表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェンリルさん、おいしそう  作者: ひなみそら
第五話:始点
48/54

好奇心は狼を誘う

 実のつく大樹と盾の紋章を掲げる、クエルクス騎士団。普段はもっぱら、領内の警備などの治安維持を行い、何か催し物が行われるなら真っ先に駆り出される。そのため他の騎士団からは雑用騎士だの、見習い騎士団だの散々言われているが、普段から民のいざこざや事件に対して素早く対応しているため、住民の間では、イメロニア王国で最も信頼のできる騎士団として認知されてる。

 そんな栄えある騎士団ではあるが、泥臭いが売り文句である通り、実家に帰れば畑の手伝いをする農民だったり、牛飼いだったりで、とにかくお堅い雰囲気はまったくと言っていいほど無い。そのため、クエルクス騎士団管轄の兵団に入れば、農民だろうと貧民だろうと一切の偏見なしに、九割がそのまま騎士に昇格できるという、人気のある就職先として知られている。それはそのまま、人材不足という意味に繋がり、こき使われるのだが。

 それはさておき。

 数日前、ファソリで突如として発生した魔法災害に、最も早く動いたのは、やはりクエルクス騎士団だった。戦争が起こる可能性を探る方が難しいこのご時世、戦うことよりも何かしらの災害に対しての訓練を主体に行っていた甲斐があって、クエルクス騎士団は、ファソリから二つ離れた町で待機状態にあった騎兵を全て、救助ならびに援助にまわしたのである。

 先行して向かわせた団長を含む騎士の半分は、移動を補助するデュナミスの力を全力で使い、災害発生から僅か四時間後に到着、現地で陣頭指揮にあたった。さらに翌日夕方には、大量の援助物資を載せた残りの騎士団も到着し、テントの設営や炊き出し、けが人の治療を手際よく始めたのである。各々がやるべき仕事を理解していた騎士団があったからこそ、ファソリの状況はここまで落ち着いたのだ。

 そして本日、災害発生から三日目。天気が晴れ続きなのをいい事に、自分達の休む場所を後回しにしていた、クエルクス騎士団の支援に割り振られた面々は、倒壊した家屋に住んでいた住人のために夜通し大型テントの設営をし、夜明けと共に戻ってきたところだ。急ピッチで進められた作業に、全員が全員、駐屯地に戻るなり死人のような顔をして倒れて行く。冒険者や住人の前でそんな顔をしなかったのは、泥臭いなりの騎士の誇りという奴だった。

 ファソリ北東部、クエルクス騎士団の臨時駐屯地。特に敷居も無く、乗ってきた馬や荷車が並ぶばかりのこの場所で、テント設営を任された騎士の大半は、空き袋やシートを草地に敷いて、鎧を着たまま屍のようにそこかしこで転がっていた。死屍累々とはこの事である。

 そんな彼等を待っていたように、詰まれた物資の山の陰から一人の人物が、入れ替わるように起き上がり、自分の仕事を開始した。両手に水筒とパンの入った鞄を持ち、一人一人労うように配って行く。たったそれだけだが、それがその人物――ココナ・ロロンの今日一番の仕事だった。

「あぁ、ありがとうココナさん。そこに置いて置いてください」

 誰もが疲れた表情を隠して、そんな風にココナにお礼を言う。無理するような笑顔を浮かべるその理由、実はこのココナ・ロロンという人物は、クエルクス騎士団の一番の癒し要素だからだ。デュナミスかなにかで癒すのではなく、精神的癒し…俗に言うアイドル的存在だ。その影響力、ココナと関われた日には、その日一日幸運が待っているとも言われるほど。


 ココナ・ロロンの姿は一見すれば普通の人間と変わらない。銀色の跳ねるような癖のある髪に、細い体。中性的だが柔らかい顔立ちに、長いまつげが印象的。鎧の代わりに騎士団のローブを羽織っていて、普段は騎士団の経費や物資の管理、国王も目を通すという活動報告に関する書類を管理する事務を担当している。所属してまだ数年だが、仕事の覚えは早く丁寧で、完璧にこなしてくれる。ただ、よくよくその頭を見ると、そこには人にあるまじき、獣の耳が生えており、ローブの下にはフサフサの尻尾が揺れていて、普通の人、というには少し違っていた。

