第65話(再構成):兄バカ全開! 妹ルナへの溺愛と知育カードの全国流通
妹の誕生から数ヶ月。我が家のシスコンお兄ちゃんの暴走は、とどまるところを知らなかった。
「ママ、見て! 今、ルナが『あぅ、ばぶ』って言ったよね!? これ、絶対に『レオお兄ちゃん世界一愛してる』って言っているんだよ! ああ、なんて聡明で可愛い僕のルナなんだろう!」
現在、3歳と数ヶ月になったレオは、ベビーベッドの横にぴったりと張り付き、アメジストの瞳をこれでもかと輝かせて熱烈な超絶翻訳をかましていた。
「レオ、それはさすがに親バカならぬ『兄バカ』が行き過ぎだわ。ルナはまだ喃語をおしゃべりしているだけよ」
私が苦笑しながらスマホでルナの健康ログをチェックしていると、隣で同じようにベビーベッドをデレデレとした顔で覗き込んでいたギルバートが、真剣な顔で頷いた。
「いや、ユキ。レオの言う通りかもしれない。ルナの魔力波形は今、明らかにレオの空間魔法に心地よく同調している。将来は兄妹で素晴らしい魔法の連携を見せてくれるに違いないぞ」
「(……はいはい、パパまで一緒になってルナを甘やかさないの……)」
私が呆れつつも幸せな溜息をついていると、部屋の扉が華やかに開いた。
「お姉様! レオ様! 皆様お揃いで! 本日はついに、お姉様が設計し、ハンスさんたちが量産した『ひらがな知育カード』の全国流通記念パーティーの日ですわよ! 早く主役のルナ様のお着替えの仕様もチェックさせてくださいまし!」
エプロンを脱ぎ捨て、見事なドレスを翻して入ってきたのはエレノア王女だ。彼女も今や、すっかり我が家の敏腕マネージャー兼シッターとして欠かせない存在になっていた。
◇◇◇
王宮の大広間は、色とりどりの光の魔法で飾られ、溢れんばかりの熱気に包まれていた。
今回のパーティーには、国内外の貴族だけでなく、教育関係者や、開発に協力してくれた職人連合の面々も招待されている。
「お嬢様! やりましたよ! 全国の託児施設や一般の家庭から、カードのおかげで子どもたちが楽しく言葉を覚えていると、ものすごい数の感謝の便りが届いています!」
ハンスさんが大きな祝杯を掲げて、嬉し涙を浮かべながら駆け寄ってきた。
「本当にハンスさんたち職人連合の技術力のおかげよ。子どもの安全を第一に考えた特殊魔導圧縮紙の仕様が、バッチリ噛み合った成果ね。ありがとう」
私が微笑んでお礼を言うと、ハンスさんは恐縮しながらも誇らしげに胸を張った。
「ユキ、本当によくやったな。お前が前世の知識を活かして作ったこの知育玩具は、我が国の未来を担う子どもたちの大きな力になる」
ギルバートが私の肩を優しく抱き寄せ、アメジストの瞳に深い愛と尊敬の光を宿して見つめてくる。
「あらあら、ユキ! 本当に素晴らしいお披露目パーティーですわね!」
「うむ、我が娘ながら、教育の分野にまでこれほどの変革をもたらすとは、さすがアラカルト家の誇りだな!」
会場の向こうから、お母様とお父様が豪快な笑顔で歩いてきた。お父様の纏う圧倒的な覇気に、周囲の貴族たちがサッと道をあけていくのは相変わらずの光景だ。
「おじい様、おばあ様。ようこそ僕たちの祝福の空間へ」
その時、レオがルナの乗った豪華なベビーカーを優しく、かつ完璧な足取りで押しながら、みんなの前へと進み出た。ちっちゃな体をピシッと伸ばし、片手を胸に当てて完璧なドヤ顔挨拶をキメる。
「ほら、僕の可愛い妹のルナも、おじい様たちに会えてとっても嬉しそうだよ。……まぁ、会場のどんなきらびやかな装飾より、僕とルナの美しさの方が完全に勝ってしまっているけれどね!」
「ハハハ! 相変わらず凄まじい自信だな、レオ! だがその通りだ、お前の作ったカードのおかげで、ルナもすくすくと賢く育つだろう!」
お父様がレオの頭をワシワシと撫回し、お母様もベビーカーの中の赤ちゃんを見て「なんて愛らしいのかしら、ルナちゃん!」と目を細めている。
『ふん、主よ。会場の料理も最高だな。これならルナに空間魔法の基礎を教えるためのエネルギーも十分に補給できるわ』
子犬の姿のランが、私の足元で高級お肉を器用に食べながら、満足げに念話を送ってきた。
元システムエンジニアの知識から始まった、私の異世界ハッキング育児ライフ。
他国の陰謀や魔力封じの危機を乗り越え、気づけば私の隣には、最愛の過保護な旦那様と、天才でちょっぴりナルシストなシスコンお兄ちゃんのレオ、そして新しく生まれた可愛いルナ。さらに、頼もしい実家の両親や、忠実な妹分のエレノア、職人たちという、最高の「過保護ネットワーク(家族)」が構築されていた。
「よし、みんな! これからもルナと一緒に、新しい幸せのプログラムをどんどん世界にリリースしていきましょう!」
私の言葉に、レオが「イエス、マイ・マザー!」とちっちゃな指をパチンと鳴らし、ベビーカーの中のルナも「あぅ!」と元気よく応えるのだった。




