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海中もくず  作者: 椎名 園学


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41/55

喫茶店㊱

星山高校から歩いてやや。東金沢端にひっそりたたずむ、老舗喫茶店「喫茶ニコニコ」

辺りに木々が並び、ほくほくと煙をあげる煙突を木漏れ日が静かに照らしていた

知る人ぞ知るそこは星山高校を卒業した老夫婦が営むこともあり星山生であることを伝えると、全商品半額で提供されるので瞳の行きつけの一つになっていた。

腰の曲がったおじいさんが、運んでくるお茶からは湯気が出ている

そっとコースターコップを置く。しわにのまれかけた目で瞳を一瞥すると

「おお、なんじゃ、瞳ちゃんか。気づかんかったわい。一か月ぶりぐらいかのぅ」

「そうだね。最近いそがしくて来れてなかったから。今日は友達連れてきたんだ」

瞳と気づくなりおじいさんは顔色を変え、笑顔で微笑みながらしゃべる。緊張からやや縮こまった杏奈は目が会うなり頭を下げた

「あらぁ、瞳ちゃんみたいにえらい可愛い子やねぇ。昔のばあさんそっくりじゃ」

「おじいちゃんがそんなこと言うから杏奈ちゃん照れちゃてるよ」

杏奈は性格故ほめられるとすぐ顔が赤くなる。ましてや可愛いなんて小学校を卒業してから言われたことがなかった

「ほっほっほ。そんでお嬢さん達は注文はきまっとるんかの?」

「いつもので」

「瞳ちゃんいつもちがうもん頼んどっさかい、どれかわからんのぅ」

「冗談だよー。えーっと、じゃあ紅茶とプリンアラモードください。杏奈ちゃんは?」

(冗談を交えながら注文する親分かっこいい⋯⋯僕も頑張らないと⋯)

「お、同じものをお願いします」

「おっけぇ。ほんじゃちょっと待っとってのぉ」

厨房に向かって「ばあさんー。プリンと紅茶二つずつ」と声高に言い、席を離れる。

ところどころ傷の入ったレジの椅子に「おっこいしょ」と腰を下ろし。新聞を持った


注文の品が届くと、瞳は喋りを終え参考書を開く。

(親分もう参考書をやってるんですか⋯⋯すごい)

そういう杏奈は勉強ができないわけではない。というより学年で見てもだいぶ上位に位置している

転校してすぐの授業にもついていけているレベルであるが、瞳は家の方針もあり学力はそれより高くいつも学年一位、二位を行き来しているので、それも瞳への尊敬に起因していた

けれど瞳の普段の行動からは知性を感じない、というより勉強で疲れて普段は頭を使わないように生きているようにもとれる

黙々とシャーペンを走らせる。紅茶から湯気が目立たなくなった頃、杏奈は背筋を改めての伸ばし、紅茶を飲んだ。紅茶のティーパックが入ったままだったので、のどを通る紅茶は渋みが強くなっていて、つい顔をしかめてしまう。

「杏奈ちゃんおでこにしわ寄っておじいちゃんみたいになってるよ」

杏奈を見て、瞳もペンを置く。顔をしかめる杏奈を見ながら大笑いで瞳も紅茶を飲む。

「苦っっっが」

杏奈よりひどく顔しかめた

「二人とも面白いのぉ」

二人の会話に起きたのか、気づけばさっきまで新聞紙を掛け布団代わりに寝ていたおじいちゃんが二人を見て笑っている

「良かったらなんかサービスしようか?」

「やったー。じゃあチョコレートパフェ二つお願い」

「僕も同じのを」

「え?」

「まかせぃ。ばあさんチョコパフェ4つ」

驚き顔で杏奈を見る瞳を、「へ?」とした顔で杏奈は見つめる

「あ、うん。何でもないや。楽しみだね」

⋯⋯杏奈ちゃんの分も注文したつもりだったのに⋯⋯

大きなグラスからあふれんばかりに乗ったチョコアイスには追い打ちのチョコソースがかけられていて、渦を巻きながら乗ったホイップにはウサギの描かれたたクッキーが座っていた。

重い油が胃を占領し、二人はヘドロのような顔で食べきった


「おいしかったね」

パンパンに膨れたお腹をさすりながら、引きつった顔で笑うと、同じくボタンがはちきれそうになりながら頷く杏奈。10月に入りこの時間でも周囲はすっかり暗くなっていた。

店から離れても東金沢自体森が近くにあるので、夜になると自然の匂いが舞ってくる

「親分どうやって帰るんですか?」

「私富山に住んでるから七尾方面の津幡駅まで電車で行ってそこから富山行きに乗り換えてだよ。杏奈ちゃんは?」

「僕は宇野気に住んでるので親分と同じで七尾方面の電車です」

「なら途中まで一緒だね」

「はい!お供します!」


金沢で働いていた人や学生の帰る時間帯と重なったこともあって、電車の中はごった返していた。

「じゃあまた明日ねー」

「お疲れ様です」

立っていた人がスマホをしまい、空いたドアを降りていく。杏奈に手を振り瞳も電車を降りた


富山行きの電車は朝よりも人が少なく、静かに電車の音だけが響く。席が空いていたので座り、単語帳を開いた。付箋が忘れがちな単語に付箋を貼っていたが、完全に覚えきる度外していき、残り1、2枚しか残っていなかった。単語帳に集中し、早くも富山につきホームを降りる。新幹線が通ってから増えた外国人達がコンビニでご飯を買っているのが見える。駅を出ると何台か車が止まっているのが見えてくる。

「瞳ちゃんー」

一番手前の車から顔を出してママが手を手を振っている

「朝はごめんね。今度からはお仕事入っても病欠使って送り迎えするからね」

「いいよ別に。久しぶりに歩いていったら楽しかったし」

「でも車に引かれでもしたらどうしようってママ心配で」

私の男っぽい性格は多分ママの過保護の反発で来てるんだろうな⋯座席に座り、いつも通りドリンクホルダーに置かれている瞳が好きなコーラを口にしながらそう思った

「あ、そういえば瞳ちゃんお兄ちゃん帰ってきてるわよ」

「え、なんで?」

「お仕事でミスしちゃったみたいで」

「ニート?」

「⋯⋯⋯こころの長期休暇みたいな感じかしら」

やや苦しそうに、不安げを混ぜながらハンドルを握った

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