転校生㉛
「姫ー待ってくれでやす。姫が好きそうなアニメ見つけたでやすよー」
「うんうん、そうかそうかだが断る」
エレベータを降りた途端、瞳とくらげの声が響く。逃げる瞳をくらげが追うという形で、ぐるぐる色んな所を逃げまわている。
「前のもくずさんの指人形そっくりですね」
通学途中で会いそのまま一緒に登校した力哉がボソッとそういう
「あ、あの時はちょっと酔いすぎてたから」
微かに唇を噛みながらもくずさんは目を合わせようとしない。
「ついてこないでよー。私そんなにアニメ知らないからー」
「だからおいらが教えるんでやすよー」
下の階から走りながら一段飛ばしで駆け上がった瞳は女子トイレへと逃げ込む。さすがにくらげもそのまま入る訳にはいかず、トイレに向かって大声で語りかけている。他の生徒の迷惑にならない範囲でやって欲しいものだ
四月一日先生がお年寄りな人であることもってた、クーラーの温度はやや高く、ついているのかすらわからないようなこの教室で、じんわりと皆が額に汗を流していた。
「はい、えーじゃあいきなりになってしまいますが転校生を紹介します。さ、入って」
ガラガラと引き戸が開けられショートカットの女性とが入ってきた。体格は女子と比べてもやや小柄で、緊張しているのかちらちらクラスを見ながら入り、教壇の前に行くと頭を下げた。
「清水杏奈です、東京から来ました」
声を震わせながらそう言い、〆るようまた頭を下げた。
「じゃあ、あそこの余っている席を使ってね。石川のこと全然わからないと思うし、みんな色々教えて教えてあげるように。あ、あとくらげは職員室にきなさい」
淡々とそう言い四月一日先生は教室を出る。呼ばれたくらげは、転校生よりさらに足を震わせながら後を追った
「多分さっきの瞳の追いかけっこで呼ばれたんじゃないかな」
一時間目の古典の準備をしているともくずさんが隣に立っていた。
「多分そうでしょうね、あんだけうるさかったですし」
「ほんとだよ、私教室に着いた途端追いかけまわされてたからね」
親の車で登校している瞳は親の仕事に時刻に合わせてだいぶ早くから学校についている。その時間からとなれば大体一時間ぐらい追いかけっこをしていたのか⋯。
「瞳もガツンと言えばいいのに」
「私が言ってもきかないんだよ。もくずさんが言ってよ」
「叩けば治るよ。テレビと一緒」
過去の経験か、もくずさんがそうすれば本当にすべて解決する気がする。もくずさんは冗談のようにうんうん頷くが、力哉は苦笑いを浮かべるしかできない
「あ、あの水田さん、ですよね。僕のこと覚えていますか?」
顔をあげれば転校生が目の前に立っている。いきなり水田と言われたので誰の事かと戸惑うと、隣で瞳がぽかんとした顔で転校生を見つめていた。普段瞳としか呼んでいなかった、正確には記憶にある限りすべてそう呼んでいたので忘れていたが瞳の苗字は水田であった
「うーん、わかんないや。富山であったことあったっけ?」
心当たりが無い瞳は、学校以外はほとんど富山にいるので、そう尋ねてみるも転校生は軽く首を振る。
「いえ、水田さんに先日金沢駅で鳩に襲われているところを助けてもらったんですが」
そういうと忘れていた記憶が瞳の中に徐々によみがえってくる。
夏休みも終盤に差し掛かったある日、友達とフォーラスをぶらぶらする約束があったので県外住みの瞳は遅れないようにと家を早めに出て、金沢駅で友達を待っていた時のこと。
観光客に紛れてその女はキョロキョロ辺りを見ていた。その姿に瞳が初めて石川に来た時のことを重ねていると、鳩が群れを成しその女をつつき始めた。目尻を震わせながらも必死に手で追っ払っていたが徐々に押されていき、最後には身をかがめ頭を守ることしかできなくなっていたのを、瞳が助けたのであった
「あーあの子か。まさか同じクラスになるとは」
「瞳がなんかしたのか?」
「そう!私が杏奈ちゃんをいじめる鳩を撃退したことがあってだな」
「そうなんです。助けに来てくれた水田さんは僕をかばって身代わりになってくれて」
さらに思い出した。鳩程度余裕であろうと意気込んで参戦したものの都会に住む鳩は全く任電を怖がらずむしろ返り討ちにあい、そこから一週間絆創膏まみれの生活を過ごしたことを。
そのことをもくずさんと力哉に知られぬよう、やや不自然な笑いで転校生に構える。
そんなことを全く汲み取らず転校生は
「急いでたのでお礼を出来ませんでしたが。あのとき水田さんもかなり怪我をしたと思って。もしよかったら何か恩返しをさせてもらえませんか?」
「あ、いやダイジョブだよ、ダイジョウブ」
二人に伝わらなそうで伝わりそうなニュアンスに、ビクつき早口になってしまう
「いえ、何かさせてもらえないと」
「あーじゃあ。一人やっつけて欲しい人がいるんだけど」
瞳は転校生の耳のひそひそ何かを伝える。聞き終えると転校生は。指先を伸ばし斜めにおでこにつける
「ラジャーです」
声高にそういった




