力哉㉞5
「力⋯哉」
「もくずさん!」
よろめき声に反射的に力哉は叫んでしまう。ワイシャツに下着をあらわにしたもくずさんが倒れ、男がやや高ぶった様子でもくずさんを見ている。その光景に思わず心臓がはねてしまう。
男は力哉を見るなり
「お、お前なんで⋯⋯。お前さえいなければ海中さんは僕を好きでいてくれたのに⋯海中さんは、海中さんは⋯僕のだぞっ‼‼」
男は呼吸が上がり、肩が上がって下がってを早く繰り返している。
「あなたは誰なんですか?」
どう見ても普通の感性を持っている人ではないだろう⋯できるだけ刺激しないよう、質問し相手のことをしれば何かわかるかもしれない
「僕は海中さんとキャバクラで出会って恋人になったんだ。初めてのキャバクラで、しかも異性と喋ったことがなかったから緊張してたんだけど、そんな僕に海中さんは優しく話しかけてくれた。そんな彼女に一目ぼれしたんだ。お金がなくてそんなに通えなかったけど二か月に一回行く度海中さんは、嬉しそうに僕と喋ってくれて、前に話した僕の好きなアニメも見てくれてて、本当に大好きだったんだ。お店の都合で店の外でしゃべれなかったけど、「奨学金を返し終わったら勘大地君と付き合いたいって思ってる」って言われてから、ますます君に夢中になってしまって僕はためていた貯金を全部使って、親にお金を帰りて、金融にお金を借りて、僕の全部を海中さんに注いできたんだよ。そしたら「お店には内緒で」って二人でご飯も行くようになったし、Hもするようになったし、口にしていったことはなかったけど、僕たちは恋人だったんだ。
けどある日、海中さんは僕の前から姿を消したんだ、お店に聞いても知らないっていうし、ネットで調べても出てこなくて。けど僕は彼女の無事を確かめたくて、丸半年かけてやっと三か月前海中さんを見つけたんだよ。なんで制服姿なのか最初は戸惑ったけど、すぐに合点がいったよ。海中さんはギャバクラで働いている学生で、奨学金は今後必要になる額を先に稼いでるんだって。学校にキャバクラのことがばれたら大学は諦めてしまうことになるかもしれないって思って遠くから邪魔にならないように見ていたんだ。そしたらある日、海中さんが男と帰ったんだ、君だよ。大学のために必死で頑張っている海中さんを邪魔する君を必ず取り払わないと。そう思って調べてつづけてさっきようやく見つけたよ、君と海中さんの家を。さっきは興奮しすぎて忘れちゃってたけど君だったよ、害悪は。」
男は瞳をとろんと熟れさせ酒瓶を取る、半狂乱に振りかぶると、力哉に向け力任せに投げつけた。咄嗟に力哉は体を屈ませ瓶は重たく地面にたたきつけられる。破片が飛び散り中から水があふれると、変に雄たけびを上げ力哉に突進した。
対抗の姿勢を取り男の体とぶつかるが、ぶくぶく太りあげた体からなる勢いはすさまじく、取っ組み合いの形をとるも、力哉の足につんざくような痛感が襲う。
こらえる力哉の顔を見て男は勢いを上げる。唐突に頭で力哉の頭を殴った。
一瞬力が抜けた力哉を男は壁に押さえつける。そのまま腕を力哉の首に向かわせ、強く押し付けた
「お前が死ねば海中さんは僕の物。海中さん見ててね。海中さんを洗脳した悪人を今殺すから」
力が強まり、息が苦しくなってくる。視界も端からぼやけていく、
「まって、あなたが好きな海中さんは、もくずさんじゃない」
「何を言っている?下の名前は知らなかったけど僕の好きな海中さんは海中さんだよ」
「もくずさんには姉がい」
無理やりひねり出した言葉が男の耳に入ると已然首は絞めたままだがやや力が弱まる。そのまま振り返りもくずさんを見た
「いや、海中さんは海中さんだ。顔もそっくりだし。髪型が変わったくらいで僕の愛にかかればどおってことない」
「二人はそっくり⋯だけど⋯⋯⋯⋯⋯胸」
そういうと男は再びもくずさんを見る。上から下まで視線を上げ下げる
⋯⋯そこに起伏などなかった⋯⋯
「へ、確かに⋯⋯お、おいどういうことなんだ」
男はつばを飛ばしながら叱責するかのように力哉をどなりつける
現実に近いモザイクのとなった画面で、男の向こう。もくずさんは床に手をつきながらよろよろ、無理やり立ち上がる。怒りにさらに力が強くなり、息が完全にできなくっなった時、もくずさんは男の横頭を蹴りつけた
「ボッ」と音を出し男は横になだれ落ちる。姉の化粧道具が集まった場に頭から入り込み
がしゃがしゃ何かが壊れる音が鳴った
未だ透明感が低い視界でもくずさんは、ふらつき、前へ後ろへ揺れ、正面に倒れていく
うまく使うことができない体を前に走らせ倒れるもくずさんを抱きしめるように支えた
「大丈夫ですか?」
「⋯⋯うん」
「ういーただいまー。もくずーご飯できて⋯⋯⋯」
軽快に扉を開けると姉の視界に下着を見せるもくず抱きしめているかのように力哉の姿が映る。
「え、事後?いや事前か」
アルコールの匂いをまき散らしながら、姉は二人を見た
僕の愛
僕のeye




