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王子の心を溶かすのは・・・?〜孤独だった元OL、異世界で最強聖女になって公爵家に溺愛され、呪われた不器用王子を無自覚に救っちゃいました〜  作者: S@Y@


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第56話:聖女、囚わる!? 魔力封じの枷とエレノアの決意


新作知育カードの量産化が決定し、アラカルト領の工房が活気に沸いていた、その日の夜。


突如として、公爵邸の結界が内側から爆破された。

襲撃してきたのは、カウンター爆撃で廃人寸前となった帝国の過激派皇子(兄)が、最期に残した直属の暗殺特務部隊。彼らの狙いは、最初からエレノアではなく、裏組織の脅威となり続けた私――王太子妃ユキだった。


「しまっ……!? スマホのレーダーが妨害ジャミングされて――」


私が異変に気づき、スマホを構えようとしたまさにその瞬間。

空間の裂け目から飛び出してきた漆黒の鎖が、私の両手首を凄まじい速度で縛り上げた。


カチャリ……ッ!!


「なっ……!? 体の魔力が……完全に、流れない……!?」


【――警告:超高濃度・古代魔導式『魔力封じの枷』の装着を確認。すべてのシステム(魔法・スマホ)の強制スリープモードへ移行します――】


手首にはめられた冷たい金属の枷。それが発生させる強力なジャミングのせいで、私の自慢の聖魔力も、相棒であるスマホの画面も、完全にブラックアウトしてしまった。前世で言うところの、完全なネットワーク遮断オフライン状態だ。


「ユキ――ッッ!!!」


隣の部屋から、異変を察知したギルバートが凄まじい闇のオーラを纏って壁をぶち抜いて現れる。だが、敵の暗殺者たちは、魔力を失って崩れ落ちる私を抱え、すでに起動していた超長距離の古代転移魔法陣の中へと飛び込んでいた。


「フハハハ! 聖女ユキの身柄は、我がレジスタス帝国の最果ての監獄要塞へと転送させてもらう! 助けたければ、軍勢ごと罠へ飛び込んでくるがいい!」


「待て……ッ! ユキっ!!」


ギルバートの絶叫が響く中、私の視界は白い転移の光に包まれ、意識が遠のいていった――。


◇◇◇


ユキが連れ去られたあとの、アラカルト公爵邸の作戦会議室。

そこは、かつてないほどの濃密な殺気と絶望に満ちていた。


「……あの要塞の座標は、俺の影の索敵でも捉えきれん。……ユキ、今すぐ助けに行く。もしユキの髪の毛一本にでも傷がついていたら、帝国という国家そのものをこの世から消滅デリートさせてやる……っ!」


ギルバートのアメジストの瞳は完全に理性を失い、漆黒の闇魔術が部屋の床や壁をバリバリと侵食している。お父様とお母様も、静かに、けれど大陸を滅ぼしかねないほどの激しい覇気を放っていた。


『ギルバート、落ち着け! 座標も分からずに突撃しても、主が囚われている要塞に近づく前に、敵に主の命を盾に取られるだけだ!』


ランが巨大な聖獣の姿でギルバートの前に立ち塞がり、必死に彼を抑え込む。

誰もが焦燥感でシステムエラーを起こしかけていた、その時。


バァン!! と、会議室の扉を力強く開けて進み出てきた者がいた。


「皆様、取り乱している場合ではありませんわ! ギルバート殿下、闇のオーラを収めなさい!」


凛とした声を響かせたのは、エプロンを脱ぎ捨て、帝国の正装に身を包んだエレノア王女だった。


「エレノア……。お前に何が分かる。ユキが、俺の妻が……!」


「分かりますわ! だって、あの『魔力封じの枷』を管理していたのは、我が帝国の皇族、つまり私のお兄様の管轄の秘密倉庫ですもの!」


エレノアは怯むことなく、ギルバートの前に真っ直ぐに立ち、机の上にレジスタス帝国の詳細な軍事マップを叩きつけた。その目は、かつての我が儘な王女のものではなく、ユキを慕う忠実な妹分アシスタントとしての強い覚悟に満ちていた。


「お姉様を連れ去ったのは、帝国の北の最果てにある、永久凍土の『グラシエ監獄要塞』に間違いありませんわ。周囲は古代の対魔導結界で覆われており、力任せに外から攻撃すれば、内部の空間ごと爆破される仕組み(自爆仕様)になっています」


「何だと……!? では、力ずくでの突破は不可能なのか!?」


お父様が目を見張る中、エレノアは不敵に微笑んだ。


「ええ、ですから『裏口』を使いますのよ。お姉様から、理屈ではなく機転を利かせる戦い方を学びましたわ。――このグラシエ要塞には、週に一度、私を操っていた過激派皇子に『最高級の贅沢品』を届けるための、結界の影響を受けない秘密の補給隠密ルートが存在します」


エレノアはマップの一点を指差した。


「ギルバート殿下、そしてラン様。私がレジスタス帝国王女としての公的な権限(特権ID)を使い、その補給部隊の検問を強引に突破して、要塞の内部へ皆様を『荷物』として密輸インジェクションいたしますわ。要塞の内部に入りさえすれば、対魔導結界は機能しません。そこで私が枷の解除コードを入力し、お姉様の魔力を完全復旧リブートさせます!」


エレノアの、帝国王女としての知識をフル活用した完璧な仕様の救出作戦。

それを聞いたギルバートは、深く息を吐き、闇のオーラを静かに収めた。


「……エレノア。お前の作戦に乗ろう。ユキを、俺たちの聖女を……必ず助け出すぞ」


「もちろんですわ! 大切なレオ様のお母様であり、私の最愛のユキお姉様を……あの薄汚い残党どもの手に汚させてたまるもんですか! ――これより、王太子妃救出タスクを開始いたしますわ!!」


恐怖の対象だったユキに本気で救われ、今度は自分がユキを救うために立ち上がったエレノア。最強の過保護ネットワークに、エレノアという新たな「最高のシステムエンジニア(作戦立案者)」が加わり、逆襲の救出劇が今、幕を開けるのだった。


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