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少年サッカーのコーチやってみた! ― 未経験の父が学んだ、子どもたちの成長と勝ち方 ―  作者: 岩田 ヒロ


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9/10

区大会予選、第一試合

誤字脱字を修正しました。


 明日の区大会予選に向けて、エンリコでコーチ会をした。浜田コーチも集まり、村上コーチ、自分、そして厨房から山下コーチが参加する。明日の予選第一試合は港北FCと対戦だ。昨年の練習試合では1対1で引き分けた。どっちが勝ってもおかしくない試合だ。


「ユースケはほぼ完治してますが、今回はサブにして大事をとりますね。第二試合に温存しましょう」と村上コーチが言った。復帰したとはいえ、練習不足だから当然と思って頷いた。


「もし負けると次の試合の主審と副審しなければいけません。今回はわたしが主審、浜田コーチが副審でいきましょう。石川コーチもまだ無理しないでください。ま、絶対勝つので審判の心配は不要ですが、念のため浜田コーチ、審判のユニフォーム持ってきてください」と村上コーチ。


「はい」と浜田コーチが笑って答える。


「ユースケの代わりにナオヤを左ウィングに入れます。これがスターティングメンバーです」


 村上コーチがノートを広げる。


 ---


 ■ スターティングメンバー


 トップ:

 トオル


 ミッドフィールダー:

 ナオヤ、ヒョーガ、ユーメイ


 ボランチ:

 ワタル、マオ


 バックス:

 ゲン、ムラッチョ、マサト、リクト


 キーパー:

 アキ


 サブ:

 リュージ、ソウ、ユースケ


 ---


「それで作戦ですが、何かアイデアありますか?」


「前回はユーメイが惜しいシュート打ったし、ソウは最後技ありのミドルでゴール決めましたよね。とにかく、ミドルでよいからどんどんシュートしていくのはどうでしょう?」と浜田コーチ。


「そうですね。ナオヤ、ヒョーガ、ユーメイにミドル積極的に打たせて、相手のセンターバックがはじいたボールをトオルがゴール狙うのもいいですよね」と村上コーチ。みんなが頷く。


「港北FCにはマサトやリュージより大きい選手はいなかったのと、最近あの二人ヘディングうまくなってきたから空中戦いけるかもしれません」と自分。


「マサトはムラッチョとセンターバックで壁になってもらいましょう。後半試合が膠着したらリュージをトオルと替えてみてもいいですよね」と村上コーチ。


「なにしろ明日は実力は互角だから、集中力で決まるでしょうね。選手たちにしっかり集中してもらって勝ちましょう」と山下コーチが締めてくれた。


 ---


 次の日の朝、さすがに1月下旬でかなり寒い。選手たちはユニフォームの下にロングスリーブのシャツを着て、手袋をしている。村上コーチがスターティングメンバーを説明し、昨日の作戦を伝える。


 山下コーチが「ペナルティエリアの外からでもどんどんシュート打っていいよ」と付け加えた。浜田コーチが選手たちとアップを始める。村上コーチが主審に挨拶し、メンバー表を渡した。


 ユースケは試合に出れず残念そうだが、一緒にアップしたり、ボールを蹴って骨折した足の具合を確かめている。この試合に勝ち、次の試合に出れれば御の字だろうと思った。自分の肉離れもだいぶ治ったが、走るとまだふくらはぎに違和感を感じた。


 ---


 試合が始まった。両チームの動きは硬かった。お互い緊張しているのだろう。


 ボールの奪い合いが始まったところで、ヒョーガの目の前にボールが飛んできた。ヒョーガがミドルを打つ。相手キーパーがキャッチし、大きく前にボールを蹴る。


 落下地点に選手たちが集まる。マオがボールを取るとユーメイにパス、ユーメイが強烈なミドルシュート。


 キーパーがキャッチし損ねてボールをはじいた。こぼれ球にトオルが近づき、シュート。


 ピー、横浜SCのゴール!


