文化祭準39
「うし、杏奈ちゃん!あいつの採寸お願いー」
帰りのホームルームが終わり、乗り気ではない生徒が帰りの準備を進める。陽のオーラから身を守ろうとすぐさま帰りの準備を終わらせたくらげに向かって瞳は指をさした
「くらげさん。文化祭で採寸しないといけないので少し失礼しますね」
明美から借りたメジャーを伸ばし、くらげの胴回りに巻き付ける。「うひぃ」
一周したところで、くらげが奇声を出す。
計測のため近づいた杏奈の耳元から気味悪い声が放たれ、思わずメジャーを緩めてしまう。くらげと杏奈互いに目があい、杏奈は逃げるように瞳のもとへ駆け寄った
「ち、違うんでやす。当たった時にビックリしすぎて」
「大丈夫杏奈ちゃん?あいつの首メジャーで絞めとく?」
「は、はい。お願いします」
杏奈は震えておびえながら瞳の裏に隠れる
「違うんでやすよ。たまたま声が出てしまっただけで」
「そっか、そっか。まさか杏奈ちゃんにまで手をだす奴だとわ」
「問答無用!」
瞳は助走をつけ、くらげに向かう、そのまま飛び蹴りを決めた
「はい、いっちょ上がり!もうこいつのサイズは適当でいっか」
あまりの衝撃に目をくるくる回すくらげ。たちあがった瞳はついたほこりをはらう。
振り向くとちょうどその光景を見ているもくずさんと目が会った
「あ、もくずさん。採寸したいんだけど今大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「杏奈ちゃんやったって」
「イエッサーキャプテン!!」
腰回り胸元、くらげとは違い静かに採寸を受けるおかげで、採寸はすぐに終わった。
「今日も力哉仕事?」
「はい、文化祭がもう近いんで忙しくて」
隣でメイド喫茶の詳細を読んでいた力哉にもくずは声をかける。着実に進んできてはいるものの、飲食物を扱うので、それらの取り扱いやメイド服の費用などに加え、乗り気な女子がさらにさらにといろいろな提案をしてくるのでいろいろと面倒な仕事はまだ片付いていない。本来はもう片方の学級委員長である瞳がサポートするはずなのだが、性格上さらに厄介ごとが増えそうなので、ほぼ一人での職務となっている
「あ、力哉君ー。今暇だよね。ちょっと折り紙つくんないといけないんだけど手つだってくれない?」
段ボールにどっさり折り紙をいれ明美が近づいてくる。これも本来なら瞳が終わらせていたはずの仕事だった。けれど未だ拭いきれない陽キャのオーラに押され引き受けれしまう。
「ほんとありがとねー。じゃあうち少しやらないといけないことあるから15分後くらいに隣のクラス集合で」
明美は嬉しそうに力哉の手を握ると、走ってどこかへ行ってしまう。さらに大きなためが漏れた
「⋯私も残ろうかな」
「いいんですか?」
それを見ていたもくずさんが微かに不機嫌そうな顔で、ボソッとそう言い近くにバッグを下ろした
「良かったんですか?バイトとか」
隣の空き教室の隅で、床に腰を下ろす。
「今日バイト無い日だから」
話ながらももくずさんは渡された説明書を片手にすでに、一枚目に取り掛かっている。説明書は一枚しか入ってなかったので、もくずさん近くに体を寄せる。折り紙を切る役割と折る役割は分担されていて内容は決して難しくない
「もうレジに立ってるんですか?」
「レジ打ちは一番最初からだったよ」
「今度買いに行ってもいいんですか?」
初めてもくずさんの手が止まる。
「んー恥ずかしいから駄目」
そう述べる言葉と顔は一致しておらず、いやそうな顔をするでもなく、頬を少し上げ手を動かしなおす。
「力哉はバイトしないの?」
「したいんですけど親が厳しくて許可出さないんで」
「なんのがバイトしたいとかあるの?」
「アパートの近くの揚げ物屋さんの看板に自給1500円って書いてあったんでするならそこですかね」
「あそこか。いつか力哉がバイトし始めたら行こっかな」
「来ないでくださいよ。恥ずかしいですし」
「こっそり行くから大丈夫」
「なんですか大丈夫って」
もくずさんは嬉しそうに笑った。
「文化祭当日も学級委員長の仕事あるの?」
「多分ないと思いますけど。あってもすこしだと思います」
「一緒に回らない?」
「いいですよ。どこか行きたい出店とかあるんですか?」
「特にってところは無いけど、なんでもいいから行ってみたいな」
文化祭が近づくにつれ、力哉の仕事は増えていき、休み時間も放課後もほとんど明美と仕事のことを考えてばかりで、もくずさんと話すのは久しぶりになっていた。静かな空き教室に二入の素朴で楽しそうな話し声が響いていた。そんな教室の扉の陰から中を覗く影が一つ
「二人ともいい感じじゃん。うち行ったら邪魔だし他の仕事してよ」
そっとその場を立ち去る。二人はそんなことに気づかないまま、何気ない話をつづけた




