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金沢から富山駅までは短いようで、考えてみると意外と長い。加えて、瞳のお母さんは安全運転を人一倍こころがけているので、一般にくらべ役に倍ほどの時間がかる。
(いつも車で星山まで来てるって言ってたけど、一体それは何時に起きて何時に家を出ているんだろ)
多分瞳の意志ではなく、お母さんが瞳に何かあるのが怖くて自分で送りたがってるのだろう。
色々含めた瞳の労力は想像より幾倍か多いのだろう
呑気な瞳の母の鼻歌が明るいムードを醸し出す車内でくらげの隣に座った瞳は、くらげのりゅっくを母にばれないようこっそり開けていた
「お、これゴリラのマーチじゃん。あとラッキーターンも。くらげ意外とセンスあるねえ」
「あたりまえでやす。おいらのお菓子は全部おばあちゃんが選んでくれてるんでやすから」
「おばあちゃんっ子なんだ」
言葉をくらげに向けながら瞳は音を立てないよう慎重に袋を開けお菓子を口にほおる。
ゆっくーり咀嚼し、お茶で流した。
「これ一応おいらの今月分のお菓子でやすから少し残してもらえると助かるでやすが」
「できればね」
さらにさらにとお菓子をむさぼる瞳は、言葉通りできたら残すつもりなのだろう。
大型車の二列目が楽しそうにやっているのに対し、三列目のもくずさんと力哉は静かに座っていた
(さっきくらげがあんな感じだったけど、本当にもくずさんって暴力とか振ったりするのかな⋯)
目つきが鋭く、顔も男よりのイケメンっという感じだが、優しい性格のもくずさんが暴力を振るところは想像できない。
(もしかしたら、くらげにだけそんなことをしているのかな⋯)
それならくらげに問題がありそだが聞いてみない限り、想像の領域を出ることは無い。
それっぽく濁し聞いてみようと、もくずさんの方を向く
静かだと思っていたもくずさんの瞳は閉じて寝息を立てていた
「もくずさん⋯?」
起こしては悪いので聞こえるか聞こえないか程度の声で名前を呼ぶ。
もくずさんは
「⋯⋯ん⋯」
弱い声で返す、それに続けて
「⋯りりら⋯?」
「りりら?」
「⋯⋯⋯⋯りきら⋯」
寝ぼけていてもくずさんの呂律はうまく回っていない。けど、それは直感的に「りきや」と名前を呼んでいるように聞こえた
「はい、力哉ですよ」
「⋯⋯りりら⋯いつも⋯⋯ありらとう」
「⋯あ、はい」
きっと「ありがとう」と言っている。そう理解したが、
特に感謝されるようなことをした覚えはない⋯。そう考えているうちに、これは自分にではなく、「りりら」という誰かに感謝しているのではと、思い始め自分の発言が恥ずかしくなってくる⋯
(大丈夫⋯大丈夫、もくずさんは寝てるから聞こえてない⋯はず)
もういちどよくもくずさんの顔を凝視する。もくずさんは、やっぱり目をつぶり、車の振動で微かに揺れていた。そして車が山道に入るにつれそれが少しずつ強まっていく、前方に倒れそうなほど強くなったところで、もくずさんの肩に手を伸ばす。もくずさんはそのままゆっくり力哉の胸に倒れ込んだ
視線の真下に、もくずさんの頭があり、微かにいい匂いがする。
「もくずさん、起きてください」
身動きが取れなくなった力哉は懇願するようそういうも、もくずさんには届かない。もくずさんのか弱い鼻息が力哉の体に当たる。
このままでは理性を保てそうにないと確信した力哉は、意を決してそっともくずさんを両手で掴んだ
(反対側の窓のところによしかからせよう⋯⋯頼むから今目を開けるのだけは⋯)
今もくずさんに起きられたら、まるで寝ている自分を力哉がハグしてきたと思われても仕方がない⋯
起こさないようできるだけ慎重に、もくずさんを動かす。体が軽いもくずさんは簡単に動いてくれた⋯⋯が、
「あー!力、もくずさん一人占めしてる」
リスのように口にお菓子を詰める、瞳がたまたま振り向き見られてしまった
「いや、これは違くて」
「ママ、一瞬だけ車止めて」
力哉の言葉など聞かず、瞳は母にそう言い、車はすぐに停車する。
瞳は椅子を後ろに少し倒し、後ろに乗り込むと、もくずさんを掴む力哉の手をはがし、二人の間に入り込んだ
「もくずさんは私がもらうことにするよ。ママ、もう出していいよ」
「後ろに人が三人乗るのは違法だから、警察さんにばれたら誰か死ぬのよ」
「うん。力が死ぬってー」
瞳の母は笑いながら車を動かす。
(瞳のお母さんってこんなキャラだったっけ⋯)
呆気にとられた力哉を置いて、瞳はもくずさんに抱き着く。もくずさんは目を閉じたまま、
「⋯おねえちゃん?⋯」
「そうだよーおねえちゃんだよー」
瞳はもくずさんの背中に手を回し、頭をゆっくりなでる。もくずさんは静かに瞳の胸の中に倒れて行った
「力、私もくずさんのお姉ちゃんになるわ」
もくずさんの頭に鼻を押し付け「あーいい匂い。キマルるわー」などきもい顔で瞳は独り言をつぶやいた




