雑炊52
言い終えると自分の瞳から涙が出ていることに気づいた。
「その、ごめんね。暗くして明日文化祭なのに」
涙を拭きいつもの顔を無理につくる。力哉はそっともくずさんの手を握った。突然のことに驚くと
「本当にすいませんでした。何もしてあげれなくて」
「い、いや別に力哉に会う前のことだから」
「それでもなんか謝りたくて」
力哉はもう片方の手も重ねもくずさんの手を握る
「これからは何が会ってももくずさんの味方ですから。何かあったら言ってください。絶対に解決しますから」
これ以上力哉を巻き込まないようにしようとしたのに、真摯な力哉の姿勢にすべて話してしまった
自分に関するいろんな偏見があっても、変わらず接してくれて、それでいてその偏見を頑張って無くそうとしてくれる。だから力哉といると自然な自分でいることができ、もっと力哉といたいと思ってしまう。
それが力哉に力哉を傷つけてしまうと知っていて、絶とうと思ったのにこの人の顔をみると安心してしまう。
「作ってきた雑炊です。よかったら食べてください」
力哉が作ってきてくれた雑炊は暖かく輝き様々な野菜が加えられてる
「ありがとう。スプーンある?」
取り皿などはあるがすくうものが無い。尋ねると力哉はスプーンで雑炊をよそいもくずさんの口に運んだ
「あーん」
そう言ってくる力哉にいたたまれなくなりながらも、小さく口を開き食べる。優しくそれでいてしっかり味が響き、思わず頬が上がった
「おいしそうで安心しました」
「なんで笑ってるの?」
なぜか力哉が私を見ながら微笑んでいる
「いや、食べてるとき頬がすごい上がっててなんていうか、可愛くて」
「⋯⋯うるさい。力哉が風邪ひいたら、その時は私が力哉の看病するから」
「もくずさんに看病してもらえるなら風邪もすぐ治りますよ」
「治っても看病するから」
「期待しときますね」と言いながらまたスプーンを運ぶ。可愛いと言われ、照れ隠しに唇を尖らせていた口もこっそり開きおいしそうに味わった
姉が帰ってくるまで力哉と話は続き風邪の症状も自然と感じなくなっていた
「ゼリーとかプリンとかかってきたけど」
「さっき力哉が雑炊作ってくれたからお腹そんなに空いてないかも」
「だからそんなに顔色良くなったのか。まったくだな~」
「力哉のラインなんで持ってたの?」
「前もくずが寝てるときにもくずラインからもらったんだよ」
「何喋ってるのかもみたの?」
「ちょっとだけ。前言ってたペンギン君早速使ってたじゃん」
「たまたま使う機会があっただけだから」
「もっとラインしてもいいんじゃない?」
「今度からするからいいの」
「お、素直になったじゃん」
認めたとこに気づき始めどんどんもくずの顔が赤くなっていく、にやにや笑う姉に何も言い返すことが出来そうになく、布団に顔を隠した
「本当に大丈夫?」
すっかりげんきになったもくずの作る朝ごはんを食べながらも姉は心配そうにもくずに尋ねる。
力哉に話して気持ちが軽くなったとはいえ何一つ解決していないので、不安と言えば不安だがここまで頑張った文化祭を陰で何かいわれたくらいで行かないでおくのはもったいない気がしていくことに決めた。
「大丈夫だよ。じゃあ行ってくるね」
「なんかあったらすぐに帰ってきていいからね。連絡くれれば私もすぐ帰ってくるから」
味噌汁をすする姉に手を振り玄関を出る。天気予報が言った通りの雨が降るまではいかないものの死んだような灰の空だった
頑張ろう。もしなんか言われてもクヨクヨしたらだめ。力哉や瞳と楽しもう
心で意思を固め拳を握る。
「あ、もくずさん」
いきなりの声に今の行動が見られていないか急に恥ずかしくなってくるが、力哉はいつも通りの顔を見せる。見られていなさそうだ
「おはよう。誰か待ってたの?」
「もくず一人だと教室入りずらいと思って」
「私を待っててくれたの?」
「はい」
「⋯やっぱり力哉っていい人だね⋯」
「前ももくずさん言ってくれてましたね」
「⋯いや、本当にすごい良い人だなって」
「なんかもくずさんに褒められるとうれしいですね」
自然に暮らす動物は冬を越すため木の実を蓄えたり巣を温めたりで、冬に近づくと町が静かになっていく。それに自然と引っ張られ二人も静かに話ながら学校へ向かった。
周りに聞こえないくらいの声は二人を特別に感じさせた。




