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海中もくず  作者: 椎名 園学


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51/53

海中もくずは今日も冷たい㊻

それから3か月いつも、美緒は私に付きまとってきた。何かある度一緒にペアになりたがり行きも帰りも、美緒と話をしながら歩いていた

「んでね。私将来お金持ちの人のお嫁さんになりたいの。そうしたら家でゴロゴロしてるだけでいいじゃん」

「そんな人いるのかな」

「いるよーきっと。いなかったら私がお金持ちになるからいいの」

いつも似たような話を永遠に聞かされる。けど全く苦ではなく、むしろ美緒と話ったがってる自分がいるようで、美緒が風邪で休んだ日は、謎の違和感で一日どこか落ち着かなかった

「じゃあまた明日」

「またねー。あ、そうだ今度映画見に行かない?私チケットもらったから」

「いいよ。じゃあ好きな映画選んどいて」

そう言ってアパートの扉を開く、永遠に手を振る美緒に手を振り返しもくずは部屋に入った

「楽しそうだね」

部屋に入るなり姉の声が聞こえてくる。姉はぼさついた髪で付箋だらけの単語帳を睨んでいる

「あ、うん。友達」

「いいなーあんたは楽で。何もしなくていいもんね」

低く鋭い声は、まっすぐもくずに投げられる

「私この後バイト行く前にシャワーしないとだから、先速く入って」

「⋯私、あとからで大丈夫」

「っそ」

単語帳を雑にそこらに投げつけ姉は服を脱ぎだす。ここ数か月、いや美緒と仲良くなってきたころから姉は一層不機嫌な顔を見せるようになって行っていた。きっと仕事のストレスは私が考えてるよりもだいぶつらいものなんだろう。

少しでも気を楽になってもらおうと、散らかったちゃぶ台を綺麗に片づけていると、ところどころ染みた通帳が出てきた。中を開けば数字は徐々に減ってきているのが分かる。

働くことが許されていない年齢の自分は何もすることができない。

お風呂場から、微かに聞こえる姉の刺し殺すようなぶつぶつ声を、無視すれば自分だけ能天気に逃げてしまうようね気がして、バレないようお風呂場の扉に近づき、そっと耳を扉に当てた

バイトに出かける姉に「頑張って」「行ってらっしゃい」は他人事のように取られててしまうかもしれないと思い「お願いします」と言った。姉は顔をはっと驚かせさらに不機嫌な顔になった


「ねえ、もくずちゃんあの人浮気しそうじゃない?」

「いい人そうだよ」

土曜日にもかからわず、二人だけしかいなかった映画館は、実質貸し切り状態になりいつもと変わらないように美緒が話しかけてくる。他にお客さんもいないし別に良いかと、いつもより声を押さえながらも、もくずも美緒に返事をする。

「うわ、ほんとだ。いい人だ」

夫が奥さんに花束を買いに行くシーンで美緒はそういう。本当にこの人は楽しそうな人だなぁ。もくずはチケットで無料でもらえたジュースに口をつける。

映画が終わっても美緒の感想つづく。ところどころ美緒の願望が入り本編と少し違う設定もあった。

美緒の理想のタイプは一途でお金持ちだけど、幼少期お金で苦労しそれが消えず、今でも貧乏性な人ということが聞いていて分かった。貧乏性で節約できたお金を美緒は狙ってるんだろう。

本当に楽しそうな妄想をする人だ

映画から帰るとカラスが静かに鳴く夕暮れになっていた。

「ねえ、今度さ二人で金沢行ってみない?」

「電車でってこと?」

「そうそう。切符の買い方お母さんから教えてもらったから大丈夫だし」

電車の往復で約500円、多分何かするだろうしプラスで1000円、1500円⋯⋯・

収入源のないもくずは姉にその代金を求めるしかない

「金沢行ったらさ、フォーラスってとこ行ってみようよ。いろんなものあるらしいよ」

「何か買いたいものとかあるの?」

「うーん。とりあえずぶらぶら」

「なら他のとこでもいいんじゃない?」

大した目的もないなら極力お金を使わないようにしたい。なんとか安く調整しようともくずそう言う

「しいて言うなら、もくずちゃんと金沢行きたいんだ!」

「なんで?」

「もくずちゃんといると楽しいから!」

質問と答えがうまくかみ合っていない。

「私男の子だったら多分もくずちゃんと付き合ってたと思うんだよね。一緒にいると楽しいし」

やっぱり変なことを言う人だ。そんなことを言われたって、なんて返せばよいかわからない。

「だから金沢行こ!」

ランドセルが良く似合う美緒は、いつも上機嫌に頬を上げている。のんきでフットワークが軽く一緒にいるとなぜ自分まで気分が良くなってくる。けど不思議なことに美緒が他の人と喋っているのを見たことがなかった。というより美緒の私以外の友達を見たことが無かった

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