 なんと開始三分で横浜SCのゴールだ。ベンチや選手たちは大騒ぎだ。トオルがみんなとハイタッチしている。


「うまくいきましたね。これはゴールラッシュになるかも」と山下コーチ。


 ---


 しかしその後、港北FCはミドルを打たせないように早めにプレッシャーをかけてきた。そしてバックスを引いて守備を固めてきた。


 ボールポゼッションは横浜SCの方が多くなり、港北FC陣地でのプレーが増えたが、なかなか決定的なシュートチャンスがなくなってしまった。


「サイド攻撃に切り替えたりして、相手を揺さぶらないといけませんね」と村上コーチが言った瞬間、ヒョーガのミドルをキーパーが取り、大きく蹴り返した。


 マオが珍しくトラップミス。相手のカウンター攻撃が始まった。


 マサトとムラッチョが必死に戻る。港北FCの左ウィングがドリブルで駆け上がる。右のサイドバックのリクトが抜かれた。


 これはやばい。センタリングが上がればピンチだ。


 アキの前に港北FCのフォワードが飛び込んで来た。センタリングが上がった。


 その時、なんとマサトが相手フォワードの前に出て、上がったボールをヘディングで返した。


「ナイスクリア、マサト!」


 マサトのファインプレーだ。高さは余裕だった。ジャンプもせず、ヘディングでクリアできた。


「マサト、デカいな!」とベンチの選手たち。


 前半は1対0で折り返すことができた。


 ---


「みんな集合、次の作戦。あ、水分補給しながら聞いて」と村上コーチ。


「ミドルばかり狙うと相手はゴール前を固めてくる。そうしたら今度はサイド攻撃をしよう。サイドに深く入ってセンタリングをあげよう。正面から攻撃したり、サイドから攻撃したりと揺さぶれば、シュートコースが見えてくる。その起点はボランチのマオとワタルね! 正面から狙ってミドル打たせたら、次はサイドにキラーパスしよう」


 ---


 後半が始まった。


 マオがボールを奪うとヒョーガにパスし、正面からミドルシュート。


 ボールが奪われ、港北FCの攻撃。ムラッチョがボールを奪うとマオにパス。


 マオは右サイドにキラーパス。ユーメイが追いつきセンタリング。トオルが頭で合わせようとするが、港北FCのセンターバックの方が背が高く、頭でクリア。トオルに届かない。


 こんな感じで揺さぶりを続けているとチャンスが来た。


 ワタルが左サイドにキラーパス。ナオヤが追いついてボールを止める。今回はナオヤも止まった。


 センタリング上げると思ったら、ドリブルで相手サイドバックを抜き、ミドルシュート!


 キーパーの手に触れたが、そのままゴール左下に決まった!


 ピー、横浜SCのゴール!


 なんとナオヤの公式戦初ゴール。ベンチも選手たちも大喜び。


「スーパーカーがゴールを決めた」と村上コーチもびっくりだ。


 ---


 後半も残り五分。2対0。


 選手たちも疲れているのか、試合は膠着状態だ。その時、村上コーチが動いた。


「リュージ、アップして。トオルと交代するよ。ヘディングシュート決めてこいよ」


 リュージが緊張してアップする。


 村上コーチが主審に選手交代を伝える。港北FCも3人の選手交代を伝えていた。


「トオル、お疲れ様」と村上コーチがトオルと握手。ベンチのみんなも「お疲れ様」とねぎらう。


 ---


 残り四分、三分と時間が過ぎる。


 港北FCの交代メンバーはフォワードに入り、ゴールを狙って走り回る。ムラッチョもマサトも疲れきっている様子だ。


 その時、マオがインターセプトしてボールを奪った。すかさずユーメイにパス。港北FCは全員攻撃の体制だったので戻るのが遅れた。


 ユーメイがサイドをドリブルで上がり、センタリング。待っていたのはリュージだ。


 ボールがきれいにリュージの頭に向かって飛ぶ。リュージのヘディング。キーパーはボールに届かない。


 ボールがクロスバーとキーパーの間を通過した。


 ピー、横浜SCのゴール!


 決まった! リュージのヘディングシュート! 3対0だ。選手たちがリュージの頭を叩いて喜んでいる。リュージが嬉しそうな顔をしている。


 ---


 ピーピーピー。試合終了。3対0の快勝だ。選手もコーチも大喜び。


 試合に出れなかったソウ、ユースケは元気がない。


「来週も試合がある。明日の日曜日も練習あるから元気出していこう」と声をかけた。


「次の相手は鶴見FCだよ」と村上コーチが言うと、選手たちが静かになった。


「マジで」とユースケ。


 鶴見FCは昨年の市大会で0対2、昨年11月の練習試合でも0対2。しかもユースケはその試合で骨折。宿敵なのだ。


「ユースケ、リベンジだ。みんなも覚えているよね。相手の10番抑えれば勝ち目はある。自信持とう。今日は3対0で勝ったんだから。みんな進化してるからさ、次も勝とう」


 村上コーチが選手たちを鼓舞した。


 今の君たちなら勝てるかもしれないと期待してしまった。

読んで頂き、ありがとうございます。

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