表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子の心を溶かすのは・・・?〜孤独だった元OL、異世界で最強聖女になって公爵家に溺愛され、呪われた不器用王子を無自覚に救っちゃいました〜  作者: S@Y@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/71

第51話:1歳半の成長と嵐の予感! 隣国からの美しき侵略者


あの地下迷宮の激戦から、月日は流れて――。


「あう、あーじゅ! ぱぱ、ばぶっ!」


「おいで、レオ。今日も一段と発音が良くなったな。お前の言葉のデータベースは毎日本当に素晴らしい成長を遂げている」


王宮の広々としたリビングで、1歳半を迎えてトコトコと元気に歩き回るようになったレオを、ギルバートが至高の笑顔で抱き上げていた。

現在のレオは、私が開発した『知育マッチングカード・バージョン2』の音声認識システムのおかげで、単語の出力スピードが爆発的に向上している。


「ふふ、本当ね。最近はスマホの画面をタップして、自分で子守唄のプレイリストを再生しちゃうんだから。ママのエンジニアとしての遺伝子が暴走気味だわ」


私はそんな二人の愛らしい姿を眺めながら、極上のハーブティーを口に含む。

裏組織の脅威を物理的に消し飛ばして以来、王宮には平和で穏やかなデバッグ(育児)の日常が戻っていた。


――だが、その平穏は、隣国『レジスタス帝国』からの外交使節団の来訪によって、一瞬で破られることになる。


「――お久しゅうございますわ、ギルバート王太子殿下。……あら、随分と、その……『見違え』てしまいましたのね?」


王宮の謁見の間。

艶やかな極上の縦ロールの金髪を揺らし、扇子で口元を隠しながら傲慢な笑みを浮かべているのは、隣国の王女、エレノア・フォン・レジスタス。


かつてギルバートが全身を醜い闇の呪いに蝕まれていた頃、「呪われた不気味な王子など、見るだけで反吐が出ますわ!」と大見得を切って婚約話を一方的に破棄し、彼を激しく毛嫌いしていた張本人だった。


だが、現在のギルバートは、私の聖魔力によって呪いが完全にデバッグ(解呪)され、眼帯の奥に妖艶なアメジストの瞳を輝させる、世界一美しいと称される最強の王子だ。


「……エレノア王女か。外交の代理人として来られたのであれば歓迎しよう。我が妻であり、この国の王太子妃であるユキを紹介する」


ギルバートは完全にビジネスライクな冷淡な声で言い、私の腰をそっと引き寄せた。


「お初にお目にかかります、エレノア王女。王太子妃のユキです」


私が一歩前に出て、王族としての品格を保ちつつ完璧な淑女のカーテシーを披露すると、エレノアは私を一瞥し、フンと鼻で笑った。


「あら、あなたが例の『異端の魔導(SE)』を使うという、成り上がりの聖女様? ギルバート殿下の隣に立つには、少々華が足りなくてよ。――殿下、このような地味な女を正妃に据えておくなんて、この国の損失ではなくて? 我が帝国の最高峰の美と権力を持つ私の方が、今の美しい貴方に相応しいとは思いませんこと?」


「(……は?)」


初対面でいきなりのマサカの略奪愛(システム乗っ取り)宣言。

エレノアの目は完全にマジだった。昔あれほど嫌っていたくせに、呪いが解けて絶世の美男子になったギルバートを見た瞬間、手のひらを返して「私のものにしたい」という強欲なOSが起動してしまったらしい。


「エレノア王女。言葉が過ぎるぞ。不快だ、今すぐ我が国から退去しろ」


ギルバートの瞳が激しい怒りで漆黒に染まり、周囲の空間がミシミシと軋み始める。だが、エレノアは怯えるどころか「まぁ、怒ったお顔も素敵……!」とうっとりとした目を向けている。完全に話が通じないタイプ(重篤なバグ)だ。


◇◇◇


その日の夜、王宮の私室。


「……ユキ、怒っているのか? すまない、あのような不届きな女の戯言、俺は一ミリも相手にしていない。俺の心には、お前とレオしか存在しないんだ」


ギルバートが焦った様子で、ベッドの上の私を背後からきつく抱きしめてくる。

いつもなら「分かってるよ」と笑えるはずだった。だけど、昼間のエレノアの、ギルバートを見る肉食獣のようなギラギラとした視線が頭から離れない。


(……何これ。私、もしかして……嫉妬してるの……?)


前世のブラック企業では感情を殺してコードを叩くだけのマシーンだった私が、異世界で家族を得て、初めて知る「誰かを奪われたくない」というドロドロとした独占欲。スマホの画面を見つめる私の指先が、微かに震える。


『主よ、珍しく魔力波形が乱れているな。あの縦ロールの女など、我の爪で一瞬で物理削除してやろうか?』


子犬の姿のランが心配そうにベッドの端から念話をしてきたが、「大丈夫だよ」と返す声も少しだけ沈んでしまった。


夜中。

なかなか寝付けない私は、頭を冷やそうと冷たい水を求めて、ギルバートの寝室(最近はレオの夜泣きデバッグ用に、私の部屋と隣り合わせになっている彼の執務室兼寝室)へと向かった。


ガチャリ……。


薄暗い部屋の扉を開けた、その瞬間。


「――あぁ、ギルバート殿下……。やはり夜の貴方も、吸い込まれそうなほど美しいわ……」


「……何をしている、エレノア」


そこには、月明かりが差し込む寝室の中、薄いネグリジェ姿でギルバートのベッドに忍び込み、困惑と怒りで凍りついているギルバートの胸元に、妖しく指を這わせようとしているエレノア王女の姿があった。


正式な王太子妃である私という妻がいながら、深夜の寝室侵入という暴挙。

そして、扉の前に立つ私と、エレノアの目が真っ正面からバチリと鉢合わせた。


「――っ、ユキ……!?」

「あら……邪魔が入りましたわね、泥棒猫さん? 殿下の隣は、私がアップデートして差し上げますわ」


最悪のタイミングでの、深夜の修羅場(鉢合わせ)。空間のテンションが、一瞬で一触即発の泥沼エラーへと叩き落とされる。


だが、激しい嫉妬と怒りでスマホを握りしめた私のレーダー(索敵ログ)は、エレノアの背中の裏――彼女のペンダントの奥に仕込まれた、不気味な『裏組織の監視呪詛コード』の光を、見逃さなかった。


(……待って。この王女、ただの略奪愛じゃない。――裏組織に、都合のいい『捨て駒(操り人形)』にされてる……!?)


恋の嵐と裏組織の陰謀が複雑に交錯する、最悪の泥沼の夜が幕を開けた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