 ハーピーやコボルト、マーメイドなど、より獣っぽかったり下半身まるまる魚だったりする種族に比べれば、むしろかわいい部類の特徴だが、これも含め、ココナ・ロロンが周りから本人のあずかり知らぬうちにアイドルなどと呼ばれるには、ちょっとした経緯がある。

 そもそもの大前提として、ココナは人間だったのだ。


 元々、イメロニア王国の東端で羊飼いをしていたココナだが、自身の不安定な収入に不満がある、という容姿にそぐわない生々しい理由で、騎士団に志願。剣技、馬術共に優れなかったココナは当然不合格に終わった。だが、あくまでも安定した収入がほしかったため、今度は騎士団の事務員として志望。その後紆余曲折はあったが、結果的に見事に採用された。

 細事に気が回り、所属する騎士の休日や体調管理報告までばっちりしてくれるココナだったが、口数が少なく対話が苦手という欠点があった。今でも声を聞いたことが無い騎士が居るほどである。

 当時はまだ人間で、地味な眼鏡とぼさぼさの長い髪で特に目だった人物ではなかったが、陰湿な悪口を受け、悩んでいたところ、ファン一号である事務の先輩のアドバイスで思い切って髪を切り、眼鏡を事務作業のときだけするようにした。すると、素材の良さから一気に注目を集め始めたのだ。しかも、当番製の食堂の厨房に立った日には食事が別次元の良品になる事もあって、騎士団で嫁にしたい子ランキング一位に選ばれるほど。この時点で人気に火が付いた。


 さらにその火に油を注ぐように、大陸全土でも奇病とされる『獣化病(ライカンスローピィ)』にかかってしまい、人狼や狼男と呼ばれる、満月の夜に何倍もテンションがあがるという難儀な体質になってしまった。その時のはっちゃけ振りが、地味だったココナの印象をさらにいい方向に塗り替え、見事にアイドルの地位に上り詰めてしまったのである。本人の知らぬ間に。いまやイジメをしようものなら、男連中から弾圧され、逆に居場所を失ってしまうほど。

 さらにさらに、当時は気にして隠していた、人狼の特徴である『獣耳と尻尾』だったが、もったいないから隠さないで! という著名活動が発生。押し負けたココナは、帽子とスカート等のひらひらした服で尻尾を隠すことを団長の命令でやめさせられたのである。『獣化病』は最近まで伝染病と誤解されており、イメロニア王国でもこの病の印象改善に悩まされていたのだが、彼女の行動――正確には騎士団のこの著名活動は、他の患者を含めた『獣化病』の印象を改善する事に繋がった。

 本人達は一切、意識はしていなかったのだが。


 そんなココナは今回、支援物資の配給と収支の管理を一任されており、騎士団の活動内容を直接確認して纏め上げる役目を担っている。そのため、直接的な支援や指揮には関わっていない。士気には関わっているが。

 

 そんな普段は事務仕事で詰め所の後方に引っ込んでるココナは、パンと水を配るだけで注目を浴びてしまう。眠っていたのに視界の上から心配そうに覗き込んでは、パンと水を置いて行く獣耳の少女。彼女が立ち去った後には楽園でも見たかのような笑顔の騎士が、今死んでも惜しくない、といった感じに横たわっていた。必要最低限のことしか喋らないという噂どおり、何も喋ってはいないのだが、耳と尻尾の動きだけで、皆何が言いたいのかを察しているのである。脳内で都合のいいように捻じ曲げて解釈しているのがまた人気に拍車をかけている。

「ありがとうなーココナー」

「いつもわるいなーココナー」

「今度結婚しようなーココナー」

 等々、お礼を言う度にローブの下の尻尾が嬉しげに暴れ、本人も露骨に嬉しそうにするものだから、騎士連中の妄想も膨らむというもの。

 ココナ本人は基本的に騎士団に所属するまでは他人と会話をする環境が殆どなかったので、褒められたり怒られたりに慣れていない。最後のは明らかに嫌そうにしていたが。

 そんな風に臨時駐屯地を巡回するココナの前に、行く手を阻むように一人の人物が現れた。小柄なココナは、食料の入った袋を抱えたまま、目を丸くして、長身のその人をぽかんとした表情で見上げた。


