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王子の心を溶かすのは・・・?〜孤独だった元OL、異世界で最強聖女になって公爵家に溺愛され、呪われた不器用王子を無自覚に救っちゃいました〜  作者: S@Y@


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第57話:要塞潜入! 囚われの聖女とエレノアの逆転コード


「……本当に、指一本動かせないなんてね」


永久凍土にそびえ立つ、レジスタス帝国のグラシエ監獄要塞。その最深部にある冷たい石造りの牢獄で、私は手首の重い金属の枷を見つめていた。

自慢の聖魔力は完全に遮断され、いつも頼りにしているスマホの画面も真っ暗なまま。前世のデスマーチで、徹夜明けに社内ネットワークから完全に締め出された時のような、凄まじい無力感が私を襲っていた。


「フハハハ! 諦めろ、聖女ユキ。その枷がある限り、貴様はただの無力な小娘だ。我が主を廃人同様にした報い、じわじわと味わわせてやる!」


檻の外で、過激派の残党である暗殺隊長が下卑た笑みを浮かべている。

悔しいけれど、今の私には彼らを物理バリアで吹き飛ばす力はない。


(ギルバート……レオ……みんな……)


初めて味わう本当のピンチに、胸が締め付けられそうになる。

――だが、私は諦めていなかった。私には、私が信じて、私のすべてを懸けて守ってきた「最強の家族」がいる。彼らが、このままバグの暴走を許すはずがない。


その時だった。


「――おい、そこの不届き者たち。レジスタス帝国第一王女、エレノア・フォン・レジスタスの御前であるぞ。控えおろう!」


突如として、牢獄の重厚な鉄扉が激しく蹴り開けられ、凛とした、けれど聞き覚えのある高飛車な声が響き渡った。


「な、何奴!? ――ええい、エレノア王女殿下!? なぜ貴女様がここに……!?」


暗殺隊長たちが驚愕して振り返る。

そこには、帝国のきらびやかな正装に身を包み、傲然と扇子を広げたエレノアが立っていた。彼女の後ろには、巨大な高級木箱を載せた補給部隊の台車が続いている。


「お兄様の残党どもが、私の管轄の秘密倉庫から無断で『魔力封じの枷』を持ち出したと聞いて来てみれば……。あろうことか、私の最愛のユキお姉様をこのようなむさ苦しい場所に閉じ込めるなんて、万死に値しますわ!」


「お、お姉様……!? 殿下、何を言っておられるのです、その女は我が組織の宿敵――」


「黙りなさい! 宿敵なのはあなたたちよ! ――ギルバート殿下、ラン様、インジェクション(投入)ですわ!」


エレノアが扇子を鋭く振り下ろした瞬間、台車の上の巨大な木箱が内側から粉々に爆散した。


ドゴォォォォォォン!!!


「ユキ――ッッ!!!」


爆煙を割って飛び出してきたのは、怒りでアメジストの瞳を限界まで輝かせたギルバートだった。彼の全身から溢れ出る漆黒の闇魔術が、一瞬で牢獄の壁や床を侵食し、周囲にいた暗殺者たちを悲鳴をあげる暇さえ与えず壁へと叩きつけていく。


『主よ、待たせたな! 我が神聖な爪で、その小汚い檻ごと引き裂いてやるわ!』


子犬の姿から一瞬で数メートル級の聖獣へと巨大化したランが、鋭い爪でユキを閉じ込めていた頑丈な魔導鉄の檻を、まるで紙切れのようにズタズタに切り裂いた。


「ギルバート……! ラン……!」


「ユキ、無事か!? どこも怪我はないか!?」


ギルバートが駆け寄り、檻から解放された私を壊れ物を扱うようにきつく抱きしめる。彼の身体が、恐怖で微かに震えているのが分かった。


「ええ、私は大丈夫よ。ただ、この枷のせいで魔力が……」


「お任せください、お姉様! 私が今すぐそのバグ(枷)を解除いたしますわ!」


エレノアが私の元へと駆け寄り、ドレスのポケットから帝国の皇族だけが持つ特別な魔導鍵マスターキーを取り出した。そして、私の手首の枷のコアへとはめ込み、力強く回す。


カチャリ……パキィィィィィン!!!


不快な金属音が響き、私の両手首から重い枷が外れ、床に落ちて砕け散った。

その瞬間、身体の奥底から、堰を切ったように爆発的な聖魔力がブワァァァッ! と溢れ出し、部屋全体を純白の光で満たしていく。私の手の中にあったスマホの画面にも、お馴染みの鮮やかな起動ログが高速で流れた。


【――警告解除:全システム復旧リブート。魔力出力、通常モードへ移行します――】


「……完全復活、ね」


私はスマホを構え、立ち上がった。暗闇を照らすような純白の聖魔力が、私の背後に大迫力の翼となって広がる。


「な、何という魔力だ……! 枷を外されただけで、要塞の結界が軋んでいるぞ……!?」


生き残っていた暗殺隊長が、恐怖で腰を抜かしながらガタガタと震え出す。


「エレノア、完璧な作戦だったわ。あなたのサポートのおかげで、最高のタイミングでリブートできたわね」


私がエレノアに向かってニッコリと微笑むと、彼女はパァァァッと顔を輝かせ、涙目で感動に震えた。


「お、お姉様にお褒めいただきましたわ……! ああ、お姉様の後光が眩しすぎます……っ!」


「さて、ギルバート、ラン。私たちの睡眠時間と育児の時間を奪ってくれたバグの残党たちよ。……こちらのフルパワーで、今度こそ一括削除(完全デリート)にしてあげましょう」


「ああ、ユキ。お前を傷つけようとした罪、その身に刻ませてやろう」

『ふん、我の咆哮で、この要塞ごと消し飛ばしてやるわ!』


魔力を取り戻した正妻のユキ、ブチ切れた過硬派の旦那様ギルバート、伝説の聖獣ラン、そして完璧なアシストを決めたパシリ王女エレノア。

形勢は完全に逆転した。永久凍土の要塞を舞台に、私たちの容赦なき「お仕置き(デバッグ)」が今、炸裂する。


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