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王子の心を溶かすのは・・・?〜孤独だった元OL、異世界で最強聖女になって公爵家に溺愛され、呪われた不器用王子を無自覚に救っちゃいました〜  作者: S@Y@


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第59話:天才幼児はナルシスト!? 3歳のレオと新たな日常の幕開け


あのグラシエ要塞の決戦から、早いもので1年半の月日が流れた。


「――鏡よ鏡、この世で一番美しくて、かつ完璧な術式を組めるのは誰かしら? ……ふふ、答えるまでもないよね。僕に決まっているもの」


王宮の大きな姿見の前で、自分の流れるような美しい髪をちっちゃなおててでサッと掻き上げている男の子がいる。

今年で3歳になった、我が愛息のレオだ。


パパ譲りの妖艶なアメジストの瞳を輝かせ、ちっちゃな体で完璧なモデル立ち(カーテシーの応用ポーズ)をキメているその姿は、一言で言って「3歳にして完成されたナルシスト」だった。


「ちょっと、レオ。鏡に向かって自分を口説くのはそこまでにして、早くお着替えしちゃいなさい。今日はおじい様とおばあ様が、新しい魔法具を持って会いに来てくれるのよ?」


私がスマホを片手に呆れ半分、可愛さ半分で声をかけると、レオはふっと不敵な、これまたパパそっくりの大人のような笑みを浮かべて振り返った。


「ママ、慌てないで。美しさと完璧なドレスコードには、それ相応の時間が必要なんだよ? ――ほら、僕にぴったりな服は、もう自分で『お取り寄せ』してあるから」


レオがちっちゃな指先をチッと鳴らした、その瞬間。


ピキィィィィィィン……!


クローゼットから、レオが事前に選んでいたお気に入りのフォーマルな子供服がフワリと宙に浮き上がり、彼の体を包み込むように自動で装着された。ボタンの留め直しも、リボンの結び目も、すべて寸分の狂いもない完璧な空間魔法(自動着替えシステム)によるものだ。


「……うん、今日も僕の魔法は完璧だね。なんて罪作りな才能なんだろう」


満足げにポーズを取る息子を見つめながら、私は心の中で「前世のブラック企業にこの自動化マクロがあったらなぁ」と遠い目をしつつ、エンジニアとしての本能で彼の魔力ログをスキャンした。


【――レオ・アラカルト(3)魔力測定:規格外(測定不能)。空間操作魔術、自己常駐展開を確認――】


(……うん、3歳にして自分で生活魔法をマクロ組して自動化してるとか、本当に天才を通り越して魔王の領域に片足突っ込んでるわね)


「レオ! ああ、今日も我が息子は世界一美しく、そして聡明だな……! その完璧な着替え魔法、さすがは俺の血を引くだけはある!」


リビングの扉を開けて入ってきたギルバートが、案の定、限界突破した親バカ全開の笑顔でレオを抱き上げた。外では冷酷無比な王太子として恐れられている旦那様だが、家の中では完全に息子のファンクラブ会員第1号である。


「パパ、ハグは嬉しいけれど、僕の完璧な髪型が崩れてしまうよ。……まぁ、パパの次に美しい僕だから、多少の乱れもセクシーに見えてしまうのが困りものだけどね」


「ハハハ! 言うようになったな、レオ! 実に素晴らしい自信だ!」


「(……ギルバート、少しはツッコんでよ……)」


私が心の中で盛大に頭を抱えていると、バタバタと廊下を走る足音が聞こえ、部屋の扉が勢いよく開いた。


「お姉様! レオ様! 大変ですわ、本日の朝食の最高級パンケーキ、私が完璧なキツネ色に焼き上げておきましたわーー!!」


エプロンを翻して飛び込んできたのは、すっかり我が家の専属(?)トップシッターとして定着した、帝国のエレノア王女だった。3年が経ち、彼女の「ユキお姉様&レオ様への心酔OS」は完全にシステムに組み込まれ、今やアラカルト公爵家の一員のような顔をして王宮に常駐している。


「あら、エレノア。ありがとう。レオ、エレノアが焼いてくれたんだから、ちゃんと御礼を言うのよ?」


私が促すと、レオはギルバートの腕からトッと床に降り立ち、エレノアの前で優雅に一礼(お辞儀)をした。


「ありがとう、エレノア。君の焼くパンケーキは、僕の完璧な朝の栄養素にふさわしい仕上がりだよ。今度、お返しに僕の特製『発光魔法』で、君の縦ロールをより輝かせてあげるね」


「きゃあああああ❤ レオ様に褒められましたわ! お姉様、聞いておいでですか!? 3歳にしてこの紳士的なお言葉遣い……! ああ、今日も世界がレオ様を中心に回っていますわ……っ!」


エレノアが鼻血を出しそうな勢いで悶絶している。このシッターが甘やかすから、余計にナルシスト化が加速している気がしてならない。


『ふん、主よ。レオの魔力の質が、また一段と上がっているな。さっきの着替え魔法、無駄な魔力消費が一切なかったぞ。我の爪のコーティング魔法も、そろそろレオに任せても良さそうだな』


子犬の姿のランが、ソファの上でアクビをしながら念話をしてきた。伝説の聖獣までもが、この3歳児の才能を認めてしまっている。


かつては他国の裏組織の陰謀や、魔力封じの危機もあったけれど。

今や私たちのネットワークは、3歳にして魔法の天才&ナルシストなレオを中心に、さらに賑やかで、さらに過保護にパワーアップしていた。


「よし、みんな。おじい様たちが来る前に、まずは完璧な朝食をリリース(完食)しちゃいましょう!」


私の言葉に、レオが「イエス、マイ・マザー」とちっちゃな指をパチンと鳴らす。

天才幼児のナルシストな言動に振り回されつつも、どこまでも愛おしい私たちの第二部が、今ここに華やかに開幕したのだった。



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