「任務中失礼。今事件について何点かお尋ねしたい事がある。少々よろしいか?」


 ココナの前に現れたのは、純白の翼を持つ、甲冑姿の女性。眉目秀麗、彫像のような作られたような美しさのある彼女は、翼の飾りの付いた兜の下で、目を閉じているのではと思うほどに細い目で、ココナを見下ろしている。

 神々しさすら感じる彼女の手には、細やかな装飾の美しい一条の槍があった。武器に詳しくないココナでも、槍そのものから力強い生物を思わせる息遣いを感じる、不思議な槍だ。

 よく見れば穂先近くの宝玉から吐き出される、霞のような文字は柄の表面を滑り、槍を飾る魔法陣に吸い込まれて行く。生きているものが呼吸をするように、当たり前のように起こっている目の前の現象が、高位のデュナミスが覚醒状態にある事を示す現象だと理解し、つまりそれが臨戦態勢を意味するものだと思い出し、ココナは恐怖で膝から力が抜けて、その場でへたり込んでしまった。

 そのままぴこぴこと耳を動かす。左右非対称な複雑な動きで。

「…? 如何なされたか。さては疲労か? 無理も無い。これだけ迅速な対応をしたのだ。どれ」

 有翼の女性は手に持つ槍を両手で空に掲げる。


『光輝』

 

 短い呪文と共に、槍についた宝玉から眩い光が吐き出される。直後、彼女の足元には巨大な白の魔法陣が浮かび上がり、淡い光でその場に居る全員を包み込んだ。ココナは攻撃されたと思い込み、体を強張らせる。

 突然の事に、休んでいた騎士がざわめいたのは一瞬。次の瞬間には、魔法陣は消えており、体を地面に縫い付けていた疲労が根こそぎ消え去っていて、何が起こったのかを同時に理解し、どよめきが起こった。

 座り込んでいたココナも、事務仕事から肩こりに悩まされていたが、驚くほどに肩が軽くなっていて目を白黒させている。遅れて、それが、彼女の持つ『神聖のデュナミス』がもたらす、上位の癒しの魔法だと気付いた。


 エインヘリャルに所属するヴァルキリーだけが持つことを許される、禁制品に指定される特別なデュナミス。回復魔法については、最上位の『蘇生』が扱えるようになるという噂だ。


「今事件について、エインヘリャルでは人為的かつ重大な魔法災害と認定せざるを得ない状況である。ついては、騎士団立会いの元、参考人との面会を行いたい。代表者数名で構わないので、何名か派遣して頂けると助かる。許可を願いたい」

 注目を浴びても毅然たる態度で語るヴァルキリー。一方ココナは相変わらず目を丸くしたまま、ぴこぴこと耳を動かすだけ。ココナは今回派遣された中では唯一の事務係ではあるが、そんな権限は無いのである。お門違いもいいとこだ。

 書類が必要ならいくらでも作れるが。

「……すまないが貴殿が何を申されているのか、自分には理解が――」

「あいや待たれよ!」

 どこからとも無くそんな声が響き、鎧を着けているとは思えない俊敏な動きで、二人の騎士がココナの後ろに現れ、ビシリとポーズを決める。

「ヴァルキリー殿、こちらにおいでますココナは親しい相手にも滅多に語らぬ寡黙な人物でございます! 初対面の相手ならばいわずもがな!」

「されど心配なされるな! われ等二人が来たからには彼の人の想い翻訳してしんぜよう! 耳旗信号の翻訳なら我らココナ特別親衛隊におまかせあれ!」

 背が高く細身の、エルフの騎士と背は普通だが少しフォルムが丸い人間の騎士。完璧なタイミングの登場と、洗練された決めポーズに、周りから拍手喝采が沸く。ポーズそのものよりも、ヴァルキリー相手に堂々とやってのけた事への賞賛だ。

