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少年サッカーのコーチやってみた! ― 未経験の父が学んだ、子どもたちの成長と勝ち方 ―  作者: 岩田 ヒロ


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10/10

区大会予選、第二試合(最終話)

誤字脱字を修正しました。

 前日の金曜日の夜、エンリコでコーチ会が招集された。今回は吉田監督代表や直輝コーチも参加している。


「前回の練習試合は相手の10番をマオとワタルがマークしたので、相手の攻撃の目を潰せました。でも、鶴見FCはすぐにサイド攻撃に作戦変更してきたので、負けてしまいました。選手層が厚いし、攻撃スタイルもいろいろ持ってるようで、手強いっす」


 と直輝コーチが話を始めた。


「対港北FCでは、うちも正面からミドル打ったり、ユーメイがクロス上げてリュージがヘディングしたりと、攻めはいろいろな選択肢があって、選手たちが考えて動けるようになった。問題は守備なんですよね」


 と村上コーチが言うと、山下コーチが、


「マオやワタルが10番にボール渡さないように走り回ってるけど、もっとその前にプレッシャーを与えて、自由にボールを回せないようにしたいですよね」


「そうするとミッドフィルダーのヒョーガやユースケ、ユーメイが前からプレッシャーを与えて、相手にビルドアップをさせないようにしないといけない。選手たちの体力、スタミナが持つかどうか、サブの選手も総動員で走るしかないかもしれません」


 と村上コーチが言って、ノートにポジションを書き出した。


 ---


 ■ 前半メンバー


 トップ:

 トオル → 後半はリュージ


 ミッドフィールダー:

 ユースケ、ヒョーガ、ユーメイ

 → 後半はナオヤ、ソウ、トオル


 ボランチ:

 ワタル、マオ


 バックス:

 ゲン、ムラッチョ、マサト、リクト


 キーパー:

 アキ


 サブ:

 前半:リュージ、ソウ、ナオヤ

 後半:ユースケ、ヒョーガ、ユーメイ


 ---


「前半、トオルはトップ、後半は右ウィングでフル出場。ユースケ、ヒョーガ、ユーメイはあらかじめ前半だけだからと言って、倒れるまで走ってもらいましょう。後半はナオヤとソウ、リュージを投入してはどうでしょうか?」


 村上コーチが言うと、みんなが頷いた。


「こないだ練習したサイドバックがウィングの外から追い越してサイド攻撃に参加するのも、いけると思いますよ。攻撃が最大の防御と言いますし」


 と山下コーチ。


「そうですね。ゲンやリクトのオーバーラップは相手の意表を突いた攻撃になりますよね」


 と村上コーチの目が輝いた。


 最後に吉田代表が、


「最後まで諦めないでいきましょう。今年の四年生は楽しみです」


 と締めくくった。


 ---


 ユースケが前半走りきれればなぁと親心に思った。それにしてもコーチたちが選手たちよりも熱く語っているとは去年は全く知らなかった。きっと、選手たちもこんな話し合いをコーチたちがしてるとは思ってもいないだろう。この先は選手たちだけでこんな話し合いを出来る時間を設けてあげようと思った。まだ、5年、6年と二年間もあるのだ。


 ---


 翌日、村上コーチはユースケ、ヒョーガ、ユーメイに、


「前半終わったら倒れていいから、守備も攻撃も走り回ってこい」


 と伝え、対鶴見FC戦のキックオフのホイッスルが鳴った。


 ---


 マオ、ワタルの10番マークや、ユースケ、ヒョーガ、ユーメイの前からのプレッシャーも効いて、うまく相手に攻撃をさせないことに成功しているように見えた。しかし、鶴見FCのワンタッチの早いパス回しなどで、横浜SCの選手たちが徐々に疲弊していくのが見て分かる。こういうところで練習量の差が出るんだなと思った。


 相手の右ウィングが縦に深くドリブルで上がってきた。左サイドバックのゲンが縦に切って相手を止めようとするが、かわされた。クロスが上がった。マサトが止めようとするが、相手フォワードがマサトの前に出る。ボレーでシュートを打ってきた。


 ボールはアキのセービングをすり抜け、ゴールが決まった。


 ピー、鶴見FCのゴール。


 横浜SCの選手たちががっくりしている。


「下向かないで切り替えよう! まだまだ時間あるよ」


 選手に声をかけたが、明らかに元気がない。


「ヒョーガ、切り替えて、攻撃して行こう!」


 村上コーチも声をかけた。


 ---


 ユースケは足の怪我を感じさせないプレーをしていたが、敵のディフェンスと1対1の場面となるとやや怖がって、ドリブルで抜かずに味方にパスを出す。仕方ないだろうと思った。何度か試合に出てメンタルもリハビリしないといけない。黙って応援することにした。


