メイド53
教室にはいると開始時間よりずっと早いというのに皆が列に並んで立っていた。
その中の中心に明美が立っている。訳の分からないままもくずが戸惑っていると力哉まで、明美の横にならぶ
「はい」
頭に血管をぴきぴきさせた明美に合わせて皆が一斉に頭を下げる
「もくずさん。すいませんでした」
ばらばらに声が鳴り、明美がもくずに近づく。明美だけもういちど深く頭を下げると
「本当にごめん。うち全然海中さんが苦しんでるって知らなくて」
「あ、うん。これどういうこと?」
ままだよく理解しきれていないもくずは顔をぽかんと、明美に尋ねる
「一番最初は昨日の帰りに力哉君が初めてくれたんだけど。学校休んだもくずさんを不思議に思って瞳に聞いたら、もくずさんがひどい目にあってるのを知って、言ってた女の人に言いに行くところでちょうどうちと会って二人で言いに行ったんだけど、なんかそいらへらへらして謝んなかったからうち、切れちゃって四月一日にチクったら四月一日もっときれちゃって「みんなで朝から集まって海中さんに謝罪しなければ単位をつけない」ってなって。本当に気づいてあげられなくてごめんね」
言い終えると明美が膝を下ろし土下座をしようとし始めたのでさすがに止める。
いきなりにただ今までのことが頭によみがえってくる。
やっぱり、力哉は優しい人だ。
明美のコールと共にまた皆が頭を下げる。
初めて参加した文化祭は想像したことのない開会式だった
男女で場所をわけ、メンズの服にに着替えていると、メンズの服よりさらに時間がかかるであろう女子の着替えを済ませた明美さんが扉からひょっこり顔をだす。着替えがまだ終えていない男子が悲鳴を上げるのを無視して明美さんが
「そこまで時間もないからぎりぎりまで力哉君がもくずさんにいろいろ教えといてもらえない?」
「わかりました。もくずさんはまだ着替えてるんですか?」
「いや前二人が折り紙やってくれた空き教室に行ってもらってるから、あと力哉君が行けばいいだけ」
女子の方が時間がかかると思っていたが、もくずさんも終わっているとなると思っているより女子のメイド服は着替えが容易なのかもしれない
昨日のリハーサルで、問題は見つかり修正されているので力哉はしなければいけない仕事はほとんどない。開幕までそこまで時間も残っていないが、この時間は色々を含めたもくずさんに集中しよう
そう思いもくずさんの待つ扉を開けた
「どうかな」
もくずさんは椅子の一つに座り、恥ずかしそうにやや下を見ながら力哉を見る
端正な黒をまろやかに包む白とで彩られたメイド服はフリフリが付いているため、逆についていないところはもくずさんのしゅっとしたラインが際立つ。
「すごい似合ってますよ」
「ならよかった」
もくずさんは満足げにそういう
「力哉も似合ってるよ。仕事ができる執事みたい」
何とか抑えようと努力するがもくずさんに面と向かってそういわれると、やっぱり頬があがってしまう
「受付と接客でセリフが違うんですけど、希望とかありますか?」
「接客にしようかな」
「接客は大きく分けて注文を受け取るのと、商品を提供するときです。前者が「ご注文お伺いします」後者が「こちら○○になります」って言えば大丈夫ですから」
「意外と普通なんだね」
「本当はもっとメイドっぽくなる予定だったんですけど、乗り気じゃない人もまあまあいたので。それじゃあやってみてもらえますか?」
そういうともくずさんはおどろいたように声を漏らす。
「今力哉にやるの?」
「恥ずかしかったら俺は廊下行きましょうか?」
「⋯いや大丈夫」
誰もいない教室でやるのはやり終わったあと、恥ずかしさが一人の教室でやまびこのように増幅する気がするので断る。だがそうはいっても力哉に見せなければならないのでこれはこれで恥ずかしいが
いや、落ち着け。セリフ自体はそんなに恥ずかしいものでもない
「ご注文⋯お伺いします」
もくずさんの頬が染まる。それを見て力哉も何か変に恥ずかしさを感じてしまうができるだけ顔を普通にたもつ
「こちら○○になります⋯。ご主人様⋯」
そこまで言い切るともくずさんは顔を完全に隠す。ちょっと力哉を驚かそうと付け加えたら羞恥がひどくつよく襲って、顔が炎のように熱くなるのが分かる
「い⋯いい感じですね⋯」
効果は抜群で力哉も顔を赤く染め上げる。互いに顔を反らす
「力哉もやってみて」
お互いの中に広がる羞恥に耐えられなくなってきたもくずさんはそう振る。頼んだわけではないがもくずさんもやってくれたので、やるべきかと思い、深く深呼吸し
「い、いらっしゃいませ⋯ご主人様」
真っ赤な顔で頭を下げる。顔が見えないのでもくずさんがどんな顔をしているのか見えない。無言が数秒続いたので恐る恐る顔を上げ見てみると、もくずさんは肩を小刻みに震わしながら口を甘く噛み必死に笑うのを我慢している様子だった
「もくずさんが振ったんですからね」
「っぷ。いい感じだったよ。可愛かったし」
「なんですか、可愛いって」
うんうんと、笑いながらもくずさんはうなずく。恥ずかしかったけどもくずさんが楽しそうなら、まあよかったと思ってしまう自分がなんだかおかしく思ってしまった




