話はハナからちょくちょく聞いてるよ」
「あ、そ……そうなんだ」
俺は今日1日、〈リョウマ〉君らしい。
ハナさん……アリサさんにどこまで空想の彼氏に関するでたらめを……。
「ねえ、じゃあ2人はどこまでいってるの?
キスとかした感じ……?」
「そ、そりゃもう……キスしまくりよ!
ね?リョウマ君?」
「え?!……そ、そうだね」
アリサさんは「ふーん」と目を細める。
もしかして、疑われてる……?
アリサさんから俺に対してキラーパスが飛んで来た。
「ねえリョウマ君、ハナのキス……どんな味だった?」
「え……!?」
なんだその質問は……?
隣に座っているハナを横目で見ると、彼女も少し困惑している様子だった。
が、あまりこっちを見るなと言いたげに目配せしつつ、テーブルの下でぐいぐいと腕で合図を送ってきた。
行け、躊躇するな、そういう意味なのだな?
俺はそう捉えた。
なので俺は、声の調子を整えて堂々と言ってやった。
「ハナのキス……女の子の蜜のような味だったよ」
――――――
2人はというと、俺の発言にドン引き……いや、きっと少しだけ引いていたかもしれないが、あの場はなんとか収まった。
その後、俺達はカラオケに入った。
アリサさんからの茶化しで、俺とハナはラブソングを歌わされたのだが……
これが相当キツかった。
アリサさんは足を組んで、それを黙って聞いていた。
ここで、俺の危惧していたことが起こった。
ハナがお手洗いのために席を立ったのだ。
俺はアリサさんと共にその場に残されてしまった。
……気まずい空気が流れた。
俺は何か適当な話題はないかと脳をフル回転させていた。
が、その甲斐なく、アリサさんから本質的な所に切り込まれてしまった。
「ねえ、リョウマ君。ハナと付き合ってるって嘘でしょ?」
「え……そ、それは…………」
彼女はゆっくりと、俺を下から見上げるようにぐんぐんと迫ってきた。俺はたまらず後ずさりするも、後ろは壁だった。
アリサさんは1つの瞬きもせずに俺の目をじっと見つめてくる。視線が鋭すぎて、俺は彼女を直視することができなかった。
「ごめん……
本当は付き合ってるって嘘なんだ……」
すまない柚木さん……俺はアリサさんの圧に勝てなかった。
「いいよ、どうせハナにお願いでもされたんでしょ?
ごめんね、迷惑かけて」
はあ……。勘の良いギャルには、付け焼き刃の演技など全部お見通しのようだった。
「ねえ、これ見て。私とハナね、仲いいんだよ」
そう言ってアリサさんはスマホを操作し、1枚の写真を俺に見せてきた。
……え??
それは、たらーんとした正気のない目のハナとアリサさんが、同じ布団に入って自撮りをした写真だった。布団で身体は隠れていたが、2人とも服を着ていなかった。
「ん?ちょっと刺激が強かったかな?」
俺は両手で口を押さえ、目をパチパチとさせていた。
「私とハナ、付き合ってるの……。
だからさ、君にハナを取られたらイヤだっていうか」
そう言って彼女は突然……自分の胸を俺にぐっと押し当ててきた。
「ねえ、ハナじゃなくてもいいでしょ?
私で満足させてあげる。
……私、けっこううまいよ?」
そういって彼女は一度俺から離れ、自分のシャツのボタンを1つ1つ外していった。
そして両手でシャツをぐいっと開き、黒い大人っぽいブラジャーに包まれた大きめの胸を、さっきよりも強く、俺にぎゅっと押し当てた。
「ん……」
彼女は声にならない声を出しながら、俺の体を使って胸を上下に擦りつけた。
なんか……色々とおかしな状況になってきて、俺は今とんでもないことに巻き込まれているのでは?ということがわかってきた。とりあえずヤバいという感情だけがあった。
バタン!とハナが扉を開けた
「何やってるの??!」
ハナはアリサさんに走り寄り、ペチンと頬を叩いた。
「アリサのバカ……!!
もし襲われたらどうするのよ……?!」
彼氏のはずの俺の方は全く心配されていない様子だ。
完全に〈けだもの〉扱いである。
「だ……だってハナが彼に浮気するから……」
アリサさんは泣きそうな声で言った。
「オタ……リョウマ君は私の彼氏なの!
だからもう、私達やめようよ、こんな関係……!!」
「じゃあ、私よりも……彼のことが好きなの……?」
「そ、それは……す、す、すきだよぉ……?」
語尾が不自然にせり上がった。
「ふ、ふーん……。
あ……そうだ。じゃあ私みたいにさ、彼におっぱい押し付けてみてよ。
好きならできるよね?」
ハナは一瞬困惑するも、もちろんできるよと答えた。
「待って、本気でやるの?」と、俺とアリサさんは2人とも思った。
もう嘘はバレたようなものなのに。
ハナは物凄く緊張した様子で、ゆっくりゆっくりと、下着が見える高さまで制服をたくし上げた。
白い生地をベースに桜色でかわいく花の装飾がなされたブラジャーと、見るだけで柔らかいとわかる胸、そしてその谷間が見えた。
彼女は恥ずかしさのあまり、顔を大きく逸らし、噛み締めるような表情をしていた。
彼女の心臓の音がここまで聞こえてくるようだった。
それを俺にぎゅっと押し当て、ぎこちなく言った。
「リョウマ君、好きだよ……アリサよりも」
アリサさんの目から一筋の涙が流れた。
頬からその雫が地面に落ちた。
「――じゃあ、どっちが好きか確かめてあげる」
そういってアリサさんは真剣な表情でハナに迫って行った。
「ちょ、ちょっと待って、ここではダメ……
あ……!!」
怯えるハナを捕まえ、アリサさんは抵抗する暇も与えず強引にハナの唇にキスをした。
それはもう……すっごいキスだった。
俺はとっさに両手で顔を隠した。
「んんんーーーー…………!!!」
身体をガッチリ掴まれたハナ……つまり自分の彼女が、別の女の子にキスされて悶える姿を、俺は指の隙間から見ていた。
「ん……」
ハナの身体が何回か跳ねた。
その間、アリサさんはハナの脱力した身体を両腕で支え、声が漏れないように唇に唇でフタをしてあげていた。
彼女はぐったりと倒れ、眠り込んでしまった。
さっき写真で見たのと同じ顔になっていた。
「はあ、はあ……
やっぱり私の方が好きなんじゃん」
アリサさんはハナの手を恋人つなぎで握っていた。
「リョウマ君、私達の恥ずかしい所、見ちゃったね。興奮した?」
……なんだか凄いものを見てしまった。正直に言うわけにもいかず、反応に困った。
「ごめん、君の彼女、私がもらってくね」
はい。どうぞ。もらってください……
としか思えなかった。
「ハナのことはこれで許してあげて」
そういってアリサさんは、ハナ……いや、柚木さんのスカートをチラッとめくって、中身を俺に見せてくれた。
「ちょ……!!」
アリサさんなりの仕返しだった。
柚木さんの白と桜色のかわいらしいパンツは濡れていた。
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