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海中もくず  作者: 椎名 園学


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56/70

海中もくずはきょうもつめたい51

最初の十数ページに書かれた学校ごとの校風や立地、試験傾向を見ているが本音を言えば違いが分からない。学費や通学費などもろもろを合わせて少しでも安いところを探していると、途中で姉が一つの高校に指さす

「ここスポーツとか学力とかなんでも強いところだよ。ここにすれば?」

「んんーけど他のとこより学費が高いから」

「このくらい平気だって」

「もう少ししたらおねえちゃんも大学行くんだし、少しでも安いところの方がいいよ」

何気ないもくずの一言に姉は黙りこむ。何か無意識に姉の癪に障ることを言ってしまったのではと、不安に、本から視線を外し姉を見る。姉は言い難そうに下を向きながら

「そのことなんだけどね⋯私、高校辞めたんだ」

「え、私のせいで?」

「違うよ。今までもくずに姉らしいこと一つもしてあげれてなかったから、罪滅ぼしにはならないけど、もくずのために出来ることは全部しようと思って」

「⋯ごめ」

「謝らないで」

申し訳なさについ謝罪の言葉が出そうになった口を姉は手で塞ぐ

「私が勝手に決めたことだから。やっぱりせっかく行くなら良い高校がいいからね。この星山は美男美女が多いから、もくずにぴったりだよ。多分もくずが好きになるようないい人もいるよ」

姉は執拗に星山に行くことを進める。やっぱり学費が高いことが気になってしまうが、他に「ここ」というところもないし、どうせ行くなら姉の言って欲しいところの方が良いかと結局星山中学への受験を決めた。それから一年間は勉強をメインにずっと家で過ごした

朝起きれば参考書を読むか家事をするかで起きてる時間を費やした。人との接触が極限までなかったので姉は気を利かせて毎週二回決まった日は早くにバイトを終え家に帰ってきてくれた。

あの一軒から姉は別人のように優しくなり、大好きだった姉がもっと大好きになり二人の時間を楽しみに勉強を頑張り続けた。

そして迎えた合格発表の日、もくずは星山に受かっていた。

一年間頑張ったこともあり珍しく顔に出てもくずは喜んだが姉は涙を流しそれ以上に喜ぶ。合格番号が展示された校内で周りの目など気にせず姉は力強くもくずを抱きしめた。恥ずかしさもありつつも、やっぱろもくずもうれしいので姉を抱きしめ返した

それから入学式はすぐにやってきた

「無理そうだったら帰ってきても大丈夫だからね。今日たまたま仕事休みだから」

「大丈夫だよ」

きっと姉私がうまくいくか心配で休みを取った。今日友達を作って姉にもう私は元気になったとわかってもらえば姉も仕事に集中することができる。まずは自分から話して友達を作ることだな

入学式が終ると、ホームルームの最後に中を深めるためということで担任が都合よく隣の子と喋る機会を用意した。隣の席の子はどちらかと言えば大人しめな見た目でもくずでもしゃべりやすい。

「私もくず。何て名前なの?」

「私横川 日向です。初めてで緊張してて⋯」

「あれ海中じゃん」

もじもじしゃべる横川の後ろから割り込んで誰かがもくずさんに話しかける。見てみるとそれは5年生の時同じクラスだった男だった。周りを見れば数人同じ小学校の子がいる。

「知合いですか?」

「あ、いや」

「こいつ小5の時友達殺してんだよ。それで警察に掴まって学校来なくなった。だよな海中?」

横川の問いにトラウマがよみがえり言い返せずにいると男がべらべら横川に嘘を流す。その嘘がクラス、学年に広がるまで時間はかからなかった。そんなもくずと友達になりたがるものはおらず、もくずは変わらなかった

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