打ち上げ64
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喉を通る日本酒は前飲んだチューハイなどとは違い、言葉にできない苦さが広がり、思わず口が縮まる。
もくずさんやお姉さんを見るところ、二人は全然といった様子だ。お姉さんに関しては一度上げたグラスもまま、口から話すことなく一口でグラスを空にした。驚く力哉を置き去りに姉はさらにグラスに日本酒を注ぐ。微かな波紋であふれそうなほど透き通った日本酒がなみなみ注がれた
「鍋おいしいよ。力哉食べる?」
キノコや白菜が温泉につかってのぼせたように、柔らかく煮立った鍋
「お願いします」
もくずさんは皿にまんべんなく野菜を盛り付け力哉に手渡す。一人暮らしになったから野菜を全然取っていなかったので、久々の自然の優しい匂いが食欲を刺激する。
食べてみると匂いの通り、味の染みた野菜が頬を緩ませた。それを見てもくずさんは微笑んでいる
「力哉も美味しいもの食べると頬上がってるよ」
前の雑炊のことでの発言だろう。
「おいしかったのでつい」
「まだまだあるからいっぱい食べてね」
ふーふーし湯気が立つ白菜を、もくずさんは頬張る。そういうもくずさんもまた頬を上げていた
「力ちゃんって意外とお酒つよいんじゃない?」
「他の人と飲んだことないんでよくわかんないです」
「多分力哉は強いほうだと思うよ」
顔を火照らせたもくずさんが空になった力哉のグラスにお酒を注ぎながら言う。
打ち上げを何とか逃げ切れたあと、なんやかんやあって力哉は海中家での打ち上げに参加していた。
かなりお酒を飲んだので覚えていないが、確かもくずさんコーラをおごってくれて⋯⋯やっぱりそれ以上は思い出せそうにない。
何杯飲んだかは思い出せいが、頭が言葉通りふらふらしだし、思考もうまく回せない。
とにかくもくずさんが入れてくてたお酒を飲もうと、グラスを持った。
それに合わせもくずさんと姉もグラスを持ち出す。
「はーい、もう一回ーかんぱーい」
上げたグラスを皆、一口で飲み切った。
口に日本酒の苦みが広がり出し思い出す。確か鍋を食べたたあとじゃんけん負けた人がいっきでのゲームが始まって、んで⋯⋯確か途中から誰かがいっきする度にみんなでグラスを合わせて乾杯って言って、みんなでいっき飲みするようになったんだった
もくずさんもよく見ると顔が赤くなっている。それでもまだ力哉よりは大丈夫そうで、皆のグラスに次の日本酒を注ぎ始めた。
「もくすはん⋯ちょっときうけい⋯」
「えー力ちゃんいいのー?先に負けた人が好きな人発表するルールだよー」
そんなルールあったか覚えていない。まぁそういうってことはあったんだろう
それより、瞼が重くなってきた。
ふらつきを押さえようと力哉はこたつに腕を置き体を乗せた
「力哉大丈夫?」
半目で眠そうになってきたもくずさんが、力哉に寄った。その時力哉が頭をあげる。ゆっくりふわりと後ろに倒れ込みちょうどもくずさんによしかかった。いきなり触れた力哉の背中にもくずさんの目がぱっと開く。数秒後力哉の寝息が聞こえてきた
「力ちゃん寝ちゃったね」
「そ、そうだけど力哉どうすればいいの?」
「先に寝たのは力哉だしちょっといたずらしても怒られないよ」
姉は一人、その光景を見て笑いながら、それを肴に日本酒を飲む。
他人事だとお姉ちゃんはこの状況を楽しんでいるようだ。⋯けど先に来たのは力哉だし私もちょっとくらい触ってもいいよね⋯
優しい寝顔を見せる力哉にもくずさんはゆっくり手を伸ばし、そっと頭をなでた
力哉の髪はさらさらしていて撫でやすい。お酒で視界と思考がぼやけているせいか、力哉も少し朗らかな顔になったきがする。よしよし撫でる手を止め、次はそっとほほに手を近づける。赤く染まった頬をそっとつついた。
「ぷにぷにしてる」
「私も触っていい?」
「⋯ダメ」
姉はまた笑った。姉は呆れの無いやれやれといった感じで力哉の頬を触り口元が緩んでいるもくずさんの頬をぷにぷにし始めた。
「全然起きなさそうだから力哉家で泊めてっていいよね?」
姉のさわりなど気にもせず、まだぷにぷにしながらもくずさんが聞く
「前と逆だね」
「逆って?」
「前の時はもくずが力哉のところにこんな感じで倒れたんだよ」
「へ?」もくずさんは間の抜けた声で聴き返す。その瞬間さっきの姉の言葉を思い出した。
「その時力哉は渡しに何かしたの?」
「いーや。ヘタレだった。しいて言うならもくずをお姫様抱っこで布団まで運んだくらい」
耳にはいり力哉をぷにぷにしていた手が止まる。そしてだんだん体がかっと恥ずかしくなってきた
自分の中では手をつないだまでだと思ってたのに⋯⋯私お姫様抱っこ⋯
考えると余計恥ずかしくなってくる。姉は心を読んだように
「恥ずかしくなったんだしょ。ひゃーピュアピュアだね」
「⋯違うし。⋯私も力哉お姫様で運ぶからいいもん」
もくずさんはややほっぺを膨らましながら力哉の体勢を変えて持ち上げ言った通りお姫様抱っこをした。
抱え方のせいで力哉の顔が腕に寄りかかり、寝ている無防備な顔がずっとこっちを見てくる
私の寝てるもとここんな風に見られてたのかなぁ⋯
変に心臓が速くなってくるのを感じ深思考を無理やりやめる。ゆっくり膝を折って下げていき、そっと力哉を布団の中止に置いた。その瞬間頭に変な案が浮かぶ⋯⋯これって見方変えたらバックハグってやつじゃ
「力ちゃん真ん中で寝るの?私真ん中の方が良くない?りきちゃんも男の子だしさあ、お酒も入ってるし」
「あ、うん。」
姉が現実にいきなり戻したせいでもくずさんは文脈に合わずに投げつけるように答える。付け足して
「力哉はそういう人じゃないから。私が真ん中でいいよ」
まぁ力哉になら、そういうことされても⋯いいけど
さっきから変なことばかり考えすぎているともくずさんがため息をつく。姉は二人分日本酒を注いで
もくずさんに手渡した
「力ちゃんって顔可愛いよね」
「可愛いし⋯かっこいいよ⋯」