 ---


 ピーピーピー、前半が終わった。0対1。


 選手たちは無言でベンチに集まってきた。


「まだまだ、後半あるよ! 最初に村上コーチが言ったように、次はナオヤ、ソウ、リュージが入るから元気出して行こうよ」


 と直輝コーチが言った。その三人が大きな返事をする。


「ムラッチョ、積極的にオフサイドトラップしていいよ。一度引っかかるとビビって攻撃を遅らすこと出来るから。最終ライン、コントロールしてな。マサト、ゲン、リクト。ムラッチョに従ってオフサイドトラップ取ろうぜ!」


 と村上コーチ。


「ゲン、リクト。チャンスあればオーバーラップして、サイド攻撃していこう。練習した通りね!」


 と山下コーチ。


 徐々に選手たちが元気を取り戻していくように見える。


「まずは1点取ろう。まだまだ時間あるよ」


 と声をかけた。


 ---


 時間だ。選手交代を告げ、後半が始まった。


 ピー


 フレッシュなナオヤ、ソウ、リュージが走り回り、入りはよかった。


 するとチャンスが来た。


 ワタルがボールを奪う。ナオヤにパス。ナオヤがドリブルで縦に上がるがサイドバックに捕まる。


 その時、後ろからゲンが走ってきた。ナオヤの外を追い越すところで、ナオヤが左前にパスを出す。ゲンがトップスピードでボールに追いついてクロスを上げる。


 鶴見FCのバックスはゲンが飛び出すとは思っていなかったのだろう。戻るのが遅れた。


 クロスは低く上がった。そこにはリュージが待っていた。リュージはトラップし、シュート。


 ボールはゴールネットを揺らした。


 ピー、横浜SCのゴール!


 同点に追いついた。ゲンとリュージ、ナオヤが肩を抱き合って喜んでいる。山下コーチもガッツポーズだ。


「まだ同点。これから、これから。切り替えて行こう」


 村上コーチが浮かれた気持ちを沈めるように選手たちに叫んだ。


 ---


 ここから鶴見FCの容赦ない怒涛の攻撃が続いた。何度もミドルシュートが飛び、アキがスーパーキャッチでシュートを止める。


 鶴見FCは諦めてサイド攻撃に切り替えた時、ムラッチョがやってくれた。


 相手10番が左サイドにキラーパスを出そうとした時、相手の左ウィングを置き去りにして横浜SCの最終ラインが上がった。10番がボールを蹴った時、相手左ウィングは完全にオフサイドとなった。


 副審がフラッグをあげた。


 ピー、鶴見FCのオフサイド!


 やった、これで相手も攻撃が慎重になる。逆転の可能性が出てくると思った。


 ---


 試合は一進一退の膠着状態。

 すげーな、クラブチームと互角に戦っている。

 相手ベンチのコーチたちも大声で選手に指示を出している。


 ラスト一分。


 相手10番へのパスをマオが止めようとしたが止められず、パスが通った。


 嫌な予感。


 相手の10番がペナルティエリア手前、ゴール正面。トラップして振り向くと、ループシュートを打ってきた。


 ボールはきれいに弧を描き、アキの上空を飛び、クロスバーの下をわずかにかすってゴールネットを揺らした。


 ピー、鶴見FCのゴール。


 逆転された。横浜SCの選手たちは座り込んだ。


「立て、まだ諦めるな!」


 吉田代表が怒鳴る。選手たちは気を取り戻してボールを拾い、センターサークルからキックオフしたが、すぐに終了のホイッスル。


 ---


 ピーピーピー。1対2、負けてしまった。


 ---


「石川コーチ、着替えましょう。次の試合、私は主審、石川コーチは副審お願いしますね。浜田コーチ、整理体操して待っててください。審判終わったら反省会して解散しますから」


 村上コーチの切り替えは早い。自分は悔しくて、残念で、声が出なかった。でも、今日、自分は公式戦の副審デビューだ。なんともやりきれない気持ちだった。


 意外にも選手たちは「いい試合できたよな」と元気そうだ。勝てるかもなんて思ってたのは俺だけだったのか? 案外、選手たちは冷めていて、でも、そのおかげで1点取れたのかもしれない。


 こんなに熱い気持ちにさせてくれた選手たちに感謝だ。さて、冷静に副審でもやろうと思い、レフリーの黒い服に着替える。


 ---


 思い通りにならないことなんて山ほどある。

 同じように思いもよらないような奇跡が起こることもある。


 誰かがそれを求めて努力をすれば、それは奇跡でなく、必然と呼べるのかもしれない。


 今日の同点に追いついた瞬間は、

 コーチたちの仕事終わってからのコーチ会や、

 素直に育ってきた子どもたち、

 いや、一生懸命に練習してきた選手たちの必然だったのかもしれない。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

コメント、感想、よろしくお願いします。


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