表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三國志の天才軍師、賈詡は寿命をまっとうしたい! ~終わらない死に戻りループ~  作者: ころにゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/29

第14章:諫言と敗走

宛城から敗走していく曹操軍の背中を見ながら、張繡軍の陣営は勝利の歓声に包まれていた。

「見たか!あの曹操を打ち破ったぞ!」

「これも全て、賈詡先生のおかげだ!」

勝利に酔いしれた張繡は、興奮した面持ちで賈詡の手を取った。

「先生、見事な計略であった!今こそ追撃の時だ!ここで曹操の首を取れば、我らは一躍、天下に名を轟かすことができる!」


だが、賈詡の表情は、勝利に沸く周囲とは対照的に、冷たく冴えわたっていた。彼は張繡の言葉をさえぎり、静かに首を振った。

「なりませぬ、将軍。曹操ほどの男が、このまま無策で逃げるはずがありません。必ずやどこかに伏兵を潜ませております」

しかし、大勝利を収めたばかりの張繡に、その冷静な言葉は届かなかった。

「何を臆病なことを言うか!好機は今しかないのだ!先生が反対するなら、私自ら兵を率いて追撃するまでだ!」

そう言うと、張繡は賈詡の制止を振り切り、意気揚々と手勢を率いて出撃してしまった。


その背中を見送りながら、賈詡は深いため息をついた。

(主君を御することの、なんと難しいことか……)

自らの策が成功しすぎたことが、逆に新たな危機を招いてしまった。彼は、主君の感情を操ることはできても、その暴走までを完全に制御することはできないのだと、改めて痛感させられた。


そして、賈詡の予言は、恐ろしいほど正確に的中した。

追撃を開始した張繡軍は、しばらく進んだ先の隘路で、曹操軍の完璧な伏兵に遭遇し、散々に打ち破られてしまったのである。張繡は命からがら、ほうほうの体で宛城へと逃げ帰ってきた。


大敗を喫し、意気消沈して戻ってきた張繡は、自らの過ちを恥じ、賈詡の前に頭を垂れた。

「先生の言うことを聞かなかった、私の過ちだ。もはや、我らに勝ち目はない……」

だが、そんな張繡に対し、賈詡は驚くべき言葉を口にした。


「将軍、今こそ、再び追撃の時です」

「な……何を言うか、先生!」張繡は愕然として顔を上げた。「また伏兵がいたらどうするのだ!兵たちは疲弊しきっている!」

周囲の将軍たちも、「無茶だ」「我らを死なせる気か」と口々に反対の意を示した。


だが、賈詡は揺るがなかった。

「もうおりませぬ」と彼は断言した。「一度伏兵を成功させた敵は、勝利に油断し、二度目の備えを怠るもの。そして何より、曹操自らが殿軍(最後尾の部隊)を率いて追撃に備えていたのは先ほどの戦いまで。すでに曹操はしんがりを離れているはず。その本隊さえ避ければ、手薄になった後衛部隊を打ち破るのは容易いことです」


その言葉には、絶対的な確信がこもっていた。張繡は、悪魔か神の囁きを聞くかのように、賈詡の目に呑み込まれた。彼は迷いの末、ついに決断する。

「……わかった。先生を信じよう。全軍、再び出撃する!」


兵士たちの士気は低く、半信半疑のまま再び追撃の途についた。先ほどの敗走の悪夢が、彼らの足取りを重くしていた。

だが、数里進んだ先で、彼らが目にした光景は賈詡の言葉を裏付けていた。

曹操軍の後衛部隊の陣営は、煌々と篝火が焚かれているものの、その守りは無きに等しかった。見張りの兵はほとんどおらず、幕舎の中からは勝利を祝う兵士たちの騒がしい声や、高らかな笑い声が聞こえてくる。鎧を脱ぎ捨て、酒を酌み交わしている者さえいた。先ほど自分たちを屠った精兵の姿は、そこにはなかった。


「……信じられん。先生の言う通りだ」

張繡は息を呑んだ。そして、鞘から静かに剣を抜き放つと、天に掲げた。

「全軍、突撃!曹操軍を一人残らず殲滅せよ!」


鬨の声と共に、張繡軍は雪崩を打って油断しきった敵陣へと襲いかかった。

「て、敵襲!なぜ張繡がここに!」

「馬鹿な!奴らは敗走したはず!」

曹操軍の後衛部隊は、全く備えをしていなかった。武器を取る間もなく、酒宴の席は血の海と化す。張繡は先ほどの雪辱を晴らすかのように、馬上で槍を振るい、敵兵を次々と屠っていく。

抵抗らしい抵抗もなく、曹操軍は完全に崩壊し、潰走を始めた。張繡軍はそれを執拗に追撃し、多大な戦果を挙げた。


意気揚々と宛城に引き上げてきた張繡は、もはや賈詡を人間ではなく、神か悪魔のように見ていた。彼は賈詡の前に立つと、深々と頭を下げた。

「先生……。貴方の神算鬼謀、恐れ入った」

賈詡は、ただ静かにそれを受け入れた。

敗戦の淵から一転して大勝をもたらしたその手腕は、張繡軍の将兵たちの心に、賈詡という男への絶対的な信頼と、同時に畏怖の念を深く刻み込んだ。その名は、単なる智者ではなく、戦の勝敗そのものを掌で転がす恐るべき存在として、天下に知れ渡り始めたのである。


大勝利です!まさに天才軍師。

戦略レベルでも戦術レベルでも能力の高さを感じます。


本作を楽しんでいただけましたら、ぜひ評価で応援をお願いいたします。

よい評価をいただけると執筆のモチベーションがあがります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