雨44
帰り道。さらに雨は強くなり、傘を持ってないもくずさんは、体のいたるところが濡れた。
雷が落ちる度、心が静かになっていくのがわかる
帰り道がいつもより長く感じた。
覗き窓すらない扉に寄りかかり、もくずさんは体育座りで座っていた。
姉が中にいるので今帰ったら、「あれ早いね。文化祭で残るんじゃなかったの?」と特に何も意図せず姉は聞くだろう。今の状態からして、うまく嘘をつけそうにない。変に勘の鋭い姉がいろいろ察して不安になってしまうのはどうしてもしたくない。雨の中もくずさんは一人、扉によしかかっていた
力哉にこの姿を見られてもきっと心配されるだろう。力哉が来る時間ぐらいになったら、それっぽく帰れば良いか⋯⋯そういえば
⋯力哉と初めてまともにしゃべった時もこんな雨だったな⋯
最初に力哉とあった時、もくずはイラついていた。
二年生になったら学費が上がると、始業式が始まる前日にお知らせで言われ悩んでいたのに、入学式では「努力さえあればすべて叶う」とお金の苦労もしたことなさそうなやつが自信をもって明言していたをイライラしていた。学校がもっと学費安くしてくれたら私もおねえちゃんも楽にいきれるのに。
そんなとき前の人がふらついて後ろに倒れそうになってきていた。いつもなら無視するか、体にあたった時点で起こすが、イライラも相まって一度だけ声をかけ、次に体に触れそうになった瞬間に周りにバレないようできるだけノーモーションで音を出さないように蹴り上げた
次に会ったあった時は路地裏だった。先生の話が終わると同時に強まったみんなの声になじめそうもなく「また今年も友達出来そうにないな」と悲しんで帰り道で吸っているところをみられた。もし学校にばらされたら今までのおねえちゃんの苦労もすべて、無駄になってしまう、そう思い焦っていたところを「おいしいんですか?」と訳の分からないことを聞いてきた。残り本数もそこまであったわけじゃないので「あげない」とだけ伝えその場から立ち去った
急いで家に帰り家のドアノブを開ける瞬間に姉の声が聞こえてきた。どうすることもできず扉にもたれかかっていたら雨が降ってきた。屋根が頭上を防いでくれたいたが風に飛ばされた雨や、跳ね返った雨がところどころ服を濡らしていた。今まで頑張ってくれていたのは知っていたが、生で聞いてみるとやはり罪悪感が沸き、申し訳なく下を下を向いていた。そんな時、またあの人に声をかけられた。
どこに行ってもいるので怖くなりストーカーと思い恐怖しているとただ上の階に住んでいる人とわかりさらに怖くなった。自分の弱みを握ったクラスメイトが上の階に住んでいる。恐怖をごまかすよう強い言葉で男を追い払うため言葉を投げつけたが、結果は姉の声が男に聞かれてしまっただけだった
そんな奴が家に誘ってきた。純粋で何も考えて無さそうな顔をしているが、姉から男は狼ということを毎日耳にタコができるほど聞かされているので、つい身構えしまう。けど逆に手を出してきたところをうまいことすればそれで脅してお金をせびれると思い言われるがままついていった。
男は驚くほど優しく、単純に親切心で助けたのだとわかった
ラインを開き力哉との履歴を見返す。ペンギンのスタンプは、姉が力哉が好きそうなものと選んだものだった。それで私もついいらないスタンプを送ってしまった。
考えれば考えるほど私は酷い人で、やっぱり力哉とは釣り合わないと自覚させられる
⋯いいかな⋯
スタンプを長押しすると「送信取り消し」とボタンが出てくる。水が頬を伝って零れていく。そっとボタンを押した。言われた通りに消えていくスタンプは、「送信を取り消しました」と跡だけ残し消える
これでいいんだ。自分にそう言い聞かせ、姉と力哉だけが入ったラインを閉じ電源を切る
黒くなったスマホの画面に、もくずさんの顔が映った。
「ただいま」
長い時間が過ぎた後できるだけいつも通りを装い、中に入る。姉は雑誌を見ながら「おかえりー」と返事をし、もくずさんを見る。
「あ、そうじゃん。傘持ってってなかったんだったね。いやーほんとごめんね」
「大丈夫」
「ちゃんと傘持って帰ってきたから明日は大丈夫だからね」
明日も学校に行かないといけないのか。嫌なことがまた頭に入ってきて、いろいろとめんどうくさくなってくる
「お風呂入る?沸かそうか?」
「いや、いいや。眠いから着替えたらねる」
適当に服を着替えると、隠れるように布団にもぐった
姉は雑誌を閉じて、頭まで布団で隠したもくずさんに視線をやる。
次の日、人間のことを事情など露知らず、天気はからっと乾いた快晴だった
キッチンには珍しく寝起きの良い姉がエプロン姿で、見ていると不安になるほど、不慣れにフライパンを握っている。しばらくして出来上がった何かを皿にのせる。
「ごめんもくず、目玉焼き作ろうと思ってたんだけど、途中でしっぱいしてスクランブルエッグになちゃった」
「大丈夫、ありがとう」
「食欲なかったら無理して食べなくても良いからね。じゃあ私もう行かないとだから。夕方には帰るからそれまでなんとか頑張って」
「⋯ごほっ⋯⋯行ってらっし⋯」
体が以上に熱く頭がぎんぎん痛い。視界はふらふら周り体もだるくなってきている
扉で心配そうな顔をする姉を、無理やりいつもの顔を作って、布団の中から見送った
扉が閉まると、静けさをより強く感じる。
食欲は無いが、せっかく姉が作ってくれたので、少しくらいきつくても食べようかと、ちゃぶ台を見ると、スクンブルエッグの隣には何か紙が書置きのようなものがおいてあるのが見えた。
だるい体を無理やり起こし、紙を見る
「ものいのが明日も続くなら、明日も休んで。無理は禁物」
その一言が書かれていた
なぜ直接言わず言葉で書いたんだろう。そう考えようとも思ったけど、頭がふらふらしてそれどころではない。手を合わせると、気力があるうちに、食事を始めた。故障と塩の入れすぎで、食べてる途中に吐き出しそうになったが、20分ほどかけなんとか残さず平らげた
拒む体に無理やり入れたせいで、食器を洗い始めると胃が妙に気持ち悪い。吐き気が上がってくるいかもしれないと感じたので手に着いた洗剤だけ洗い、皿はそのまま流しに置いておいた。
念のため程度で前買っておいた、風邪薬を飲み込み、変に生ぬるい暖かさが残る布団に体を入れ、目をつぶった




