帰りバス㉓
吹奏楽の演奏が止まり、話が聞き取りやすくなったせいで、試合が終わった会場が少しづつうるさくなっていく。周りと同じように力哉も瞳とどうでもいい話を喋りながら、事前に伝えられていた集合場所へ向かう
軽く点呼を行っているとき、ようやくもくずさんを見つけることができた。
「いなくなったから心配しましたよ」
「ごめん、友達のとこ行ってた」
その声に瞳ももくずさんのことに気づいたようでやってくる。駆け足で近づくと、がっともくずさんの体に飛びついた。胸元にぐりぐりする頭をもくずさんはそっと撫でる
「すぅーーはぁーー。いいだろ力。現役JKの汗の匂いだぞ」
深呼吸と変態おやじの発言に寒気がすると、さすがのもくずさんからしてもキモかったらしく、じっとジト目で瞳を睨む。がそれが逆効果となったようで、さらにすーは、すーは空気を吸った
応援と日差しで疲労がたまっていることもあり、車内は静まり返っていた。体感15分ほどすぎたころ、車内を見渡すと8割ほどの人が寝ている。
昨日よく眠ったこともあって、眠気が無い力哉は、持ってきた本を読み返していたが、乗り物酔いがひどくなってきて、ただ景色を眺める。その隣ではもくずさんが静かに本を読んでいた
行きの時と表紙は違っており、新しい本だということが分かる。もくずさんがお寿司を誘ってくれた日の朝も階段で本を読んでいたので、もしかしたらもくずさんも読書が好きなのかもしれない。
けど行きより表情が少し薄くなっているように見えるので、寝ていないだけで疲れているのかもしれない。女子はチアダンスをしたのでなおさら
そんなことを考え、ぼんやりもくずさんの顔を眺めていると、目が会う。
しおりをさして本を閉じる。周りを起こさないための配慮か、体を少し近づけて
「どうかした?」
「もくずさんって読書好きなんですね」
「面白いからね。昔の文豪とかの本だったら安いし。力哉もだよね」
「好きですけど酔ってしまって。もくずさん体強いですねチアもやってたのに」
「あれは疲れたよ。いきなりだったし」
「似合ってましたよ。可愛かったですし」
もくずさんは、「ありがと」と言い静かに微笑む。話は続き好きな作家は誰だとか、何のジャンルが好きだとか、気がつけば学校につき、アパートで離れるまで、会話が途切れることはなかった
家に着くと何より先に力哉はアニメを見始めた。最初にいったスポーツに興味がない人、力哉もその一人で今日アップロードされるアニメがあるのを餌にして無理やり元気にしているに過ぎなかった
けどいつもは時間を忘れるほど好きなアニメが全然頭に入ってこない、それよりもくずさんと話した本のことばかりを考えしまいには途中でスマホの電源をきり、会話のネタにと読書を始めてしまった
次にスマホを見たのはサングラス日焼けでパンダとなった瞳の画像が送られてくる時だった




