第64話:ようこそ、僕の可愛い妹! 最高の対面とシスコンお兄ちゃんの誓い
「おぎゃあ! おぎゃあ……!」
王宮の一室に、元気いっぱいで透き通るような赤ちゃんの産声が響き渡った。
外の庭園では、その誕生を祝福するかのように、純白の聖なる光の粒子がキラキラと舞い踊っている。
「――おめでとうございます、ユキお姉様! 誰もが羨むほどに美しく、元気な女の子ですわ!」
つきっきりでサポートしてくれていたエレノアが、感激のあまり大粒の涙を流しながら、綺麗に布で包まれた小さな赤ちゃんを私の元へと運んでくれた。
「……ハァ、ハァ……。よかった、無事に生まれてきてくれたのね。ようこそ、私たちの可愛い赤ちゃん」
寝台に横たわる私の胸元に、そっと赤ちゃんが抱かれる。まだちっちゃくて、壊れそうなほどに柔らかい我が子。スマホの生体ログをスキャンするまでもなく、その小さな体から優しく溢れる聖魔力が、母子の絆を証明していた。
「ユキ……! 本当によく頑張ってくれた、ありがとう……!」
部屋に飛び込んできたギルバートが、見たこともないほどに涙をボロつかせ、私の手と赤ちゃんの小さな手を包み込むように握りしめた。外では冷酷無比な王太子として恐れられる男が、完全に感動でボロ泣きしている。
「パパ、ママ……。……あの、僕の妹、見てもいい……?」
部屋の扉の隙間から、レオがちっちゃな体を縮こまらせて、そわそわと中を覗き込んでいた。その手には、この数ヶ月間、ハンスさんの工房と通信を重ねて自作した、妹のための『光るどうぶつ合わせカード(ひらがな版)』がぎゅっと握られている。
「ええ、もちろんよ、レオ。おいで。あなたの大切な妹よ」
私が優しく声をかけると、レオはトコトコとベッドの脇へ歩み寄り、背伸びをして私の胸元の赤ちゃんをじっと見つめた。
いつもなら「僕の次に美しいね」なんて軽口を叩くはずの天才ナルシスト児が、初めて見る妹の小ささと愛らしさに、完全に言葉を失ってアメジストの瞳を丸くしている。
「……ちっちゃい……。ママ、この子、僕のおてての半分くらいしかないよ……」
「そうよ、レオ。あなたが守ると約束してくれた、世界一可愛い妹よ。……さあ、お兄ちゃん。用意したプレゼント、渡してあげたら?」
私が微笑むと、レオは緊張でちっちゃな体をカチコチに硬直させながらも、お腹にいた時と同じように優しい光の魔法を指先に灯し、自作の知育カードを赤ちゃんの小さな手のひらの近くへとそっと差し出した。
「はじめまして、僕の可愛い妹。……僕は君のお兄ちゃんのレオだよ。君が早くお勉強できるように、世界一完璧な僕が、この特別なカードを作ってあげたんだ。はい、どうぞ……!」
レオがカードを差し出すと、生まれたばかりの赤ちゃんが、きゅっとちっちゃなおててを伸ばし、そのカードの端を一生懸命に握りしめた。
その瞬間だった。
ピキィィィィィィン……!
レオの空間魔法が込められたカードが赤ちゃんの魔力に反応し、部屋の天井いっぱいに、優しく光る動物たちの幻影がフワフワと映し出されたのだ。
「う、あうぅ……」
生まれたばかりの赤ちゃんが、その光のダンスを見て、まるでお兄ちゃんへの感謝を伝えるように、ちっちゃなお口をすぼめて可愛らしく微笑んだ。
「……あ、あ、ああ……っ! ママ、パパ! 今、僕の妹が、僕に向かって笑ってくれたよ! 僕を『カッコいいお兄ちゃん』って認めてくれたんだ……!」
レオは顔を真っ赤にして大興奮すると、感動のあまり目にいっぱいの涙を溜めて、そのまま赤ちゃんの小さなおててに自分の指をそっと絡ませた。
「決めた。僕、今日から自分の自分磨き(ナルシズム)の時間を半分削って、この子のために全部使う! 妹が大きくなって悪い男に騙されないように、僕が最強の空間魔法で世界一過保護に守り抜いてあげるんだから……!」
「ハハハ! 言うようになったな、レオ! よし、俺とレオの2人で、この子に近づく不届き者は国ごと闇の底へ沈める(一括削除する)体制を構築しよう!」
「(……あ、アカン、過保護とシスコンの永久ループ(無限ループ)が完成しちゃったわ……)」
私が頭を抱える横で、エレノアも「ああっ、麗しき兄妹愛ですわ……! 私も全力でお手伝いいたします!」とハンカチを濡らしている。
『ふん、主よ。これで我が家の賑やかさの仕様も、さらにバージョンアップしたな。我の背中に乗る特等席を、このちっちゃな妹に譲る日が今から楽しみだわ』
足元でランが、嬉しそうに尻尾をブンブンと振って念話をしてきた。
恋の嵐も、他国の陰謀も、そして初めての出産の壁も。
私たちの前では、すべてが新しい幸せをリリースするためのプロセスに過ぎない。
世界一頼もしくて(ちょっぴりナルシストな)シスコンお兄ちゃんのレオを筆頭に、私たちの最強過保護ネットワークは、新たな家族を迎え入れて、これからもどこまでも幸せに、無敵に突き進んでいくのだった。




