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海中もくず  作者: 椎名 園学


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20/53

箸休め①

「ごめんくださーい。大洋配達です」

呼び鈴と同時に、配達員の声が聞こえてきた

「そういえば、フィギュア買ったんでやした。起き配にしたと思ったんでやすが」

独り言をつぶやきながら、ドアスコープを覗く、目が見えないほど深々と「大洋」と書かれた帽子をかぶった女性が立っている

「はいでやす」

好きなキャラなこともあり上機嫌に扉を開ける。見えていた女の足元に見覚えのある銀髪ウルフが金属バットを握りしゃがんでいた。

もくずさんに気を取られていると姉が勢いよくくらげ腰回りに飛びつきタックルを決める。勢いに連れていかれるまま、二人は倒れ込む

「もくず!!」

倒れ込んだままくらげの腕を絞め続ける姉が叫ぶ。もくずさんはすぐさま立ち上がり、金属バットを思い切り振りかぶった。バットはくらげの頭すれすれにぶつかり、へこんだ地面から鈍い音が鳴る

「くらげ、お金貸してくれない?」

もくずさんはバットを振り上げ、構え、くらげを見降ろしながら静かに言った

「わ、わかったでやす⋯⋯」

「本当かなー?くらげは嘘つくからなー。もくず、一発腕いっとこ」

もくずさんは、無言でくらげを見つめ、腕に力を入れる。さっきより強く振りかぶった

「貸すでやす!!!」

空いた扉から近所にも響くほどの声で叫ぶくらげの腕すれすれでバットは止まる。

恐怖からかくらげの息は上がっていた

「これでおっけーだね。さすがもくず、止めるのうまいじゃん」

「まぁね。違うこと言ってたら当たってたかもしれないけど」

「ひゃーもくずはこわいなー。じゃくらげ財布どこ?」

「コ、コンビニでおろしてくるでやす」」

現在地は人通りの少ない、市街のアパートの二階。警察署までは約一キロ。

走るのが遅いくらげでは逃げようがない

「行ってくるからどくでやす」

震える声で言うと、姉はくらげから降りながらも、怪訝なそうな顔でくらげをみる。

「逃げたりしないよね?」

「逃げたら私が当てるから大丈夫」

くらげの目のすれすれに、バットを持っていく。土の匂いが漂ってきた

「も、もちろんでやす」

しょぼくれた顔で、立ち上げる。前に姉、後ろにバットを持ったもくずさん、蒸し暑い空気で家から出た

体を震わせながら、階段に足をかける。伸ばした足の着地点には、通り雨で湿った苔が待ち構えており、くらげの右足を奪う。そのまま体制を崩し、一番下まで滑り落ちた。

「くらげ大丈夫??」

姉ははじっこにいたのでくらげをぶつかりませんでした


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