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海中もくず  作者: 椎名 園学


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30/53

宴28

あれからだいぶ飲んだと思う、「思う」と確信が持てないくらい飲んだことは確かだ

「力ちゃん見て。ちょんまげ」

姉は髪をヘアピンで限界まで横に分け、出てきたおでこにレンゲを乗せる。

見た途端ツボに入り、ふき出してしまった

「ほら力ちゃん笑った。私の勝ちだー」

「まだ私やってないし。力哉見て」

掌をピンと伸ばし真ん中でおり、右左で一つずつ乗せる

「猫」

にゃーと視線をそらし恥じらいながら猫のまねをする

「可愛いですね」

「可愛いじゃなくておもしろくしたいの、じゃあ今度は」

どこからとりだしたか、手作りのような指人形をはめ、

「「姫ー。一緒にアニメみるでやすよ。おいら、姫の好きなやつ見つけたでやす」「うんうん、そうかそうかだが断る」」

言うともくずさんはちらりと力哉を見る。笑いというよりい微笑みという顔で見つめていたので、恥ずかしさがさらにこみ上げ、目を閉じ勢いよくお酒を飲む。もくずさんの視界はくらくらしてきたがまっすぐこちらを見つめる力哉だけがはっきりと見える

「そんなに見ないで⋯」

顔を赤らめた

「もくずさんおもしろいですよ」

「もくずイイ感じだってー。なんかキャラ崩壊してるけど」

「もういいし」

頬を膨らませ煙草に火をつける、深く吸い込んだ煙が頭の中にぼんやり広がり、ぽわぽわしてくる

「俺も吸ってみていいですか?」

力哉も酔っているせいで顔が赤くなっている

「んーだめ」

「なんでですか?」

「死んじゃうからー」

声高に言い煙をふかす、力哉が煙草に興味を示し近づいていたこともあり、煙は力哉の口に吸い込まれていく

「ごほっ。ほっ」

「大丈夫?」

思わず煙草を置く

「変なところに入ったみたいで」

せき込みはすぐにおさまった。けどもくずさんが自分の服に鼻を寄せクンクンかき、席を立つ、うらふらの千鳥足で扉を開けどこかの部屋に入っていった

「どうかしたんですかね」

「服が煙草臭かったんじゃない?」

少しすると、扉が開きもくずさんが出てくる、さっきまでの服とちがいもこもことしたパジャマを着ている。そのまま力哉の隣に座り、ぼっと見つめると、近くに転がっていたビニール袋からポッキーを取り出し、袋を破く。

「これならいいよ」

もくずさんが口もとにつんつん押し当ててくるので受け取り、甘く噛む。チョコでコーティングされた先端に火をつけた。まじまじ見てくるのでそれっぽく指で挟み、ふぅーと息を吐く。お菓子なので何も感じないのは当然だが

「似合ってる」

そういいもくずさんは新しく煙草を取り出し、火をつける。浅く吸って微かに吐き出し

「お揃い」

可憐に微笑みそういった

その状況がやけに可愛く力哉も照れてしまう。


「ねむくなってぃた」

いきなりそういうので見ればもくずさんがふらつき始めている。

「おやぃみ」

手から零れ落ちる煙草は運よく灰皿に落ちる。だが運が悪いことに倒れるもくずさんは力哉に向かってきた。もくずさんの頭が力哉の胸に当たる。

「もくずさん、もくずさん寝たらダメですよ」

体を揺らして見れも微かに「んん」と聞こえるばかり。

「もくずさん寝たんですけど」

姉は目をぱちぱちさせぼーっと力哉を見ている。

「布団引くからもくず運んで。変なとこ触ったらだめだよ」

「触りませんよ」

早口で返す力哉を姉は楽しそうにけらけら笑う。少しふらついているものの、転がった空き缶を避け布団を引きに行く。その間力哉はもくずさんの体勢を横向きに変える。お姫様抱っこで持ち上げると、高校生とは思えないほどその体は軽かった。もくずさんは微かに寝息を立てる。少し鋭いいつもの瞳は、無防備にゆったり瞼を閉じていた。

「引けたよー」

とんとんと布団を叩く姉の方にもくずさんを運ぶ

「ありがとね。よーし力ちゃんは今から私と二次会だー」

姉は力哉の肩を掴み強引に席に座らせる

新しく缶を開け力哉に差し出す。受け取り姉のグラスに当てた。かりんと可愛い音が響く

「はーい、カンパーイ」

さっきとはまた違う味のそれはすっとのどを通る。グラスの中で残った液体がしゅわしゅわなっている。それが愛しく見えてきた再度グラスを持ち残ったものもすべて飲み込む。どっと頭がふらついた

「もくずってさー学校でうまくやってんのー?」

「楽しそうですよ」

「ならよかったー。もしかしたら不愛想に見えるかもしれないけど、本当は優しくていい子だから」

「知ってますよ。もくずさんと一緒にいると楽しいですし」

「実は力ちゃんのこともくずからいろいろ聞いてるんだよ」

「どんなことですか?」

「今日友達とお弁当のおかず交換したとか、友達と学校から帰ってきたとか。普段はあんま言ってくれないけど、機嫌が良い時に聞くと楽しそうに教えてくれるよ」

そういう姉も嬉しそうに語る。それを聞き力哉心の中にじんわりと何かが広がっていくのが分かる

「前もくずがパパ活したときも力ちゃんが止めてくれたんだってね。本当に何から何までありがとね。これからももくずをお願いね」

力哉は色々ともくずさんとのことを思い出し、力を強めて返事をする。返事を聞くと姉をちゃぶだいに腕をつき、嬉しそうにお酒を飲んだ


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