 ヴァルキリーもどこか感心したように頷いていた。彼女は純粋に洗練された動きを評価しているようだ。

「そうか。よろしく頼む」

「では僭越ながら!」

 二人は腕を組み、座り込んだままのココナのピコピコと動く耳の動きをよく観察する。左右複雑に動く耳を見て、一度止まった所で、エルフの方がごにょごにょと耳打ち。丸っこい方が頷き、背筋を正す。

 発言したのはエルフの方。

「ココナはこう申しております。『エインヘリャルの要請であれば断りません。手荒な真似は避けていただければ』と」

「ココナは優しいのであります!」

 ヴァルキリーは深く頷いて、あくまでもココナに視線を……目が細すぎて外観からはわからないが、確かに目線をココナに合わせたまま頷いた。

「無論だとも。ただし、犯人の捕縛については、その限りではない。これだけの災害を起こした者だ。いかな理由でも、罪は免れない」

 ぴこぴこ。

「『エインヘリャルといえど、王国領内で独断によって罪を裁く事は許しません』。だそうであります」

「引かぬココナも素敵であります!」

 丸いほうはもはや褒め称えているだけである。ヴァルキリーは気にした様子も無い。

「もとよりそれらの権限は事件の発生した土地の国に委ねられている。自分の役目は危険因子の排除だ。今回の場合であれば、危険レベルのデュナミスの回収、となる」

 ぴこぴこぴこ。

「『ヴァルキリー殿は犯人の目星がついているのですか?』であります」

「犯人がこのテント街に隠れているのならば恐ろしいこと、であります!」

 二人の、特に二人目の丸っこい騎士の発言に、周りがざわめく。ヴァルキリーは咳払い一つで裁判所の槌を打ったように静寂を取り戻した。間を置いて、声を染み渡らせるように静かに言う。

「自分の調査では今事件では犯人と言えるようなものでは無いだろう。兎に角、話を伺うにあたって、騎士の同伴を願いたい。早急な対処が必要だ」

 …ぴこぴこぴこ。

「『わかりました。団長の方には私から報告しておきます。ではこの二人をご自由にどうぞ』って自分でありますか!?」

「自分もでありますか!?」

「感謝する。ではお二方、よろしく頼む」

 一礼して、背中を見せて歩み去っていくヴァルキリー。その後ろを、二人の騎士がうぇーいと付いて行く。ココナと離れたとたん、かなりやる気の無い感じになってしまった。

 頭の中で組み立てていた言葉は圧倒的に知性の足りない感じでどぎまぎしていたが、ココナはうまい事言いたい事をまとめてくれた二人に感謝した。二人はそんな気配に気付いたのか、親指を立て、高く掲げて、これから帰れない戦場にでも行く戦士のように、有翼の美女の後を付いて行った。背景が白んでどこか神々しく見えたのは、間違いなく錯覚である。

 本来であれば後に必要な書類のためにもココナも立ち会うべきなのだが、あの二人が報告書をまとめてくれればそれでいい話である。普段から仕事の手伝いをしてくれている二人なら、不備も無いだろう。

 ようやく、神に近い種族が持つ、圧倒的なプレッシャーから解放されたココナは、深く息を吐き出して、この件に関する書類を作ろうと思った。しかし、立ち上がろうとして、一つの事に気がつき、顔を青ざめさせた。

 いや、まさかと首をふるふると振って、そのまさかが起こっているようで、今度は顔が赤くなった。

 股下が冷たかった。こっそり触って確認して、目元に涙が浮かんだ。元々田舎どころか、言葉を交わす相手もいない環境で育ったココナは、メンタルが強いとは言えない。自覚しているが、まさか、である。

 前を開けていたローブをしっかりとあわせ、誰にも気付かれないように、彼女はこっそり着替える場所を探す。テント街や物資の陰はだめだ。テントは組み立てる度に使用する者が決まってる。騎士団用のテントはまだひとつも出来ていない。今日から着手する予定だ。

