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海中もくず  作者: 椎名 園学


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「お、もくずさん一位確定だね」

瞳が笑ってそう言ってくるので怪しまれないようもくずさんも作り笑顔で返す。

その番、杏奈が回しているのを力哉は思案顔で黙っていた

もくずさんの好きな人を聞き出そうと始めたのにもくずさんがビリになることは無くなってしまい、なおかつ現時点でのビリはくらげであるものの、天国地獄マスによっては力哉がビリになって好きな人を言わなければならない可能性が出てきたからだ。ゴールまで皆だいたい同じ距離で、天国地獄マスの量的に皆一回は止まらなければならない。

ルーレットの針は9を指しており、杏奈の駒は天国地獄マスに止まった。

心臓が内側から激しく力哉に圧力をかけてくる⋯⋯カードにはこう書いてあった

「天国カード。現在順位を一つあげるだけの量の現金を手に入れる(現在1位の場合は何もしない)」

このカードを見て顔色が誰よりも早く変わったのは力哉だった⋯

このカードのせいで強制的に力哉は三位に転落した。次の力哉のターンの天国地獄マス次第では簡単に4位に転落する可能性がある⋯

健気に喜んでいる杏奈を放って置き、力を込めてルーレットを回した

安定の天国地獄マスでカードを取るとさっきとは一転灰色の素朴なカードが出てきた

「平凡マス。今の状態でゴールする」

⋯⋯一瞬このカードで場が静まり返る。力哉は静かに駒をゴールに運んだ

「⋯お、おいらの負けでやすか⋯」

「アタリマエダロ」

瞳は唇をすぼめ、目をまん丸にしながら掌であじさいをつくりくらげを嘲笑う。

くらげは紫陽花のような顔色で下を向いてい、半ばあきらめ交じりにルーレットを回した

くらげの駒は天国地獄マスに届かず「落とし物を拾ったプラス5万円」と焼け石に水程度の情けをもらった

もくずさんとの結婚で借金を抱えていた瞳は天国地獄マスで天国を引き借金がなくなった上そのままゴールとなり、残るは前ターン三位になった杏奈と絶望のくらげ。

ルーレットで杏奈は天国地獄マスに止まり「超地獄カード!!借金額が最も多いプレーヤーの借金を10倍にさせる」

杏奈そう読み上げるとくらげはゆっくり後ろに倒れて行った。

「はいよ!くらげ殿餞別でござる」

今にも泡を吹いて倒れそうなくらげに瞳はクッキーを投げる。クッキーは綺麗にくらげの頭に乗っかった

「くらげ、早く回さないならこのまま負けだよ」

「力哉⋯代わりに回していいでやすよ、結果はもう見えているでやす」

「力もうやっちゃっていいよ」

代打を受けた力哉はルーレットを回しくらげの駒は天国地獄マスに止まる。

ボックスからカードを手に取ると、カクテルを口につけ投げキッスらしきものを飛ばす女神が映っていた

「超天国カード!!持っている借金を現在一位のプレーヤーに押し付けゴールする(クリア済みのプレイヤーも対象)」

「「「あ」」」

くらげ以外の全員が口をそろえた

くらげはビリを免れ、余裕で負けることなど考えてすらいなかったもくずさんは最下位となった

しぼんでいた風船が一気に膨らみ破裂したような雰囲気に変わった

「はーい残念だけどもくずさんビリー!。じゃ約束通り好きな人発表だ!」

4人の視線が一気にもくずさんに集まる。もくずさんのいつもの白く冷たい肌が徐々に赤くなってきていた

「⋯⋯tん⋯⋯かな⋯優しいし」

さっきまでゲーム内とはいえ結婚していた瞳がにまにま「ん?もくずさん聞こえないよー?」と笑う。、まさに鬼嫁の所業。

確実に聞き取るため静かに耳を凝らして力哉は耳を澄ましていた。

「瞳おねえちゃんかな⋯優しいから好きだよ」

下を向いて恥じらい交じりにそういったもくずさんは耳まで真っ赤になっていた。

「もーもくずさんったら私のこと大好きじゃん。本当におねえちゃんになっちゃおっかな」

瞳がもくずさんの後ろに回ってハグしながら頭をなでた。

勝利に安堵したくらげと、心の中で悔し涙をながす力哉はただ二人の光景を何も言わず眺めていた

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