初夏のフェンリルさん
最初にアーデインに買ってもらったサンダルはベルトを締めると多少は足の大きさに合わせられるもので、多少大きくても関係はなかった。けど、指先が出るのはやっぱり切り傷を作ってしまうので、後日足のサイズに合った革の靴を買ってきてもらっていた。足先などの一部に鉄板が仕込まれてるそれは旅暮らしの冒険者にも使われているようで、スマートな形でも十分に旅の安全を保障してくれていた。
着る物は適当なものを適当な組み合わせで着たんだけど、クライエンに「せっかくのおでかけなんじゃから、もっとおめかしせい!」といわれてしまった。よくわからないからクライエンに聞いてみたけど、彼もよくわかってなかった。服って難しい。
二人で試行錯誤したけどやっぱりだめで、いっその事クライエンの知り合いをまねしたら? という話になった。
「…………ほう」
そうして出来上がった女の子は、クライエンがそんな声を出すほどの仕上がり。
袖の無い、肩が出る白の服。あまった布をまわしました、みたいにボタンまわりになんだがふりふりが付いている。下はグラデーションの利いた優しい白と空色の長いスカートで、足首近くまで覆えるゆったりしたもの。頭には底の浅い丸いツバの帽子を被って、首には黒曜石の水晶のネックレス。深い雪の色をした薄水色の髪は首の後ろで一つにまとめて、仕上げに肩から鞄を提げればできあがり。
「これぞ初夏の美少女じゃ!」
腕を組んだ姿でいきなり叫んだ。怖い。
「むー…腕は涼しいけど、このスカートとかいうのなんか変な感じ」
「だめじゃ。その長さだからいいんじゃ。短いのもいいかもしれんが長いのがこの季節に合うんじゃ。髪色も相まって見事な清涼感を演出しておる」
意味不明。きっとその感想には個人差が出ると思う。さっきまで悩んでいた彼はどこに?
「ま、いいや。そろそろ行こう? すごく遅くなったみたい」
「あいやまたれい!」
先に外に出ようとしたら引き止められた。
「日焼け痕が良いという輩も世にはおられるものの、我思うにその白き美しき肌は日差しの下で白くあり続けるからこそ価値があると我は思う。故にフェンリル様にはこの日焼け止めを使っていただきたい所存」
へへーっと恭しく膝を突いて差し出される一本のボトル。あまりのわざとらしさに、私は思わず後ずさりしてしまった。
「クライエン今日どうしたの? なんかおかしい…」
「ばはは、何をおっしゃる。おんはお前さんの肌にクスミが出来るのを想像したくないんじゃ」
ずい、と差し出されるボトル。私はさらに一歩下がった。
「に、ニンフだから基本的にそういうのは出てこない、と思うけど」
私がニンフだというのはまだ仮説でしかない。体が成熟してないだけの人間の可能性だってあるけど。
「でも日焼けはするじゃろう? さぁ」
ずずい。私はまた一歩下がる。
「あの、フェンリルは太陽なんかに負けない」
「今の時代の太陽は手ごわいですぞ? さぁ」
ずずずい。私は一歩――下がれない!?
壁際まで追い詰められた私は、なぜか乳白色の液体を手の平に出して、手伝う気満々のクライエンから逃げようと「んー」と壁に体を押し付ける。でも無理。魔狼だったら壊せそうな壁も、今の私じゃびくともしなかった。前を見れば、真剣な表情をする優しいオーグルがいる訳で。
「さぁお手をお出しください」
無表情だけどものすごい気迫だった。
「………ひゃい」
私は堪忍して素直に手を差し出した。それから大きな手で両腕の付け根まで日焼け止めを丁寧に塗ってもらうのだけど、なんだかすごく恥ずかしかった。手とか指先とかくまなく触られるのは、変な感じ。
おもちゃを手に入れたら私も同じ事してやる。そう決めた朝の出来事。
ポルタの衣装ころころ変わっちゃいます。作者にセンスがあるわけではないので、皆様の頭の中で大体こんな感じと細かいところは補完してください orz