 と、ココナは辺りを見回して、すぐによさそうなポイントを見つけた。西に見える森。ついでに川でもみつけて、洗濯をしようという魂胆である。ファソリの西には川があったはずだ。きっと森から流れているものだ。長期滞在を見越して着替えも持ってきているし、水浴びして汗を流すのもいいだろう。実際に体を動かしている皆ほどではないが、ココナも夜通し情報整理で働きづめだったのだから、それくらい許されるはず。

 そうと決めたココナは、自分の荷物を持って『見回り行ってます』の書置きを残し、森へと足を向けた。ついでに耳旗信号がわかる相手に、『団長にさっきの事報告しておいてください』と伝える。疲労が回復していた騎士は、敬礼をしてすぐに団長を探しに走って行った。

 これでひとまず安心。ココナはテント街の北を回り込むように、森を目指して行く。歩く度にあまり心地よくない感じがするが、そこは我慢である。

 小走りで走っていくと、二人組みが街道から逸れて草原を歩いていた。散歩だろうか、と特に気にしなかったが、十分離れた距離から、ココナの狼の耳には二人の会話が聞こえてくる。


「あのローブ、とっとと騎士団に渡した方がいいと思うんだけどさ。おれっちは」


 騎士団、という言葉が聞こえて、びたりと足を止めた。

「あのハティとか言う奴が何者なのか知らねーけどさ。下手に嗅ぎ付けられる前に渡さねーと、捕まんのはシトリだろ」

 踏み出した足をそのまま巻き戻して、ココナは背中を見せるゴブリンとオーグルの会話に耳を傾ける。

「なんだよ、うかねー顔だな。何か気になることでもあんのか?」

 ゴブリンの言葉に、俯いていたオーグルは頭を振った。

「別になんでもないわい。エインヘリャルが気付くのも時間の問題だしの。こちらから先に声をかけた方が良いじゃろ」

「うし、なら決まりだな。んじゃおれっちは騎士の駐屯地行くからさ、お前は逃がさないように見張っててくれるか?」

「…ハティに言わなくていいのかの?」

「言ったら逃げられんだろ。可哀想だけどさ、この先はあいつがなんとかするっきゃ無いだろ」

 ゴブリンとオーグルの会話はココナには理解できなかった。しかし、なにやら無関係でもなさそうだ。

 エインヘリャルが関係している、となると、やはり事件について関わっている……いや、会話からしてもう、なんか、犯人と関わってる的な感じだが。

「…そうじゃのぅ。おんは少し気になる事がある。お前さんも少し、間を空けてからにしてくれんか」

「あ? お前がそう言うんならそれでいっけどさ。昼前にはおわらせっぞ」

「……十分じゃ。ではまた後での」

 オーグルとゴブリンはそこで別れ、ゴブリンはテント街のほうへ、オーグルは森の方へ歩き始めた。ココナはとっさに岩の陰に隠れ、すぐ近くをゴブリンが通っていく様子を気配を殺して見届けた。

 今すぐ報告に行くべきか、それとも二人のうちどちらかを追うか、ココナは少しの間悩んでいた。このまま放っておいてはいけない気がするのは確かで、ゴブリンはどうやら騎士団に用があるらしい。となれば、今、自分が行くべきはオーグルの方である。

 森の方にある、昨夜出来上がったばかりの大型テントの方へ向かって行くオーグル。使用の申請をしていたのは、家屋が倒壊して住処を失った住人のはずだ。名前まではわからないが、あのオーグルはこのファソリの住人らしい。

 ココナは距離を置きながら彼の後を追い、入っていったテントの裏側に周る。木箱の陰に隠れ、内側から影でばれないようにして、息を殺した。


 やがて会話が始まり、ココナは自分が森の方へ何しに来たのか忘れるくらい、驚かされる事になった。


 そしてこれが、彼女の人生を変えるきっかけとなってしまったのである。


ヴァルキリー(ワルキューレ)は翼が無く天馬に乗って空を翔るそうですが、今回出てきたヴァルキリーさんは翼があります。


*次回更新は7/12(火)を予定しています。ずれる可能性はありましたが、問題ありませんでした。よろしくおねがいします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