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「はーい杏奈ちゃん。なーんで持ってんの。なーんで持ってんの。飲み足りないから持ってんの!ヘイ!ソレ!飲ーんで飲んで飲んで飲んで!!」
手を叩き陽気な掛け声に合わせて、杏奈は水を浴びるように飲んだ。瞳のお母さんで皆、覚めた後酔い覚ましににと杏奈が水を飲んでいたところ、飲み会で使われるコールを使って水を一気飲みする流れが出来ていた。お酒ではないし、むしろ水は積極的に取った方が良いともくずさんはそれをくらげにも勧め、先に水でお腹がタプタプになってギブアップしたくらげの他二人は、一位を争うかのようにコールを掛け合っている。
「お、親分。僕飲み終わりましたよ⋯つぎは親分の番です」
「わ、私はもうシラフだから⋯ね?もくずさん?私もう大丈夫だよね?」
限界が近い瞳はもくずさんに懇願しながら目をきらめかせる。
「まぁ顔も赤くないしいいんじゃないかな」
「うぉっしゃあ!!ゴラ!!バモス!!はい杏奈ちゃんも一緒に」
「「バモス!!」」
瞳は高校球児顔負けのドスの効いた声で拳を握る。女子高生にしたら一見テンションがおかしく見えるが瞳なのでこれくらいいつものことである。その声が響いたのか奥の扉が開く。
「なあ、うっせぇんだけど」
肩ほどある黒髪のウルフの男が鋭い目つきで瞳を睨んでいた
「別にいいじゃん。友達とだし。お兄ちゃんはそんなんだから友達少ないんでしょ」
俺と瞳以外の三人はその場で立ち尽くす。瞳の言葉に兄は激昂の表情を店、舌を打ち力任せに扉を閉めた
「…お兄さん?」
「え、そうだけど」
唖然とした顔の杏奈を瞳が不思議そうに返答する
「そっか言ってなかったかも。私4人兄弟だよ」
「「え」」
もくずさんと杏奈、互いに顔を見合せて間の抜けた声が抜けた。
力哉は瞳とは気が付けばいつも一緒にいたほど長い付き合いだった。それでも兄弟がいると知ったのはかなり後のことで、中学1年生の春ごろまでは三人と同じように一人っ子だと思っていた
「お兄ちゃんが二人とお姉ちゃんが一人の四人兄弟で私が一番末っ子だよ。けど三人とももう大学卒業して独り立ちしてるから、ママが私のことばっかり可愛がってくれて実質一人っ子みたい状態なんだよ」
「じゃあ今いたお兄さんは実家に遊びに来ているみたいな感じですか?」
「いや、翔真はバンドでお金稼ぎたいらしいけど、まだ売れてないからこうやってたまに帰ってくるだけだよ。ちょっと前まではバイトとかしてたんだけど今そんなのもやめちゃって困ってるんだよ」
大量の水を飲んだおかげか瞳はだいぶいつも通りの雰囲気に戻っていた。それでも兄との関係がそこまで良好のものではないのか顔から笑顔は見えない。
「まぁやっぱり自分の夢とか追ったら大変な時期とかもあるものだからね」
空気の曇りを感じ取った力哉は無難に話を終わらせる。
杏奈は静かに水を飲んだ




