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「あんまり触りすぎたらもくずさん起きるよ」
「ちっちっち、わかってないねー。あえて起こすんだよ。起きて、自分がハグされているのにもくずさんはきっとおどろいて何か言う、その第一声と表情に価値があるんだよ
優しく動かしていた掌を、もくずさんの頬に移動させ摘まんだ。そのまま頬を伸ばしていく
もくずさんの表情が徐々に硬くなり、眉が曲がっていく。
「⋯⋯んーん⋯おねえちゃん、いたい⋯⋯」
「うんうんそうだよね」
寝ぼけたもくずさんの声を適当に流し、瞳はさらに頬を伸ばす。輪郭がはっきりしなくなった時、もくずさんが目を覚ました。もくずさんが口を開く前に、瞳は指を離し、さっき語った作戦のため、もくずさんいぎゅっと抱きしめる。もくずさんは目をぱちくりさせじっと瞳を見つめると、無言のまま瞳の頬をつかみゆっくり伸ばした
「痛い痛いごへん、ごへんなさい。もうしまへん」
頬が引っ張られているからか、活舌が悪い。もくずさんは鋭い目を大きく開き瞳の瞳を凝視する
「すひまへん」
そこまで言うと、ようやくもくずさんは手を離した
「そういえば杏奈は?」
自分の赤くなった頬をすりすりこする瞳にもくずさんが尋ねる。
「あー両親がたまたま今日富山に行く予定だから、富山駅で合流することになったの」
「そうなんだ」
くらげのことで忘れていたが、今思えば杏奈が来ていなかった。それで思い出す。
今日のお泊り会、力哉は杏奈と仲良くなろうという別の狙いがあった
二年の中盤から入ってきた杏奈は、期間が短いことや、杏奈が瞳にべったりでほとんど瞳と喋っていることもあり、力哉との関係は文字通り友達の友達が一番しっくりくる。
今年も残り少なく、三年生になればクラス替えがあるので、今のメンバーで揃えれるかもわからない。
それならこの機会で杏奈と仲良くなろうと力哉は静かに考えていた。と言っても、いつも瞳に「親分親分」言っているイメージしかないので、ぶっちゃけ何を喋ればいいのかわからない⋯
もくずさんや瞳と違って普通の女女した感じなのかなーということだけしかわからなかった
(何が好きなんだろう⋯⋯女⋯⋯⋯瞳が好きなのはマフィアだし、もくずさんは⋯)
ここにきて初めて考える、力哉はもくずさんが何を好きなのかそれまで聞いたことが無かった
「そういえばもくずさんって好きなものあるんですか?」
わが子のように瞳を胸に抱き頭をなでながら、もくずさんは少し悩んだように視線だけ上を向ける
「うーん、特にないかな。しいているなら友達といるときは楽しいかな。なんで?」
杏奈の好きなものを探ろうともくずさんに聞いていみたが、もくずさんにとってはいきなり、力哉から好きなものを聞かれることになる。
「あ、えーっと、秘密にしようと思ったんですけど、もくずさんのお姉さんから、近いうちもくずさんが誕生日だってのを聞いたので、プレゼント何にしようか悩んでたんです」
実際もくずさんの姉からそのようなラインは来ていた。するともくずさんは、驚き恥ずかしそうな顔で口を開く
「えーまじ、もくずさん早く言ってよー。ねえママーもくずさん誕生日みたいだからケーキ買おーよー」
「あっらーいいわねー。富山駅にいいケーキやさん知ってるからそこで買いましょう」
もくずさんが何か言うより先に、もくずさんの胸元の匂いをすーすー嗅いでいた瞳が口を挟んだ
もくずさんは少し申し訳なさそうな顔をしながら
「本当は秘密にしようと思ってたんだけどね」
「なんでですか?」
「プレゼントねだってるみたいで図々しいから。別に力哉からも何も大丈夫だよ、気持ちだけありがたく受け取っとくね」
もくずさんは嬉しそうにそう話を終わらせる。それは一年間もくずさんにとてもお世話になって、少しでも何かしてあげたい力哉にとって良いものではない。
「そういわず何かありませんか?本当になんでも大丈夫ですよ」
「うーん、あ、なら」
もくずさんは思いついたかのように、瞳を自分から離してそっと力哉の耳に近づき、
「誕生日の日、また家来てほしいな」
こっそりそう言った




