92
「多分本当にひとくち食べるのがやっとですよ。前カレー作った時は甘くて苦かったですし」
「…甘くなったの?隠し味のチョコを入れすぎたみたいな?」
「いや、別にチョコとか使ってないのにそんなのになるんですよ」
「なら今度一緒に料理しようよ。私隣で見てるし」
「ぜひお願いしたいです。もくずさんが居てくれるなら絶対失敗することはないだろうし」
もくずはこっそりと頬をあげる。これでまたひとつ力哉と会う理由が増えたのだ。それは、力哉にとっても嬉しいことで力哉は顔には出さないものの内心心を弾ませていた
「あららー。若いお二人がなにか楽しそうなこと話してるみたいだね。何話してんの?」
曲の間奏の間に、声が聞こえたようで瞳がマイク越しに2人に問いかける。
「俺ともくずさんで今度…」
「歌うの難しいねって話してたんだよ。瞳凄いなーって」
力哉の声をかき消すかのようにもくずさんがそう言う。瞳は「なんだーそんなことかよー。当たり前じゃん!私は天才なんだからね!」と調子よく歌に戻っていった
「別に瞳に嘘つかなくても良かったんじゃないですか?」
力哉はコーラの入ったコップを持ちながら尋ねた
「いや…力哉と二人で料理したいなって思って…」
もくずさんの声は瞳の歌声で消えかける。だがそれは何とか伝わった。




