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海中もくず  作者: 椎名 園学


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ご注文の商品が到着します⓳

とぅんとぅるとぅんとぅん、とぅんとぅるとぅんとぅん、とぅんとぅんとぅんとぅんとぅん

ご注文の商品が到着します


メリーゴーランドのような軽快な音楽が流れ、新幹線が到着する。背中に乗せた4つの皿の先頭、マグロの上には「ワサビ抜き」と書かれた旗がさしてある。皿を取りボタンを押すと新幹線は来た道を戻っていく。重荷の外れた列車はさっきより幾分速く駆け抜けて行くが、誰もそんなことに目がいかず、目の前にあるお寿司に箸を伸ばしていた

「んんー‼ほいひい(おいしい)

旗を外して犬一番に口に運んだ瞳は目を輝かせ落ちそうになるほっぺを押さえた

「お前まだワサビ食べられないのか」

「私は食べ物本来の味を楽しみたくてあえてワサビを抜いてるんだよ。おこちゃま扱いしないでくれ」

「その通りでやす。アニメがそうであるように漫画なら漫画、ラノベならラノベの原作を一度読んでアニメを見るなり劇場版をみるべきでやす。最近の商業主義ときたら、対して人気の無いなろうを数の暴力でアニメ化し⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

瞳に賛同しながら、くらげもお寿司を頬張る。丸く切り取られ頭にチーズがかかったそれは⋯お寿司というより総菜よりなハンバーグだった

「誰だよこんなおこちゃま呼んだ奴?」

くらげの語りを背景に瞳が不機嫌そうに力哉に尋ねた


遡ること9時間前

「帰りにご飯食べに行かない?」

もくずの提案にうれしい反面、疑問が浮かぶ

「うれしいんですけど、お金大丈夫なんですか?」

いくら親族の方から援助をもらったとして、生活が苦しそうな海中家がいきなりそこまでの余裕があるとは思えない。第一そういうことなら最初から援助をもらっていればいいわけだし、それが無理だから昨日小規模ながらなんとかやっていけるだけの金額をもらったのでは、というのが力哉の考察だ。

「お金は心配しないで。その親族の人も一緒に行ってみんなのぶん払ってくれるから」

よくわからず頭を傾ける、もくずさんは目尻をあげた


「帰りにご飯行こーってなって、んでもくずさんが変に楽しそうにくらげのこと誘って。あ、そうだ。もくずさんだった。」

もくずさんが誘ったとなれば、さすがの瞳でも口を出せない。瞳は目を細め、諦めたかのように片方のマグロを食べる。

「え、ハンバーグに醤油かけるの?」

静かになったかと思いくらげの方を見てみると、テーブル端に置いてある5種類の醤油に手をのばしていた

「ん?そうでやすよ。これは革命でやす。姫も試してみるといいでやす」

「姫?」

「瞳殿のことでござる。影の世界を牛耳るおいらにここまで優しく話しかけてくれた。これはもう完全に姫でやす。瞳殿がいやと言ってもやめないでやすからね。もうXのプロフィールには⋯⋯」

眼鏡を光らせうんうんセルフで頷く。ハンバーグを食べ薄気味悪く顔をニマラせたくらげはふと隣からの視線に目をやる。おしろいを塗ったかのように白く、日陰のように冷たしながらもくずさんがくらげをじっと見つめていた。

「あ、いやその、もしいやでやしたら、全然⋯大丈夫でやすから」

発するにつれ言葉が弱弱しくなって最後の方はほとんど聞き取れなくなっていく


食べ終え静かになると、おいてあるコップに茶粉を入れ湯を注ぐ。どうぞでやすと、もくずさん、瞳、力哉の順でお茶を入れていた。前々からもくずさんとくらげは力に差があると思っていたがここまでとは⋯。それに今日はなんだか前よりもくらげが弱っている気がする。

4人の間になんだか妙な空気が流れだしたので、頼んだお寿司が来るまでの間空気を良くしようと力哉はくらげの方を向き

「そういえばその包帯どうしたの?」

朝から聞こうと思っていたが、くらげは今日頭にぐるぐる包帯を巻いている。「あ。これはでやすね」

と弱声で口を開くと

「階段から落ちたらしいよ。ね、くらげ」

小さな口でぽりぽりガリを食べている、もくずさんが割ってつぶやいた

「そうでやす」と一言くらげが肯定する

「「⋯⋯⋯ー」」

真空のように途端会話が消える。

常識があると思っていたが、くらげの援助とお寿司の奢り。さすがに実の双子に春することは無いだろうと、その可能性を潰せば残るは力で無理やり奪ったとしか考えれない⋯

実は昨日もくずさんのことを考えながら外を眺めていた力哉は見てしまった。もくずさんとバットを持ったもくずさんの姉がどこかに出かけるのを。こんな時間に野球ってわけじゃないよな⋯とか思いながらそんまま昨日は寝たが、今色んなことを考慮するとカツアゲの可能性が一番高い

学校に来れていることからそこまで重傷でないにしろ包帯を巻いているということは一撃くらいは決めたのだろうか⋯。


嫌な推測に冷やせが出てくる。新幹線が速く来るのを祈り、気まずさつぶしに好きではないガリに手を伸ばす

「私がやったわけじゃないよ」

力哉の思考読み取っていたかの如く言うので手に取っていた蓋が落ちそうになる。

「昨日くらげの家に行ったら、くらげが驚いて階段から落ちただけ。その包帯はお姉ちゃんが巻いただけだから重症でもないよ」

ぼりぼりガリを噛んでいると新幹線が遅れてやってくる

「ほんとうでやすよ」

と、かんぴょう巻きの乗った皿を取りながら同意する。さっきと違って素直にそういっているので本当にそのようらしい。⋯驚いて階段から落ちるか?とも思ったけど深追いはやめ力哉も頼んだ寿司を喫する。

「え、もくずさんおねえちゃんいたの?初耳」

体躯の時ボソッとお姉さんのことを口に出してしまい、言ってもよかったのかなあと、力哉は一人考えていたが、瞳の頭のキャパシティー上無用な心配だったらしい。いや、あの時初めて言った割には案外反応してなかったのを考えると聞き逃していたという説の方が有力かもしれない。

「うん。くらげより顔似てるよ」

「えーじゃあ絶対可愛そう。えっあ、違う。そのなんていうんだろ。面白そうとか優しそうみたいな、もくずさん可愛いから、お姉さんも美人だろうなって」

家庭事情を知っている力哉だけに危うく箸でつかんでいたしめさばを落としそうになった。言われた本人は何とも思っていないようで「私と違って人と話すの上手だから可愛いと思うよ」と何とも返しずらいことを言う

「そんなことないよ。もくずさん話やすいよ。ね、力哉」

「うん。もくずさん分かれば全然話やすいですよ。優しいですし。な。くらげ」

「そ。そんなことないでやすよね」

くらげの返事が「もくずさんは話にくい」の否定なのか力哉の発言への否定なのかは定かではないが、肯定的に受け止めたようで「()()ともありがと」と箸を置きそういった

兄弟の仲というものはやっぱり難しいものだな

ハンバーグ+刺身醤油は神です、私が試しました

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