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海中もくず  作者: 椎名 園学


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誕生日会㉗

田舎の夜は一人で夜景のように立たずむコンビニが東京のネオンに見えてくる

吸い殻を入れるだけ。簡素に設置されたコンビニ前の喫煙所。外野から見れば虚しそうに見えるかもしれないが、本人は違う。何もし喋らず時折相手の顔を見るなどただぼんやり過ごす時間。もくずさんはその時間が好きだった

「私持つよ」

何本も缶が入ったビニール袋は重く、姉の右手をやや下げている

「大丈夫だよ。すぐそこだし」

煙草を吸い終え、吸い殻をタンクに投げた


家の目の前の信号がギリギリのところで赤になってしまい、立ち止まる

「最近もくず顔明るくなったよね」

信号の光でようやく姉の輪郭が見える。辺りが薄暗いせいか酔っているせいか

「力哉君のおかげ?」

信号ただ待つだけなのに体がふらついてしまう。やっぱり酔っているのかもしれない。それもあり素直に

「そうかも」

姉の顔を見ず答えた

「いい人に巡り合えたね。もう一人の瞳って人はどんな人なの?」

「うーん、ちょっと頭が悪いかも」

「ひどいねえ」

「けど良い人だよ。」

「もくずが楽しそうでよかった。夏休み中その人達と遊ぶ約束とかしてないの?」

「無い」

「もっと自分から行かなきゃだめだぞ。二人はどこに住んでるの?近かったら行けばいいのに」

「瞳は確か富山で、力哉は⋯」

同じアパートに住んでいるというべきか⋯。うーん⋯⋯。まぁいっか。

酔っていてうまく思考できないのもあり、顔を上げ口を開く

「あ。。。」

「あ、こんばんは」

さびた手すりに力哉がよしかかっていた

「力ちゃんだよね?何してるの?」

声をひろげ姉が力哉に聞く。呼び方の変化を指摘できるほどもくずも冷静では無い

「はい、お久しぶりです。夜ご飯を買いに行こうとおもって」

言い終えると姉はもくずさん近づいて耳もとで

「どうする?力ちゃん家にさそう?」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

黙りあれこれ考えようとするも、突然の力哉に顔が赤くなり、何が良いのかわからない。

何もわからなかったので、何も考えずそっと頷いた

「力ちゃん、うちでご飯食べてこうよ。今日私の誕生日だから豪華だよ」

「うれしいんですけど、明日の分の食材とかも買わないといけないので」

申しわけなそうにそう言う。

「だってどうする?」

「それなら⋯仕方ないよ」

瞳の色を暗くし下を向きそう答える。

「もくずが力ちゃん来ないと寂しいって」

お酒で赤く火照った頬がさらに赤くなり汗が出てしまう

「お姉ちゃん変なこと言わないでよ」

「だって本音でしょ」

本音と言われればそのとおり、何も言い返せなくなってしまう。何か返さないと、そう思い力哉を見つめ

「その、来てくれたら⋯嬉しいなって」

言葉が出た途端恥ずかしさが頂点に達し、顔をそむけてしまう。どんなふうに思われるのか⋯

心臓の響きが聞こえてしまいそうなどでかくなっている

「そ、それなら少しだけお邪魔しても」

顔を見てないのでわからないが声から、恥じらいを含んでいるのが分かる。やった

自然と笑顔が綻んでしまう

「じゃあはい力ちゃんもいくよー」

姉は階段を上り力哉の手を掴む。それが少しうらやましく思ってしまうが、すぐに吹き飛ぶほど心の中が上機嫌になっている。久々の力哉。なに喋ればいいのかな。


「かんぱーい」

姉の音頭に合わせて、もくずと力哉もグラスを上げる。ぐっと飲みきった

「おお力ちゃん初めてなのにすごいね。力ちゃんみたいな人はこういうの嫌いだと思ってたよ」

「えぇまあ得意じゃないですけど。こういう悪いことしてみたくて」

「力哉悪い人だね」

「もくずさんもじゃないですか」

「私は中学生から飲んでるからいいの」

「もっとだめじゃないですか」

「だっておいしいもん」

力哉がツッコむともくずさんは楽しそうに笑う。

「お酒バレたら学校退学になりますよ」

「二日酔いの日はマスクしていくから大丈夫」

「だからたまにマスクしてたんですか。前瞳にバレそうになってませんでした?」

「あれは危なかった。もう少しでバレるとこだった。瞳には内緒にしてね」

「いいですけどたまに勘が鋭い時あるんでバレるかもしれませんよ。あいつ素直なんで知ったら口滑らすかもしれませんし」

「そうなったら、瞳にも飲ませるしかないね」

あまりに自然でしゃべるものだから、姉は驚き黙ってただただお酒を飲む

私以外でもくずが人と喋るときこんなに笑顔を見せるのはいつぶり何だろう。

二年生になって友達出来たって聞いた時は驚いたけど、驚いて正解だった。もくずが自分からこんなにしゃべるなんて

「お姉ちゃんどうかした?」

「うんん。なんでもないよ。てか二人は同級生なのになんで敬語なの?」

姉の問いに力哉は改めて考える。いつからだろうか、いや最初からずっとか

「初めて会った時からずっと敬語ですね。なんかしっくりくるというか」

「そういえば馴れ初め聞いてないや。最初はどっちから喋ったの?席が隣だったとか?」

「えーっと⋯⋯」

もくずさんは言いにくそうに、無理やりアルコールを飲み

「最初はちょと色々あって私が蹴っちゃって」

「え。蹴った?力ちゃんを?」

いきなりに目を開かせニ、三度目をパチクリさせる。

「俺が寝そうになってる時、もくずさんに当たりそうになったみたいで。背中を」

「だ、大丈夫?怪我とかしてない?」

「一か月くらいは青い跡が残ってましたけどもう全然大丈夫です」

それを聞き、姉はもくずを睨む

「友達には優しく接しないとだめだよ」

「はい。力哉もごめん」

グラスから手を離し、頭を下げる。力哉はなんとも言えない気持ちになり

「いやいやもう治ったから大丈夫ですよ、気にしてませんし」

それでも謝るもくずさんに何を返すのが一番適切かわからず、とりあえずグラスを進め3人、ともにお酒を飲んだ


力哉の飲酒は解釈違いと思う読者の方もいると思いますが、力哉も高校生です。悪いことくらいします


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