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海中もくず  作者: 椎名 園学


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26/53

野球観戦からら二週間ほどが経ったある休み。



「じゃあ行ってくるねー。知らない人来ても開けたらダメだからね」

「はーい」

静かに返事を返し、姉は扉を閉める。高校二年生になったのに、お姉ちゃんはいつまで私を子供だと思ってるんだろう

もくずさんの煙草は基本的にキャバクラのお客さんがお姉ちゃんに差し入れるとき「妹さんにもプレゼント」という感じでもらうのをお姉ちゃんが持ってきてくれるのだが、ちょっとしたトラブルでお店が一か月間営業禁止になっていたから、最近煙草を吸っていなかった。

その禁止が開け、久しぶりにもらった煙草の箱を開け、煙草を口にくわえる。慣れた手つきで火をつけた。久々の煙に頭が少しぼーっとしてしまい、まぶたがおもくなる。続けてもう一吸いするとさらに悪化してしまい、シャーペンが手からこぼれ、おでこを押さえる。麦茶を飲み干し、煙草を灰皿に捨てた

「もったいないことしたな⋯」

煙草がまだ半分以上の長さがあったのを見て思う

また吸おうと、煙草の先端を手でちぎり箱に入れた


時計の針が9時付近であること確認して、パジャマを脱ぎだす。何年も同じものをているのでところどころボロが見えてきているが案外気に入っている。着替えが終わると台所に行き、手で水をすくう。多すぎず少なすぎず。サボテンが顔をだす小さな花瓶に優しくかけた。

姉が常連のお客さんにもらったものだが、植物に興味がない姉は水気がよさそうという理由でサボテンを

台所に置いたまま放置していた。夏の暑さに枯れそうになっているところをもくずが見つけ、水を上げ続けていくうちに体調は回復した

共に暮らしていくうちに愛着を持つようになり、図書館に行きサボテンのことを調べたりして本格的に育て始めるとある日、可憐な花を咲かせた。それからというものは、暇なときに机に持ってきてぼーと見つめたり、頭をなでるように花瓶をなでたりしていた


「行ってきます」

返事が来ないことを分かっていて扉を閉める。蝉の響きに耳をうたれ、夏の日差しに照らされて、もくずさんは東金沢駅へ向かった


長期休み前、星山高校の図書室は最大10冊まで借りることができる。先生に言われるでもなくただ図書室の入り口にお知らせが張られるだけなので、たいていの生徒は借りるどころか知ることもないが、夏休みを日増しているもくずさんにとっては最高のプレゼントだった。そのなかの一冊が今読んでいる本。昔のものなので意味が伝わりずらいが、読めなくもない。本を閉じるともう金沢駅についていた

定期ではなく珍しく買った切符で改札を通る。

今日の買い物はお姉ちゃんに見つかる訳には行けないのだ

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